塾長の鑑賞記録

塾長の鑑賞記録

私=juqchoの芸術鑑賞の記録集。舞台も絵も和風好き、でもなぜか音楽はプログレ。

フォスコ・マライーニ写真展 / 手探りのキッス 日本の現代写真 / 夢みる影 ファブリツィオ・コルネリ展

2001/11/18

日曜日、天気が良ければ沢登りに行こうと思っていましたが、あいにく朝のうちは曇り空で寒そう。そこで恵比寿に最近できたボルダリング・ジム「J&S」でボルダリングの練習をすることにし、せっかく恵比寿に行くのだからと東京都写真美術館にも足を運びました。

3階の展示室では、イタリア人の文化人類学者フォスコ・マライーニの写真展「イル・ミラモンドーレンズの向こうの世界」を開催していました。マライーニはフィレンツェに生まれ、その後チベット遠征や北海道でのアイヌ研究など広範な活動の中で数多くの写真を撮影しており、今回の写真展でも南イタリア、チベット、日本などで撮った170点が展示されていました。その大半がモノクロ写真ですが、どの写真もその時代を写しとっていて、見る者を過去への旅に誘っているようです。特に気に入ったのが下の《インド—ラサ間のキャラバン道に沿って》(1937年)で、自分もこの場所に立ってみたいと思わされました。

2階では「手探りのキッス 日本の現代写真」と題して8人の写真家の作品が大判で展示されていました。正直よくわからない作風のものも多かったのですが、廃虚の姿を穏やかな色調で撮影した「DEATHTOPIA」の写真群(小林伸一郎)と、国境の風景をさまざまに撮りあげた「Border and Sight」シリーズ(渡辺剛)には心動かされました。

地下1階は写真展ではなく、ファブリツィオ・コルネリの光と影による作品群の展示。壁に取り付けられたぎざぎざの複数の板に下から光をあてると壁面に女性の顔や跳躍する男性の姿が影によって作り出されたり、逆に光源を内蔵した箱に微妙に計算された切れ目を入れることで箱の周囲に光による人間の姿が浮かび上がったりするもの。一種のだまし絵のような機知と、光と影が生み出す厳粛さとが共存していて興味深い展示でした。