塾長の鑑賞記録

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私=juqchoの芸術鑑賞の記録集。舞台も絵も和風好き、でもなぜか音楽はプログレ。

ジーザス・クライスト=スーパースター(劇団四季)

2018/02/05

劇団四季の「ジーザス・クライスト=スーパースター」を観に、川崎のカルッツかわさきへ。

前回観たのは2014年のことで、今回と同じエルサレム・バージョンです。次は劇団四季ならではのジャポネスク・バージョンを観たいと思いながら時折上演予定をチェックしていたのですが、なかなかジャポネスクが上演されずにいるうちにエルサレムの方が首都近郊を巡演することになったために、少々不本意ながらもこちらを観てみるかとチケットをとった次第。

演出自体は前回観たときと変わっていないので、こまごまとここで記すことはしませんが、それでもこの日の公演を観ていて気付いた点もあったので、備忘として書き留めておくことにします。

まず、この公演は常設劇場ではなく各地のホールを巡っての上演なので、プロダクションは基本的に一期一会。舞台装置も照明も音響も短時間で合わせていかなければならないという制約があり、スタッフ側の手腕が問われるところですが、この日の公演では音響面で気になる点がいくつかありました。まずは、もともと音楽のアレンジがロックオペラ色を薄めてある(ギター控えめ)上に全体に音量が不足していて、没入感が得にくい状態が続きました。本当なら「Overture / 序曲」でがつんとつかみを入れ、続く「Heaven On Their Minds / 彼らの心は天国に」でユダの絶唱を聴きたいところなのに、ユダの「ジーザス!」という呼び掛けがこちらに響いてきません。といっても役者の声はもちろん生声ではなくマイクで拾って増幅しているので、これはPAの問題です。ジーザスの声は非常によく通っていたのでなぜそういうバランスにしたのかわからないのですが、そのジーザスのマイクも「今宵安らかに」の中で一時的にオフのままになった場面などは、トラブルかミスかのどちらかでしょう。「s」や「c」の音がかなり耳障りに響いてしまっていたのも気になります。

それはさておき、前回観てから映画版やCDを聞き込んで英語の歌詞を多少頭に残してあったので、この日本語版での歌を随所で「そう訳すか!」と思いながら聴きました。たとえばカヤパたちがジーザスの台頭に不安を覚える場面(「This Jesus Must Die / ジーザスは死すべし」)でのHe is dangerous.おっそろし〜やつ〜になっているのには仰天。また、ジーザスのエルサレム入場を群衆が讃える場面(「Hosanna / ホサナ」)でのHey JC, JC won't you fight for me?皆のために、戦いを。なるほどこれは納得ですが、映画版のようにwon't you die for me?としたかったらどう訳せばよいでしょう?

肝心の歌と演技について記せば、ジーザスの声には説得力があり、ユダの演技力は見事だった(もっとラウドに声を響かせてあげたかった)と思いましたが、前回も書いたように、自分の中での「JCS」の音楽はあくまでロックであり、ジーザスやユダの苦悩はファルセットではなく芯の通ったシャウトで表現してほしいところです。

マリアの歌「I Don't Know How To Love Him / 私はイエスがわからない」は少しテンポが速いように感じましたが、とても綺麗に歌われていてすてきだと思いました。またマリアの歌ではもう一つ、ペテロと二声のコーラスで歌われる「Could We Start Again, Please? / やりなおすことはできないのですか」の美しさは特筆ものでした。さらにカヤパ、ピラトはそれぞれに存在感も説得力もありましたが、やはりヘロデ王がおいしい役。出番はほんの少しなのに、あの強烈なキャラクターで根こそぎ持って行ってしまう魅力があります。しかしそうした個々の登場人物を超えて、おそらくこのミュージカルの真の主役である群衆=アンサンブルのコーラスや集団での動きに力があって見事。特に「The Temple / ジーザスの神殿」で群体のように蠢きながらジーザスを追い詰める場面には、見ていて鳥肌がたちそうになりました。

最後は相変わらず「Superstar / スーパースター」のユダとソウル・ガールたちの能天気さの意味がわからないままにヨハネ書の結末に至って、暗転。再び舞台が明るくなった後は、客席を埋めた満員の観客がスタンディングオベーションで歓呼の声をあげていました。もちろん、その中には自分自身も含まれていたのですが。

配役

ジーザス・クライスト 清水大星
イスカリオテのユダ 佐久間仁
マグダラのマリア 谷原志音
カヤパ 高井治
アンナス 志賀陶馬ワイス
司祭1 佐藤圭一
司祭2 賀山祐介
司祭3 高舛裕一
シモン 大森瑞樹
ペテロ 五十嵐春
ピラト 村俊英
ヘロデ王 北澤裕輔