塾長の鑑賞記録

スーパーエッシャー展

2006/12/16

Bunkamura ザ・ミュージアムで、「スーパーエッシャー展」を見ました。ハーグ市立美術館の所蔵品を中心に180点からなる充実したこの展示、凄い人気だそうで休日は長蛇の列になると聞いていたので、開場時刻の午前10時ちょうどに会場に行ってみると、案の定行列はさほどではなく、チケット購入まで15分ほどですみました。

エッシャーと言えばもちろんだまし絵、ではあるのですが、今回はエッシャーの若い頃の版画も多数展示されており、特に彼が愛した南イタリアを描いた《ボニファチオ》《カストロヴァルヴァ》の浮世絵にも通じる大胆な構図や、《南イタリアの風景》の奥行きのある景色には息を飲みます。しかし、ムッソリーニのファシズムが台頭し、戦争の危険から逃れるためにイタリアを離れたことが、後のエッシャーを特徴づけることになったのだから運命というのは不思議です。スペインのアルハンブラ宮殿で見たモザイク模様から平面の正則分割を追求するようになった成果として《昼と夜》が生まれ、北ヨーロッパの景色に南イタリア以上の美しさを見いだせなかったことが、あり得ない世界=だまし絵へと結実していきます。今回の出展作の中でも、《別世界》《上と下》《物見の塔》《上昇と下降》《滝》など著名な作品が惜しげもなく展示されていて、その充実振りに感心します。

もっとも、2002年に同じBunkamura ザ・ミュージアムで観た「エッシャー展」でもこれらの作品の多くは観ているので、それだけならさほど驚かないのですが、今回の展示ではさらなる工夫がありました。まずは、《立方体による空間分割》が巨大なタッチスクリーンに映し出されていて、指先で触るとその仮想三次元空間の中を漂うように浮遊することができます。また、エッシャーの版画を使用したレコードジャケットや、エッシャーを連続特集していた1970年の「少年マガジン」など、よくこれだけ集めたもの(「少年マガジン」は、表紙に「あしたのジョー」のちばてつやと「巨人の星」の川崎のぼるの両氏が並んでいたりするのを見て懐かしく思いました)。他にも、豊富な写真や映像、版木などから、エッシャーその人を偲ぶことができるようになっているのも、この展示のよいところです。