塾長の渡航記録

塾長の渡航記録

私=juqchoの海外旅行の記録集。遺跡の旅と山の旅、それに諸々の物見遊山。

ブレヴァン〜フレジェール

2014/07/30

今日は一人で、エギュイ・ルージュのハイキングコースであるブレヴァンからフレジェールまでを歩いてみることにしました。天気は曇り空ではありますが、山歩きには支障ない様子です。

ゆったり朝食をとってからおもむろに出発。シャモニー市街を抜けてけっこうな坂道を登り、ブレヴァンへのロープウェイ駅を目指しました。

8時すぎに動き出したゴンドラに乗って、まずは1000mほど登ったプランプラへ。このゴンドラの直下の怒濤の急坂道をストックを使いながら猛スピードで登る短パン姿の登山者の姿を見ましたが、あれはトレーニングだったのだろうか?そこでロープウェイに乗り換えて、標高2525mのブレヴァンへ向かいます。

ブレヴァンのロープウェイ駅から見下ろした中腹のプランプラ。その右奥、対岸の山肌に刻まれている斜めの線は、シャモニーからモンタンヴェールへの登山鉄道のものです。

長く舌を伸ばしたボソン氷河の下部が見えていますが、モン・ブランの山頂部は雲の下。シャモニー市街は標高1035m近辺ですから、この眺めは1500mほどの標高差を見下ろしていることになります。

目を転じると、高曇りの空の下に下界からは想像もつかなかった光景が広がっていました。

こちらはシャモニーに対して反対側の眺めで、造山運動と氷蝕が作り出した想像以上にダイナミックな地形です。道はいったんそちら側を回り、エギュイ・ルージュを直線的に見通しながらブレヴァン・クラッグスへ下ります。

ブレヴァン・クラッグスの岩場では、すっきりした岩壁にいくつもボルトが打たれているのが見えました。後で調べてみるとここだけで30本ものスポートルートが引かれており、たとえばこの凹角の垂壁を登るラインは6a+(5.10b)です。ただしこのときは岩がびしょ濡れで、そのせいか誰も登ってはいませんでした。

コルからシャモニー側の斜面を少し下ったところからは、ブレヴァンの岩場を仰ぎ見ることができました。ここにも何本かのマルチピッチルートが引かれており、明日登る予定の「フリゾン・ロッシュVoie Frison-Roche」もこちらから取り付くことになる予定です。一方、右の写真の顕著なニードルの根元では2人の女性クライマーが登攀準備中でしたが、こちらは「Crakoukass」。このニードルを登って終わりではなく、そのままリッジ上を稜線まで辿る長大なルートでした。

プランプラの手前の開けた台地にはパラグライダーの発進ポイントがありましたが、シャモニーの谷を埋めたガスがこの高さまで上がってきており、パラグライダーは離陸するとあっという間にガスの中に消えてしまいます。すると1台のパラグライダーが離陸に失敗し、これを目の当たりにしたタンデムフライトのお客の女性は震え上がってしまいました。ペアを組むパイロットから英語で「合図をしたらとにかく前に走るんだ。ぶら下がろうとはしないこと。Are you alright??」と話し掛けられていましたが、すっかりびびってしまている彼女は上の空。彼氏らしい男性が先に堂々と離陸していった後に、女性の方はキャーキャーと悲鳴を上げながら他のスタッフにもひきずられるようにして斜面を駆け下り、どうにか無事に離陸していきました。ああ、よかった。

ガスがますます上がってきているのでハイキングはここで打ち切ろうかとも思いましたが、しばし思案の末、せっかくなので歩みを続けることにしました。

ハイキング続行の判断は正解でした。エギュイ・ルージュのシャモニー側斜面をトラバースしていくこのハイキング道は、お花畑や森、ちょっとした岩場など変化に富み、しかも途中では静寂の中に響くマーモットのピィピィという鋭い鳴き声を聞けるポイントもあって、ガスの中でもとても楽しいものでした。

プランプラ(標高1999m)から1時間半あまり、まったく飽きることのない歩きの後にフレジェール(標高1877m)に到着です。

一昨日はコーヒーを頼んだ売店で、今日はハイネケン(Lサイズ)とBLTサンドイッチを購入して、ベンチでのんびりいただきました。雲の底が下がってきており夏とは思えない寒々しい景色でしたが、こういう景色は実は嫌いではありません。

ロープウェイでレ・プラへ下って、シャモニー・バス(ホテルでもらったゲストカードのおかげで無料)を使ってホテルに戻ったところ、しばらくして強い雨が降り始めました。タイミングよく帰還できたのはよかったのですが、明日の岩場は大丈夫だろうか?と空を見上げながら心配になりました。


▲ブレヴァン〜フレジェールのハイキング
▲この日の行程。