塾長の鑑賞記録

塾長の鑑賞記録

私=juqchoの芸術鑑賞の記録集。舞台も絵も和風好き、でもなぜか音楽はプログレ。

俊寛 / 舞鶴雪月花 / 髪結新三 / 一条大蔵譚 / 口上 / 鰯賣戀曳網 / 鏡獅子

2000/04/23

四月大歌舞伎は歌舞伎座で、十七代目中村勘三郎十三回忌追善公演として中村屋一門による多彩な出し物。午後の部は予約がとれましたが午前の部は空きがなかったので、開演1時間前から幕見席の受付に並びました。

俊寛

仁左衛門丈が凄かった。希望、絶望、安堵、覚悟、後悔と振幅の大きい感情を絶妙に表現し、しかも一貫した格の高さを維持し続けています。最後、絶海の孤島から離れ行く船を見送って放心する俊寛の姿には心底感動しました。

舞鶴雪月花

春の桜、秋の松虫、冬の雪達磨による舞踊。玉三郎丈の桜の精はこの人ならではの品があり、松虫の子役がかわいらしく、雪達磨の富十郎丈がユーモラス。なお「舞鶴」とは十七世勘三郎丈の俳名とのこと。

髪結新三

勘九郎丈の新三と富十郎丈の家主長兵衛のやりとりが爆笑もので、小悪党の新三から手間賃の十五両に家賃の二両、おまけに初鰹の半身までせしめていく上手の家主は何といっても富十郎丈にぴったり。

一条大蔵譚

夜の部は「一条大蔵譚」から。吉右衛門丈の豹変ぶりが面白いのですが、歌舞伎のテンポにまだ不慣れな私にはちょっと冗長に感じられてしまいました。

口上

追善の趣をずらり幹部が述べるもので、仁左衛門丈、左團次丈、勘九郎丈の三人からマージャンにまつわるエピソードが披露されたところをみると、勘三郎丈(勘九郎丈の実父)はよほどマージャン好きだったようです。

鰯賣戀曳網

三島由紀夫原作の楽しい芝居。勘九郎丈や玉三郎丈など主役の演技も笑わせますが、馬が痛めた足を自分で示したり、酌を手伝おうとして猿源氏に突き飛ばされた禿の女の子が髪を梳きながら拗ねたり、物語りをせがまれた猿源氏が舞台袖の太夫と三味線に助けを求めて断られたりと、あちこちにチャリがちりばめてあって舞台から一瞬たりとも目が離せませんでした。

鏡獅子

そして最後の「鏡獅子」は、勘九郎丈の息子・勘太郎丈。前半の技巧と後半の豪快の対比を面白く見ました。昼夜通して勘九郎丈のエンターテイナーぶりが光る、楽しい芝居の一日でした。

配役

平家女護島
俊寛
俊寛僧都 片岡仁左衛門
丹波少将成経 中村勘九郎
平判官康頼 中村歌昇
海女千鳥 中村福助
瀬尾太郎兼康 市川左團次
丹左衛門基康 中村吉右衛門
舞鶴雪月花 桜の精 坂東玉三郎
松虫 中村勘九郎
雪達磨 中村富十郎
梅雨小袖昔八丈
髪結新三
髪結新三 中村勘九郎
弥太五郎源七 片岡仁左衛門
白子屋娘お熊 坂東玉三郎
下剃勝奴 市川染五郎
家主長兵衛 中村富十郎
一条大蔵譚
檜垣・奥殿
一条大蔵卿 中村吉右衛門
吉岡鬼次郎 中村梅玉
八剣勘解由 片岡芦燕
お京 中村松江
常盤御前 中村芝翫
鰯賣戀曳網 鰯賣猿源氏 中村勘九郎
海老名なあみだぶつ 市川左團次
博労六郎左衛門 市川染五郎
傾城螢火 坂東玉三郎
鏡獅子 小姓弥生 中村勘太郎
獅子の精

あらすじ

平家女護島俊寛

鹿ヶ谷の陰謀が露見し俊寛僧都ら三人が南海の孤島に流されて三年。丹波少将は海女千鳥と夫婦となり俊寛、平判官もこれを祝福する。そこへ都から赦免船が到着するが、役人瀬尾は千鳥の乗船を許さない。さらに瀬尾から妻が平清盛の意に従わず自害したことを聞いた俊寛は瀬尾を討ち、罪を重ねた者として島にとどまり、代わりに千鳥を船に乗せる。遠ざかる船、後悔と孤独に苛まれた俊寛は船影を追って岩によじ登り、やがて呆然と海の彼方を見つめる。

梅雨小袖昔八丈髪結新三

江戸深川の髪結新三は腕に入れ墨をもつ前科者。手代をだまして大店の令嬢を誘拐し、掛け合いにきた親分の弥太五郎源七に十両を突き返して得意がっていたが、強欲な大家の長兵衛にやりこめられ、三十両で手を打たされた上、そのうち半分の十五両と店賃の二両、ついでにカツオの半身を巻き上げられる。

一条大蔵譚檜垣・奥殿

狂言舞にうつつをぬかし、周りから阿呆者呼ばわりされている大蔵卿のもとへ、平清盛の命で嫁いだ常盤御前。源氏再興を図る吉岡鬼次郎とお京の夫婦は常盤の本心を探るために大蔵卿の邸内に忍び込むが、常盤が楊弓にうつつを抜かしていることに怒りこれを打擲。しかし、常盤が射ていた的は実は平家調伏の絵姿だった。この様子を見ていた八剣勘解由が清盛に注進しようとして鬼次郎と斬り合うところへ 、御簾越しに突き出した長刀が勘解由を斬り伏せる。驚く常盤や鬼次郎たちの前に現れたのは、うつけの装いを捨てた大蔵卿。源氏再興の餞に重宝友切丸を鬼次郎に託し、重盛が世を去ってから平家を討つよう頼朝・牛若に伝えることを命じると、大蔵卿は平家全盛の世を永らえるため元のつくり阿呆に戻って高笑いする。

鰯賣戀曳網

今をときめく傾城螢火に思いを寄せる鰯売りの猿源氏は、父の海老名なあみだぶつや博労六郎左衛門の協力を得て東国の大名という触れ込みで螢火に会うことができた。螢火の膝枕で鰯売りの口上を寝言で漏らしてしまった猿源氏、問いつめられながらも和歌を引き合いに出して必死にごまかすと、かえって螢火は落胆する。聞けば元は紀の国丹鶴城の姫君だった螢火は、鰯売りの売り声に魅せられて後を追ったばかりに遊女に身を落とす羽目になったのだった。結局この寝言の声こそ螢火が心惹かれた鰯売りのものとわかり、二人はめでたく結ばれる。