塾長の鑑賞記録

塾長の鑑賞記録

私=juqchoの芸術鑑賞の記録集。舞台も絵も和風好き、でもなぜか音楽はプログレ。

眠れる森の美女(東京バレエ団)

1999/11/07

シルヴィ・ギエムの「眠れる森の美女」を、横浜の神奈川県民ホールで観ました。開演15時、終演17時35分。東京バレエ団と東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団(指揮:ミッシェル・ケヴァル)。シルヴィ・ギエムの公演を前回見たのは2年前だから随分久しぶりですが、その人気の高さは相変わらずで、会場にはギエム目当ての幅広い年齢層の観客が詰め掛けました。

今回はこれまた久しぶりにバレエ鑑賞の「師匠」と御一緒することになっているのに、開演時間になっても師匠が現れずやきもき。第2幕から合流した師匠に聞いたところ、先に山下公園を散策するつもりで早めに出たのに中央線がトラブルで止まってしまい間に合わなかったそう。しかし遅れたとは言え第1幕もちゃんとロビーのモニターで見ることができたし、そもそもギエムの出番は第2幕(演出によっては第1幕にあたる部分は「プロローグ」、オーロラ姫の成人の祝いが「第1幕」)からなので実害は少ないのでした。

さて、オーロラ姫はクラシック・バレエの中でもとりわけ高度なテクニックが要求される役どころとされ、その最初の見せ場は第2幕のローズ・アダージョです。4人の貴公子に求婚されるオーロラ姫は貴公子たちに次々に手をとらせながらポワントで立ち、アティテュードの姿勢を続けたまま男性の動きに沿ってゆっくり回転します(アティテュード・アン・プロムナード)。固唾を飲んで見守る観客の視線の中で、ギエムはまるで神様の見えない手が彼女を支えているかのような安定感でこの場面をこなして最後のアラベスクを決め、観客の割れんばかりの拍手を浴びていました。

この前まではカラボスとその従者たちやリラの精がけっこうがんばっていて「東京バレエ団もやるじゃないか」と思っていましたが、ギエムが登場するとやはり役者の違いは歴然で、師匠も賛嘆して曰く「トウ・シューズの音からして違う」のだそう。そして第3幕の王子とのグラン・パ・ド・ドゥも圧巻で、最後のポワントでの静止時間の驚異的な長さはオーロラ姫が完全に自立した女性へと成長したことをこれ以上ないくらいはっきりと示していました。

配役

オーロラ姫 シルヴィ・ギエム
デジーレ王子 ニコラ・ル・リッシュ
高野一起
王妃 加茂律子
式典長 飯田宗孝
善の精リラ 吉岡美佳
悪の精カラボス 市来今日子
優しさの精 武田明子
やんちゃの精 荒井祐子
気前よさの精 佐野志織
のんきの精 高村順子
度胸の精 関根里美
オーロラの友人 佐野志織 / 中澤多喜 / 大島由賀子 / 福井ゆい
4人の王子 森田雅順 / 木村和夫 / 植村公春 / 後藤晴雄
金の精 太田美和
銀の精 小出領子
ダイヤの精 荒井祐子
サファイヤの精 高村順子
フロリナ王女 奥村志帆
青い鳥 大嶋正樹
白い猫 早川恵子
長靴をはいた猫 武石光嗣
指揮 ミッシェル・ケヴァル
演奏 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

あらすじ

第1幕(フロレスタン王の宮殿の大広間)

オーロラ姫の洗礼式。招かれたリラの精と5人の妖精はオーロラ姫にそれぞれの心を贈り祝福する。しかし、悪の精カラボスが従者とともに現れて、式典長の不手際で祝宴に呼ばれなかったことを怒り、オーロラ姫は16歳の誕生日に糸紡ぎの針に刺されて死ぬだろうと呪いをかける。一同は打ちひしがれるが、リラの精は、姫は死ぬのではなく100年の眠りにつくだけだと宣言する。王はさっそく国中の糸紡ぎ機を焼き捨てるよう触れを出す。

第2幕(16年後の城の中庭)

オーロラ姫の16歳の誕生日。オーロラ姫は4人の求婚者と踊りばらの花を受け取るが、そこへ現れた1人の婦人が捧げた贈り物が実は紡ぎ針で、オーロラ姫は指先に針を刺して倒れる。正体を表したカラボスには4人の王子も太刀打ちできないが、リラの精が現れカラボスは逃げ去る。眠るオーロラ姫が担ぎ出された後に、リラの精は城全体を森で覆って100年の眠りにつかせる。

第3幕(100年後)

第1場(紅葉の美しい森に通じる道)

リラの精は狩りの途中のデジーレ王子に歩み寄り、オーロラ姫の幻を見せてカラボスの呪いと100年の眠りの秘密を打ち明け、自分が永遠の愛を誓って呪いを解く若者になることを申し出た王子を眠りの森に導く。

第2場(オーロラ姫の眠る城内の暗い一室)

カラボスと従者はオーロラ姫の眠りを覚まそうとする者を妨害するために城の回りを取り巻いている。王子が勇気を振るってカラボスを追い払い、オーロラ姫に口づけするとオーロラ姫は瞳を開き、同時に森も消えて城も人々も100年の眠りから目覚める。

第3場(城の大広間)

オーロラ姫とデジーレ王子の婚約の祝い。宝石の妖精や青い鳥とフロリナ王女、長靴をはいた猫などが祝福の踊りを踊る。舞踊会はオーロラ姫と王子の踊りでクライマックスを迎える。