塾長の鑑賞記録

塾長の鑑賞記録

私=juqchoの芸術鑑賞の記録集。舞台も絵も和風好き、でもなぜか音楽はプログレ。

ドン・キホーテ(東京バレエ団)

2007/04/14

東京文化会館(上野)で、東京バレエ団「ドン・キホーテ」。キトリは上野水香(170cm)、バジルは高岸直樹(187cm)の長身コンビ。

プロローグの後に幕が上がり、赤や黄色やオレンジの色彩が華やかな広場の場面。今日の席はL4と高いところなので、上手最奥の袖で上野水香が足踏みするように身体を動かしながら出を待ち、タイミングが来たところですっと顔を上げて中央へ進む颯爽とした姿を見ることができました。最初のうち、ダンサーの決めとオケのタイミングが合わない場面が続いて「ソトニコフさん、大丈夫か?」と思いましたが、徐々に軌道修正に成功。上野水香のキトリは、トレードマークの大きな目を使ったコケティッシュな演技全開。加えて、とりわけ足の動きに神経が行き届いていて、ペアテでの斜行も流れるようですし、片手リフトでもすらりと上下に伸びる足がきれいでした。

ジプシーの娘の憑衣したような激しい踊りは、以前観た吉岡美佳さんのものほどの凄みは感じなかったのですが、これはたぶん舞台が遠かったからでしょう。大地にひれ伏すようなこの踊りは、やはり正面から観なくては。続く夢の場面では、ドン・キホーテの理想の女性であるドゥルシネアを先ほどまでとは打って変わったしとやかな風情で上野水香が踊ります。優美な腕の使い方がポイントで、そのキャラクターの演じ分けが見事でした。キューピッドの高村順子さんの可憐な踊りは、本当に年齢不詳という感じ。

酒場の場面で始まる第2幕では、メルセデスを踊った井脇幸江さんが、スケールの大きさを感じさせてとてもよかったと思いました。ただ、オケのカスタネットがリズムに乗っていないのがどうしても気になりました。スペインが舞台なのですから、とにかく打楽器のリズムはしっかりしてほしいところです。そして、スムーズな場面転換で結婚式へ。グラン・パ・ド・ドゥでは、アダージョのバランスで上野水香が腕を上げきれない場面もありましたが、グラン・フェッテは音楽に乗って十分に安定していました。高岸直樹も、アダージョでのグラン・テカール、ヴァリエーションでの跳躍と回転の連続技、そして最後のグランド・ピルエットと、年齢を感じさせない情熱的な踊りを披露して、満場の拍手を集めました。

今年は、6月にホセ・カレーニョとタマラ・ロホ、7月にはアンヘル・コレーラとレティシア・ジュリアーニで「ドンキ」を観る予定で、まさに「ドンキ」の当たり年。その皮切りとして、とても充実した舞台を観ることができました。

公演終了後、上野公園内の「韻松亭」でWeb仲間のえみ丸さん・常吉さんと、鳥すき焼きをつつきながらのオフ会。お酒も会話も楽しく進みまくって、ふらふらになって帰宅……。

配役

キトリ
ドゥルシネア姫
上野水香
バジル 高岸直樹
ドン・キホーテ 芝岡紀斗
サンチョ・パンサ 高橋竜太
ガマーシュ 古川和則
メルセデス 井脇幸江
エスパーダ 木村和夫
ロレンツォ 平野玲
2人のキトリの友人 乾友子 / 佐伯知香
闘牛士 大嶋正樹 / 中島周 / 松下裕次 / 野辺誠治 / 辰巳一政 / 長瀬直義 / 宮本祐宣 / 横内国弘
若いジプシーの娘 奈良春夏
ドリアードの女王 西村真由美
3人のドリアード 田中結子 / 浜野香織 / 前川美智子
4人のドリアード 森志織 / 福田ゆかり / 村上美香 / 阪井麻美
キューピッド 高村順子
ヴァリエーション 1 乾友子
ヴァリエーション 2 佐伯知香
指揮 アレクサンドル・ソトニコフ
演奏 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団