塾長の鑑賞記録

塾長の鑑賞記録

私=juqchoの芸術鑑賞の記録集。舞台も絵も和風好き、でもなぜか音楽はプログレ。

続篇華果西遊記 / 俊寛 / 連獅子 / 楼門五三桐

2001/07/08

歌舞伎座の7月は例年猿之助丈の公演ですが、今年はちょうど藤間紫との50年愛が話題になったばかりでもあり、実にタイムリー(?)です。だからというわけではありませんが、たまには幕見席ではなく指定席で歌舞伎を見ようと当日受付に行ってみたら、ちょうど昼の部の三階席Aの最後の1枚をゲットできました。夜の部も同じ席種で買ったらちょうど宙乗りのラインの真下で、宙乗りのときだけちょっと立ち見になりますとの話。

続篇華果西遊記

最初の演し物は右近丈の孫悟空を中心とする「続篇華果西遊記」。「続篇」とあるのは昨年12月の「華果西遊記」の続きだからです。残念ながら私は師走の方は見ていませんが、孫悟空モノなので京劇的な派手な立ち回りと歌舞伎座の舞台装置を存分に活かしたスペクタクル性が見どころで、特に前の話を見ていなくても十分に楽しめる独立した芝居になっていました。金簾女王御殿での棒や熊手を使った踊りは随所に京劇の技が(さすがに鍛え上げられた本職の武生にはかなわないながら)取り入れられていますし、蛇盤山での火攻めに対し雪招ぎの旗で吹雪を巻き起こす場面は照明の効果も相まって凄い迫力でした。

俊寛

昨年4月に仁左衛門丈で見て感動した演目で、猿之助丈の場合はどうか?というのが眼目でしたが、終わってみるとまたも涙腺決壊ものになってしまい、比較のしようがありませんでした。

連獅子

長唄舞踊「連獅子」は猿之助丈と亀治郎丈の伯父甥コンビ。宗論の後の後ジテでは、二畳台を三つ重ねて石橋に見立てて踊ります。

昼の部が終わったところで席が入れ替えになるのに合わせ、遅い昼食をとりに外に出ました。銀座方面へ歩いていると、やはり昼の部を見終わったばかりという感じの御婦人方が目の前を歩きながら「宙吊りは夜の部だけなのね」とちょっとがっかりした風情で話していました。お気の毒さま。でも、「宙吊り」じゃなくて「宙乗り」なんですけど……。

楼門五三桐

夜の部は石川五右衛門物の「楼門五三桐」。吉右衛門丈による双級巴は見たことがありますが、今回はさまざまな五右衛門狂言を組み合わせた新脚本です。とにかくスケールの大きなストーリーで「○○実は△△」というのが続々出てくるため、最初に筋書きを頭に入れておかないと途中で何がなんだかわからなくなるのは必定。とはいえ「絶景かな絶景かな」の台詞で有名な南禅寺山門の場、三隻の舟で廻り舞台を360度フルに使った「舟のだんまり」、宙を飛ぶつづらが二つに割れて中から現れた五右衛門が「つづら背負ったがおかしいか」と見得を切るつづら抜けなどケレン味たっぷり。この宙乗りの場面の直前に係員が合図してくれて、私も含めてワイヤーの真下に席がある10名余りは一斉に席を立ち左の壁際に居並ぶと、猿之助丈は先ほどまで自分が座っていた席の上空1mをゆっくり飛んでスモークの中に消えていき……と思う間もなく壁の向こうをどたどたと走り去る大きな音が聴こえて、続く大詰の南禅寺明法堂の場になだれ込みます。まったく信じられない体力!そしてこの場でも、とんぼはもとより梯子上での見得、宙を飛ぶ刀などこれでもかというくらいにアクロバティックな大立ち回りが続いてお客さんは大喜び。「おもだかや〜!」の大歓声のうちに終演を迎えました。

配役

続篇華果西遊記 孫悟空 市川右近
猪八戒 市川猿弥
沙悟浄 市川段治郎
紅少娥 市川春猿
金簾女王 市川笑三郎
三蔵法師 市川笑也
俊寛 俊寛僧都 市川猿之助
丹左衛門基康 中村歌六
海女千鳥 市川亀治郎
平判官康頼 市川猿弥
丹波少将成経 市川門之助
瀬尾太郎兼康 市川段四郎
連獅子 狂言師右近後に親獅子の精 市川猿之助
狂言師左近後に子獅子の精 市川亀治郎
浄土の僧遍念 中村歌六
法華の僧蓮念 市川段四郎
楼門五三桐 石川五右衛門 市川猿之助
妹お滝
此村大炊之助実は宋蘇卿 市川段四郎
真柴久秋 市川笑也
傾城九重 市川春猿
小鮒の源五郎 市川段治郎
奴八田平実は順喜観 市川右近
早川高景 中村歌六
三二五郎七実は海田新吾
真柴久吉 中村芝翫

あらすじ

続篇華果西遊記

天竺を目指す三蔵一行は、金簾女王の招きを受けて王宮へ誘われる。紅少娥ほかの侍女を侍らせて孫悟空たちがすっかり酔いつぶれてしまうと、金簾女王は火を吐く大蛇・金角の本性を顕わし、三蔵法師を連れ去ってしまう。実は観世音の化身だった紅少娥は、孫悟空に吹雪を招く白旗を与え、三蔵法師救出に赴かせる。孫悟空は蛇盤山で金角と烈しく戦い、ついに三蔵法師を救出することに成功する。

俊寛

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楼門五三桐

明の左将軍・宋蘇卿は、日本国内を平定し大陸への進出を始めた真柴久吉を倒し、一人の息子と二人の娘に日本を治めさせようとの大望をもつ。その宋蘇卿は早川高景に討たれるが、死の間際に掛け軸から呼び出した白鷹と蘭奢木の縁によって息子=石川五右衛門と妹のお滝・お通は久吉の桃山御殿で対面し、ついに久吉を討ち、中空を逃げ延びていく。しかし、南禅寺で追手に囲まれた五右衛門は、討ったと思った久吉が影武者で、それまでの企みがことごとく裏をかかれていたことを知る。五右衛門の器量を惜しむ久吉に妹二人の後事を託しつつ、五右衛門は後日の決戦を誓う。