出発

2004/07/31

成田空港をシンガポール航空SQ997便で出発。今回の旅では山仲間ユウコさんも一緒です。といってもユウコさんの方は岩登りの技術を持っていないのでマッターホルンに登るわけではなく、ツェルマット周辺のハイキングが主目的となります。

飛行機の中では映画を観るのが楽しみの一つですが、今回は同じシンガポール航空を使ったNiizawa氏からの事前情報であらかじめお目当てがありました。シンガポール航空のAVメニューの中に『Treks in a World』というカテゴリーがあって、その中の「Climbing in the Alps」というのが、女の子がドロミテでトレーニングしてからマッターホルンに登るという話なのです。ドロミテでは高度感にひきつり、マッターホルンでは疲労でへろへろになりながらも頂上の雪稜の上に立った主人公は、最後にマッターホルンをバックに「もう一度登りたいかって?とんでもない。あなたが登りたい?ぜひ!」と視聴者を励ましてくれます。この『Treks in a World』では他にアメリカ人らしい女の子が中国やグレートバリアリーフを旅するシリーズがあって、むしろこれらの方が主人公の好感度も高く、映像的にも面白いものでした。

6時間余りのフライトでシンガポール着。次のボーディングまで4時間もあるので、ちょっと贅沢ですが身体を伸ばすために空港内のトランジットホテルを使うことにしました。気になるお値段は2人で65シンガポールドル程。フロントがあらかじめ乗継便を聞いてウェイクアップコールを設定してくれました。

乗継便は深夜発のSQ346便。ここからチューリッヒまで約12時間の飛行は、太陽から逃れるように西へ飛び続けて最後にヨーロッパの上空でお日様に追いつかれることになるわけです。予定通り飛び立った飛行機の中は、しかし妙に寒くて震えました。「どこか窓が開いているんじゃないのか?」と発言してユウコさんに馬鹿にされましたが、窓の外を見ると月明かりに照らされた雲海の上を飛行機はエンジン音に包まれながらゆったりと進んでいます。しばらく寝て、6時間ほどたったところでふと目が覚めて窓から下を見たら、雲海の切れ間から下にオレンジ色の炎がところどころで燃えていました。どうやら中東の油田地帯の上空を飛んでいるらしく、油井の施設の照明も見えています。

そのうちスチュワーデスから窓のシェードを下ろすように促され、後はジーン・ケリーとフランク・シナトラが競演するミュージカル映画『On the Town』(邦題『踊る大紐育』)などを観て過ごしました。