塾長の鑑賞記録

塾長の鑑賞記録

私=juqchoの芸術鑑賞の記録集。舞台も絵も和風好き、でもなぜか音楽はプログレ。

The Winery Dogs

2016/04/20

TOKYO DOME CITY HALLでThe Winery Dogsのライブ。メンバーはギターとリード・ボーカルがRichie Kotzen、ベースがBilly Sheehan、ドラムがMike Portnoyで、つまりはMr. BigとDream Theaterの混成スーパーグループです。2012年結成のこのバンドは、特にドラムがあのMike Portnoyですから必然的にパワートリオということになり、ハイテクなのにともすれば柔弱に流れることもあったMr. Bigの、最もエッジが効いた部分を彼が引き出してくれるだろうという期待がありました。

そんな具合にバンドの音楽性ではなく個々のプレイヤーのミュージシャンシップに期待しての参戦だったので、曲の予習はほとんどしないままに会場に臨んだのですが、オープニングの「Oblivion」から期待通りの展開に思わずにんまり。使用楽器は、Richie KotzenがタバコサンバーストのTelecasterをメインに、曲によってアコースティックギターとWurlitzerのエレクトリックピアノ。Billy SheehanはYAMAHAの明るいブルーのシグネチャー・モデルと曲によってフットベース。そしてMike Portnoyは、Dream Theaterの要塞セットほどではありませんが、ツーバスに180度タムを配置した点数の多いTAMAのセットで、全体のバランスの中ではボーカルの音量が若干引き気味だと感じましたが、そうしたことをものともせず、これらの楽器の能力を極限まで引き出す演奏が繰り広げられました。

この「Hot Streak」は、2015年に発表した彼らの2枚目のアルバムのタイトルナンバー。このようにテクニカルでエモーショナルで、しかしどことなくブルージィな楽曲こそ、彼らに期待した音楽そのものです。Richie Kotzenは一貫してピックを使わず指弾きで通していますが、そうしたことを感じさせない早弾きを実現していました。それにしてもMike Portnoyは、スティックを飛ばし過ぎ。もちろんそれでリズムがよれる彼ではありませんが、背後に控えているスタッフは大変です。かたやMike Portnoyがコーラスをとるためのマイクを回し、かたやステージのあっちに飛んで行ったスティックを拾いに走り、かたやMike Portnoyのドラムセットの調節をしようとしたらヘッドロックをかまされたりと散々な目に遭っていました。

ぐいぐいと前に出てくるリズムが強烈な存在感でこの日一番の演奏であったと思われる曲「Empire」では、途中で転調するところからのMike Portnoyの左足によるカウベルに会場も一体となっての手拍子で応えました。大盛り上がりの後には、Richie Kotzenがアコギ1本でしっとり弾き歌う「Fire」。さらにRichie Kotzenが見事なエレピの演奏を聞かせる「Think It Over」。

スネアロールからの極めて短いながらド派手なドラムソロの後に、大地をうねるようなベースが入ってきて「The Other Side」。終盤、ノリが大きくなりベースによるゆったりしたリズムキープの上でMike Portnoyがクレージー・キャッツのハナ肇みたいにスティックであらゆるものを叩きながら前に出てきて客席を沸かせ、その後にギターの情熱的なソロが入ってベースソロへ。相変わらず両手のタッピングを多用した7-8分ほどの長大なソロでしたが、コンプレッサー効かせ過ぎの彼のベース音が私は好きではないので少々冷めた目で見ていたら、ソロの後半では彼には珍しく生音中心のコシのある音になってくれました。

本編最後は「Elevate」。いや、これはかっこいい!この疾走感はたまりません。そして、ごく短いインターバルの後に登場した3人によるアンコールは、まずRichie Kotzenがエレピに向かって歌い始めた「Regret」から。曲名の示す曲調に沿ってしみじみと切なく歌うRichie Kotzenを見ていると、彼はむしろこうしたソウルフル歌の方が得意なのではないかと思えてきます。

そしてラストは「Desire」。縦ノリのリフが気持ち良いこの曲では、途中で「Desire!」のコール・アンド・レスポンスがあり、さらにdesire、hireという韻の共有からSly & The Family Stone「I Want to Take You Higher」の「Boom shaka-laka-laka」の引用も入って、最後はMike Portnoyがドラムローンでシンバルをぶっ叩いて終了です。

この日は奇しくもMike Portnoyの誕生日。終演後にステージ上にスネア型のケーキが持ち出され、客席からもプレゼントが渡されて、Billy Sheehanの音頭で「Happy Birthday Dear マイキー」を全員で歌いました。

冒頭に記したように予習なしでのライブ参戦でしたが、とにかく楽しいライブでした。個々の演奏レベルの高さや楽曲の良さもさることながら、トリオ編成ならではのバンドとしての一体感が溢れていて、聴いているこちらも身体が自然に動いてしまいます。今回はこのバンドの2度目の来日でしたが、次があれば次も参戦するでしょう。さすがにそのときは、きちんと予習をして臨むつもりです。

ミュージシャン

Richie Kotzen guitar, keyboards, vocals
Billy Sheehan bass, vocals
Mike Portnoy drums, vocals

セットリスト

  1. Oblivion
  2. Captain Love
  3. We Are One
  4. Hot Streak
  5. How Long
  6. Time Machine
  7. Empire
  8. Fire
  9. Think It Over
  10. Drum Solo
  11. The Other Side
  12. Bass Solo
  13. Ghost Town
  14. I’m No Angel
  15. Elevate
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  16. Regret
  17. Desire