塾長の鑑賞記録

塾長の鑑賞記録

私=juqchoの芸術鑑賞の記録集。舞台も絵も和風好き、でもなぜか音楽はプログレ。

Kansas

2011/08/26

川崎クラブチッタでKansasのライブ。彼らの姿をじかに見るのは、実に10年ぶりです。

グッズ売場では、各種Tシャツを販売中。プログラムは、Kansas単独ではなくて後述する「プログレッシヴ・ロック・フェス2011」用のものでした。

定刻の19時半ぴったりに照明が落ちて、歓声の中にメンバー登場。フロントは向かって左からRich Williams、David Ragsdale、Billy Greer。前回はオリジナルメンバーのRobby Steinhardtが真ん中にいて、前衛の3人のあまりの体格の良さにこれはラグビーの試合を観に来たのか?と思わせられたものですが、今回は違いました。Robbyの代わりに参加したDavid Ragsdaleは1990年代、やはりRobbyがバンドを離れていた時期に加入していたヴァイオリニストで、スマートな体型を燕尾服のようなコスチュームに包んでいましたし、Richも少しスリムになった感じ。Billyに至ってはまるでアップルのSteve Jobsのようにすっかり痩せていました。一方、後方は向かって左にキーボード2台を操るSteve Walsh、右にツーバスセットのPhil Ehart。Steveは頬から顎にかけて真っ白なヒゲをふさふさと生やしておりずいぶん老けた印象ですが、Philの方は相変わらず若々しいまま。ただし、Philは一時期、額が相当後退した時期がありましたから、あの髪はヅラでしょう。

……などと言うことはどうでも良くて、ステージに立った各メンバーは最初、あたかも音合わせかのようにフリーに楽器から音を出していきましたが、徐々にヴァイオリンのフレーズが形をなし始め、そして次の瞬間、まさかオープニングに来るとは思っていなかった「Magnum Opus」の堂々たる演奏が始まり場内は大歓声に包まれました。さすがにボーカルパートになるとSteveの熱唱は往年の声の張りを失って苦しそう(PAにも問題あり?)でしたが、演奏はまったく申し分ありません。Billyが月に吠えて、聴衆もこれに応えて「アオ〜ゥ!」と声を引っくり返すうちに曲は「Musicatto」から「Belexes」へと続いて、特に後者ではシャッフルビートに乗っていかにもKansasといった感じのユニゾンプレイが堪能できました。

BillyのMCに続いて「Point of Know Return」、さらに「Song for America」と畳み掛けてきました。さすがはKansas、名曲と呼ばれるナンバーを惜しげもなく繰り出してきます。さらにこれらの後に、アルバム『Monolith』の「On the Other Side」。この曲は、中間部の変拍子パターンが気持ちよく乗れるのが最高です。

定番のアコースティックナンバー「Dust in the Wind」をはさんで「Hold On」と「The Wall」が演奏された後に、自分にとってのこの日の白眉となったのは、いずれもアルバム『Leftoverture』中盤の曲「Cheyenne Anthem」と「Miracles Out of Nowhere」。Robbyの代わりにBillyが見事なリードボーカルを聞かせてくれました。「Cheyenne Anthem」はタイトル通り、アメリカ先住民への深いシンパシーを最初はしみじみと、そして途中からはドラマティックに歌い上げる曲。「Miracles Out of Nowhere」は前半のマイナースケールによるツインボーカルから中盤に7拍子のリズムパターンの上でフーガ風に2台のキーボードとヴァイオリンが異なる旋律を織り重ね、ブレイク後、度肝を抜かれるくらいの強烈なツーバスドラミング全力疾走。完全に圧倒されました。

最後はこれも感動的な名曲「Icarus - Borne on Wings of Steel」(「銀翼のイカルス」という邦題もステキ)から親しみやすいリズムの「Portrait (He Knew)」。アンコールはストレートなハードロックナンバーの「Fight Fire with Fire」、そしてこれまたお約束の「Carry on Wayward Son」で、いずれも大合唱となって大盛り上がりのうちに終わりました。

1時間半のショウはあっという間でしたが、充実した演奏が聴けて大満足。また、単純にアルバムの演奏を再現するのではなくてライブ向きによく考えられたアレンジが随所に施されているのも感心します。気になっていたRobbyの抜けた穴は、DavidとBillyがちゃんとカバーしていてまったく問題がなく、Philのほれぼれするほどに華麗なスティック捌きも健在。Richは終演後ににこにこしながら客席最前列の聴衆ひとりひとりに丁寧にピックを渡していました(←本当にいい人だ)。この日の演奏の後、8月28日に日比谷野外大音楽堂で開催される「プログレッシヴ・ロック・フェス2011」にもKansasは出演するのですが、フェスに行かれる方々は大いに期待していいと思います。ちなみにフェスの共演はPFMとWishbone Ashですが、PFMはいいとしてなぜWishbone Ash?まぁ私は行けないのですが、逆に興味津々であったりもします。

ミュージシャン

Steve Walsh vocals, keyboards
David Ragsdale violin, guitar, vocals
Rich Williams guitar
Billy Greer bass, guitar, vocals
Phil Ehart drums

セットリスト

  1. Magnum Opus / Musicatto / Belexes
  2. Point of Know Return
  3. Song for America
  4. On the Other Side
  5. Hold On
  6. Dust in the Wind
  7. The Wall
  8. Cheyenne Anthem
  9. Miracles Out of Nowhere
  10. Icarus - Borne on Wings of Steel
  11. Portrait (He Knew)
    -
  12. Fight Fire with Fire
  13. Carry on Wayward Son