Simon Phillips

1997/10/26

渋谷クラブクアトロで、Simon Phillipsのライブ。ステージの中央にしつらえられたレモンイエローのゴージャスなドラムセットが、開演前から期待をそそります。

Jeff Beckをはじめ数多くのミュージシャンのアルバムに参加している売れっ子セッションドラマーであり、同時に近年はJeff Porcaroの後任としてTotoにも参加しているSimon Phillipsは、その高度なテクニックと小柄な身体からは想像もできない程パワフルな演奏でファンの支持を集めています。私自身も、1980年に日本武道館で行われたJeff Beckのライブでの彼の、丸太で叩いているような重低音の迫力とスピード感溢れるプレイの共存にノックアウトされた記憶があります。ロックドラマーとして認知されることの多いSimonですが、今回のツアーでは自身のグループを率いて、最近発表した彼のリーダーアルバム『Another Lifetime』からの曲を中心にジャズ / フュージョン寄りの演奏を展開しました。

とはいえ、とにかく大音量と目もくらむような高速タム回しや瞬間移動、手首の返しだけでのシンバルのハードヒットなどの多彩な手技に加えて、彼のトレードマークであるツーバスにさらに小口径で歪んだ重低音のバスドラを加えた足技が随所に炸裂。「やっぱりロックドラマーだなぁ」という感想が観客から漏れていました。そして、たとえば

こんなフレーズとか、

こんなフレーズでフルパワーで迫られると、もはや呆気にとられるしかありません(Rittor Music『リズム&ドラム・マガジン』から引用)。

見ていて面白かったのは、セット自体は右利き用なのにハイハットやライドは左手でプレイし右手でスネアを叩くため左右の手がクロスしないオープンハンドであること。またドラムソロの中では、ツーバスでの16分の3連符連打の上に左手でオクタバンを使った4分のパターンを作り、右手にはスネアやタム、シンバル上を自由に遊ばせるオスティナートプレイを見せていました。観客も曲を聞きに来ているというよりはSimonの「技」を見に来ているという感じです。

そして最後に思いがけないハプニングがありました。アンコールでなんとMr. BigのギタリストPaul Gilbertが飛び入り参加し、Jeff Beckの「El Becko」を弾いてくれたのでした。

ミュージシャン

Simon Phillips drums
Andy Timmons guitar
Jeff Babko keyboards
Jerry Watts bass
Wendell Brooks saxophone
Paul Gilbert guitar(アンコール)