塾長の鑑賞記録

塾長の鑑賞記録

私=juqchoの芸術鑑賞の記録集。舞台も絵も和風好き、でもなぜか音楽はプログレ。

Mr. Big

2002/01/12

2002年最初のライブは、赤坂BLITZでMr. Bigのライブ。ギタリストRichie Kotzen加入後2作目の『Actual Size』発表後、Mr. Bigは解散を正式に発表しており、このツアーはバンドとしての彼らを見る最後の機会です。この日のライブは、このファイナルツアーの初日にあたり、バンドはこの後日本各地を回って2月5日の東京国際フォーラムでラストライブを行うことになっています。解散の理由については、バンドの創設者であるベースのBilly Sheehanがもともと目指していた方向性とポップになり過ぎたバンドの方向性とのずれが原因との論評もありますが、ここでは深く立ち入りません。

2年前のZepp Tokyoと同様、今日の赤坂BLITZもスタンディングなので開場時刻に間に合うように赤坂に到着。会場の前に着いてみると建物の中からはまだサウンドチェックの重低音が響いており、予定より少し遅れて会場内への誘導が始まりました。速攻でパンフを買い求めてから会場内に入り、左右前後いずれからも見てもど真ん中の位置に立つことができました。ここはちょうど会場を左右に仕切る手すりが立っていて、身体を預けるのに具合がいい場所でもあります。ステージ上には紗幕が張られており、その前には例によって向かって左にハーモニカをぶら下げたBillyのマイク、右にRichieのマイク。定刻を過ぎた頃からだんだん会場内がヒートアップしてきて、左隣に立っている女の子2人組が「えり〜っく!」「早く〜!」とボルテージを上げています。

15分ほど過ぎたところで客電が落ち、歓声の中にSEが流れ始めました。SEはバンドの過去のヒット曲をさわりだけ聞かせてはきゅるきゅると早送りするといったもので、バンドの栄光の歴史を回顧するという趣旨でしょう。そして突如始まったのがギターのハードなリフ。『Actual Size』のオープニングナンバーで7拍子のイントロが強力に印象的な「Lost In America」です。ステージ上の紗幕は間髪を容れずに落とされ、ベースアンプの上に立ち上がってベースのポジションマークを青く光らせているBillyが見えたと思った瞬間、凄い圧力が客席の後ろからかかってきて、左隣の女の子達も歓声のドップラー効果を残して瞬時に前の方に押し出されていきました。

バンドの方はそんな客席の阿鼻叫喚には無頓着にぐいぐい演奏を続けており、サビのコーラスはリードボーカルのEric MartinとドラムのPat Torpeyのボーカルラインが複雑に絡み合ってひきつけられました。続いて、これもハードかつスピーディーなリフが気持ち良い「Daddy, Brother, Lover, Little Boy」になだれ込みます。キメのユニゾンをBillyとRichieが息を合わせ、ついで高速ソロからもの凄いスピードのピッキング(原曲ではドリル)を見せつけました。3曲目はやはり新譜から、ミディアムテンポのポップな「Shine」。続くシャッフルの「Price You Gotta Pay」ではハーモニカを吹くBillyの後ろからEricが手を回してベースを弾くというギミックも見せましたが、彼らの重要な魅力の一つである美しいボーカル・ハーモニーはEricがアコギを持ち出した「Superfantastic」で披露されました。

以下、過去の名曲を次々に繰り出して隙のないステージが延々続きます。Richieは今回は黒いStratocasterで野太い音を出しており、前回同様「Green-Tinted Sixties Mind」のイントロをタッピングなしで弾いたり、ある曲のソロでは右手を腰の後ろに回して左手のハンマリングだけで長いフレーズを弾いて見せたり、たびたびピックを捨てて(Jeff Beckのように)指で弾く場面を見せたり、さらにギターソロのコーナーでは実に流麗なスウィープ奏法で驚かせたりしてくれました。また、彼のリードボーカルも「Suffocation」や「Static」「30 Days in the Hole」で大々的にフィーチュアされていました。ベースのBillyは、随所でRichieとの高速ユニゾンを決め、ソロコーナーではまたも長時間にわたる1人舞台。ハーモニクスを使ったフレージングや派手な両手タッピングにボリューム奏法、スリーフィンガーでの速弾き、はては肘打ちやネック曲げまで繰り出して客席を沸かせました。そして、やはりPatのドラミングは最高。ハイハット回りで細かいスティック捌きを見せ、カウベルを左足のペダル操作で叩き、ソロの中でツインペダルでリズムキープしながら「Let It Be」を歌う、といった小技・大技もさることながら、どの曲も躍動的なリズムの上でドラムセットが素晴らしい音で鳴っていて、やはりロックはドラムがしっかりしていると演奏がびしっと締まるものだということをはっきり認識させられます。客席の方もこのバンドの魅力をよく承知していて、フロントマンであるEricへの声援やコーラスへの参加はもちろんですが、その他の3人に対しても同様に尊敬の念のこもった大きな声援と拍手を随所で送っていました。

アンコールは2回。最後はBillyとRichieがステージ上に膝を突いての「Mr. Big」で、2時間ジャストのライブを感動的に締めくくりました。

ミュージシャン

Eric Martin vocals, guitar
Richie Kotzen guitar, vocals
Billy Sheehan bass, vocals
Pat Torpey drums, vocals

セットリスト

  1. Lost In America
  2. Daddy, Brother, Lover, Little Boy
  3. Shine
  4. Price You Gotta Pay
  5. Superfantastic
  6. Alive and Kick'n
  7. Suffocation
  8. Guitar Solo
  9. Static
  10. Where are They Now
  11. Take Cover
  12. Greeen-Tinted Sixties Mind
  13. Take a Walk
  14. Wild World
  15. Drum Solo
  16. Dancin' With My Devils
  17. To Be With You
  18. Electrified
  19. Bass Solo
  20. Addicted To That Rush
    -
  21. Colorado Bulldog
  22. Just Take My Heart
  23. 30 Days in the Hole
    -
  24. Blame It on My Youth
  25. Mr. Big