Journey

2004/10/16

Journeyの曲をリアルタイムで聴いていたのは、ちょうど彼らがキーボードプレイヤーを創設メンバーのGregg RolieからJonathan Cainに替えて全米No.1ヒットアルバム『Escape』(1981年)を世に送り出してから、次作でこれも売れに売れた『Frontiers』(1983年)のリリースにかけての3、4年ですから、早いものでもう20年以上前になります。彼らの音楽は、Neal Schonのギターを中心とする確実な演奏能力に加えてキャッチーなメロディラインと美しいコーラスが売り物で、私もJourneyに限ってはピアノやシンセのパートを遊びでよく弾いてみたもの。そんなわけで、ごきげんなドラムソロから徐々に楽器が参加していって最後にSteve Perryが駆け込んで「Where Were You」になだれ込むEscapeツアーでのライブはテレビ放映を弟と2人で食い入るように観たものですし、Frontiersツアーの方は日本武道館へ観に行ってとにかくコーラスがうまいのに感心した覚えがあります。

時は流れて1998年、ボーカルとドラムを入れ替えた編成(バンド自体はその間にも紆余曲折あったのですが)での来日公演を観に行って懐かしい曲の数々を楽しんだのですが、その後は長いことバンド名を目にすることもCDをかけることもありませんでした。ところが最近、映画『海猿』の主題歌にバラード「Open Arms」が使われ、CMでも「Don't Stop Believin'」が便乗気味にかかるようになってリバイバルブームが起こり、今回の来日(「Open Arms Japan Tour 2004」)につながったようです。直前まで観に行くかどうしようか迷っていましたが、今年は例年に比べてライブにあまり行っておらず、そろそろロックコンサート特有のあの雰囲気に浸りたい気持ちがあって、重い腰を上げて(といっても「@ぴあ」のサイトへアクセスするだけ)チケットをゲットしました。

ちなみに、こういうTV / 映画絡みのリバイバルは年初のQueenでも見られた現象で、つまるところは同時代に魅力的な音源を探すことができないから視聴者のノスタルジーに訴えかける懐メロに頼るのですが、当時ロック青少年だった世代が購買力の中心を担うようになっていることもマーケティング的には当然狙い目になっているのであって、その財布の厚みのおかげで我々は自分たちの青春時代を追体験する特権を得られるというわけ。してみると、そろそろ来そうなバンドとしては他にStyxとかREO Speedwagonなどが思い浮かびますが、かたやブリティッシュなプログレなどはまずかからないのでしょう。

前日からの発熱でへろへろの状態ながら東京国際フォーラムに到着したのは、開演30分前。器材の配置は中央奥にツーバスのドラムセット。向かって右からギター、ボーカル、ベース、キーボード。キーボードはJonathan Cainのトレードマークと化した赤いグランドピアノの上にシンセ。その左手側にも一段鍵盤のオルガンの上にシルバーのシンセ。私の席は2階の後方やや左寄りでステージからははるか遠くですが、評論家然としてメンバー全員の動きを見るには悪くない席です。

定刻の17時ちょうどに暗くなって歓声が上がる中、オープニングを告げる派手な音楽とともにステージ背後のスクリーンに「Journey」の電飾文字が流れる中をメンバーが登場。ハイハットの4カウントから「Be Good to Yourself」でショウが始まりました。出だしからぐいぐいとドライブする気持ちが良い曲で、明るく楽しいサビのコーラスがいかにもJourney。コーラスワークもばっちりだし、リードボーカルのSteve Augeriは先行する仙台公演で喉の不調が伝えられていましたが今日は調子がいいようです。「Only the Young」の後にNeal Schonのギターによるアメリカ国家がなぜか流れて(ここが米国なら大盛り上がりするのでしょうが日本の聴衆はとまどい気味)「Stone in Love」へ。ここから後は下記のセットリストにあるように『Escape』『Frontiers』主体でおなじみのヒット曲ばかりで、曲間のMCも必要最小限で客席を圧倒するかのように次々にパンチを繰り出してきます。演奏は非常にタイトで、しかも前半はJonathan Cainがキーボードよりもギターを中心に弾いていたため、ロックらしい音圧が広い東京国際フォーラムの空間を越えてダイレクトに曲を2階席へ届けてくれている感じです。特に「Stone in Love」に続く「Wheel in the Sky」もツインギターにしてNeal SchonのギターソロのバックにJonathan Cainがギターリフを重ねたのは効果的(ただし、もう少しアップテンポにした方がよかったのですが……)。こうした硬派な雰囲気はバラード調の曲でも維持されており、美しく流れるようなピアノの旋律をもつ「Send Her My Love」やバラード「Open Arms」「Faithfully」にも芯が通ったような線の太さがあって、ステージを引き締まったものにしていました。逆にレコードでは印象的なピアノのリフが素晴らしいと思える「Don't Stop Believin'」が、そののっぺりした構成のせいかライブではさほどの輝きを見せないのが不思議です。

そして今回驚いたのは、全員がそれぞれリードボーカルをとる場面をもっていたこと。Neal SchonはJimi Hendrixの曲、ベースのRoss Valoryはブルースっぽい「Walks Like a Lady」をいかにもそれっぽく、Jonathan Cainはツインボーカルの曲「Just the Same Way」でGregg Rolieのパートを、といった具合で、しかもいずれも十分過ぎるくらいに聴けるレベルなのですが、一番の驚きはドラムのDeen Castronovoが強力なハイトーンヴォイスを持っていて、ハードドラミングをかましながら「Keep on Runnin'」「Suzanne」(←初めて聴いたがアップテンポで可愛い曲)「Mother, Father」をリードで歌い、「Edge of the Blade」でも最高音部をSteve Augeriにかわって歌ったことです。もちろんSteve Augeriもヴォーカリストとしての表現力では他のメンバーをはるかに凌駕しており、上述のバラードでの歌い上げは聞き物でしたし、「Rubicon」のサビの大好きなフレーズMake a move across the rubicon. Future's knockin' at your door. Take your time and choose the road you want. Opportunity is yours.の最後のロングトーンyoursをしっかり伸ばしきったときには鳥肌が立ちました。

評論家席(?)の2階席中央部は最初のうちなかなかノリきれない雰囲気がありましたが、曲が進むにつれてだんだん皆がうずうずし始めているのが感じられ、1人また1人と立ち上がっていって、遅まきながら「Separate Ways」のイントロのシンセフレーズでついに一斉に総立ちになったときはこちらも感動しました。発熱も忘れて歌いまくったライブも終幕が近づき、元気のいい「Any Way You Want It」でいったんメンバーが引っ込みます。アンコールは、シャッフルのリズムでJonathan Cainのブルースハープも披露された「Lovin' Touchin' Squeezin'」。プロフェッショナルなミュージシャン達による2時間10分の満足度の高いコンサートでした。

ミュージシャン

Steve Augeri vocals
Neal Schon guitar, vocals
Jonathan Cain keyboards, guitar, vocals
Ross Valory bass, vocals
Deen Castronovo drums, vocals

セットリスト

  1. Be Good to Yourself
  2. Only the Young
  3. Guitar Solo (The Star Spangled Banner)
  4. Stone in Love
  5. Wheel in the Sky
  6. Keep on Runnin' [Deen Vocals]
  7. Higher Place
  8. Suzanne [Deen Vocals]
  9. Lights
  10. Walks Like a Lady [Ross Vocals]
  11. Chain Reaction
  12. Voodoo Chile [Neal Vocals]
  13. Piano Solo / Send Her My Love
  14. Open Arms
  15. Sakura Sakura / Mother, Father [Deen Vocals]
  16. Just the Same Way [Jonathan / Steve Vocals]
  17. Rubicon
  18. Edge of the Blade [Steve / Deen Vocals]
  19. Escape [Steve / Deen Vocals]
  20. Faithfully
  21. Don't Stop Believin'
  22. Separate Ways
  23. Any Way You Want It
    -
  24. Lovin' Touchin' Squeezin'