塾長の渡航記録

塾長の渡航記録

私=juqchoの海外旅行の記録集。遺跡の旅と山の旅、それに諸々の物見遊山。

スネガからのハイキング

2003/07/24

最後の1日は、のんびりハイキングと市内観光で過ごすことにしました。ツェルマットの東側はゴンドラや登山鉄道、ケーブルカーが発達しており、これで上まで登ってからゆっくりと谷底のツェルマットへ下るハイキングコースが充実しています。ガイドブックによるとスネガからライ湖の逆さマッターホルンを見てツェルマットまで下る2時間ほどのコースがお勧めのようだったので、8時頃にホテルから5分ほど歩いて地下式ケーブルカーの駅に行き「One way. One person.」でスネガまでの切符を買いました。ずいぶん寒い構内には急角度のケーブルカーが待機していて、MTBを持ち込んでいる若者もいました。

ちなみにツェルマットの村内にはいたるところにスポーツ用品店があり、そこではレンタルも積極的に行っているようです。貸している道具も登山やハイキングだけでなく、MTBやそのためのヘルメットなども揃えてあり、旅行者は遊ぶ道具に関してはほとんど手ぶらでこの地を訪れてもOKです。

スネガの駅で降りて外に出ると、高曇りの空の下、すぐ眼下に小さな湖(というより池)があって、それがライ湖でした。想像していたものに比べるとずいぶん貧相ですが、湖畔に降りてみると確かにマッターホルンの眺めは良いし、これできれいに晴れていたら、湖面も空を映して本当に美しいに違いありません。

お約束の「逆さマッターホルン」を撮影したら、湖をぐるっと回ってハイキング道を下ります。先ほどのMTBの若者たちも同じ道を颯爽と下っていきました。道の向こう、山の中腹にはフィンデルン村の民家が散らばっていて、なるほどこれはいい雰囲気だと感心しました。この辺りの家は土台を石で組み、その上に木で建物を建て、屋根は平らな薄い灰緑色の石で鱗状に葺いているのが特徴です。

このコースは家族連れで歩くのにぴったりだななどと考えながら、ところどころにある分かれ道も眺めの良さそうな方を適当に拾って歩くうちに、道はやがて森の中をジグザグに下るようになりました。坂道を登ってくるハイカーと「モルゲン!」「グリュェツィ!」と挨拶を交わしながらどんどん下り、写真タイムも含めてちょうど2時間でツェルマットに戻りました。

ホテルに戻ったところで、帰りの飛行機のリコンファームをしていないことを思い出しさっそくチューリッヒのスイス航空に電話してみたら、テープの声で「スイス航空はリコンファーム不要です」と流れてほっと一安心。そのまま昼間はホテルでゆっくり休み、帰国のためのパッキングも済ませて、夕方になってからツェルマット最後の夜を楽しもうと外に出ました。バンホフ通りをふらふら歩いているときにヴェガに勤めているチャーミングなCさんにばったり会いましたが、彼女の口から、今日登ったパーティーも強風のためにソルベイヒュッテで引き返さざるを得なかったらしいということを聞いて呆然。つい数日前までは「乾いていて簡単だよ」などと言われていた山が、今週は登山者たちを連日拒み続けているのです。

Cさんにいつの日かの再会を約して別れ、最初の夜にフォンデューを食べたヴァリザー・カンネへ向かいました。今日はラクレットを食べるのが目的です。ラクレットはヴァリス州の名物料理で、この地方の巨大な円盤型チーズを半分に切り、その断面を温めてとろけたところをこそげ落とし、蒸したじゃがいもにつけて食べるものです。一皿の量は大したことがないので、お腹と財布に余裕があれば「One more portion, please.」とおかわりをとればよいのですが、ここで注意しなければならないのは、この解説にもあるように「じゃがいもを食べるためにチーズをつける」のではなく「チーズを食べるためにじゃがいもをつけ合わせる」という主従関係にあることで、あくまで主役はチーズ。したがって皿にチーズが残った状態でおかわりを頼むとヘンな顔をされてしまいます。また、チーズがお腹の中でかたまりにならないように白ワインと一緒にいただくのが注文のポイントで、私はハーフボトルのワインと、さらに前菜として薄切りの干し肉を頼みましたが、これもまたけっこうなボリュームがありました。

お目当てのラクレットは、ちょっと塩気のきいたチーズの弾力のある食感とじゃがいもの上品でほくほくした感じが実においしく、ついつい食が進んで3皿を注文してすっかり満足、充実したディナーとなりました。