裏同心ルンゼ

山頂  
分類 関東周辺 / アルパイン
日程 2017/01/07-08
同行 ヨシノさん
概要 初日は赤岳鉱泉のアイスキャンディーで今季初アイス。二日目は裏同心ルンゼを抜け、大同心の肩から大同心稜を下降。

裏同心ルンゼ。おそらく今シーズン最後のチャンスだったことでしょう。(2017/01/08撮影)

成人の日の三連休は、予定していた相方が都合が悪くなったことと中日の降雪予想とから山行は諦め、せいぜい土曜日に近郊のトレラン程度にしようと考えていました。しかし、ふと思い立って金曜日の朝にジム仲間のヨシノさんに連絡を入れてみたところ、ひとりで八ヶ岳へ赤岳を登りに行く予定とのこと。連絡をとった趣旨は日帰りで岩根山荘でも……というものだったのですが、お互いに急遽予定を変更し、裏同心ルンゼをターゲットに土曜日の朝発で赤岳鉱泉へ向かうことにしました。

2017/01/07

■09:55 美濃戸口 ■11:05 美濃戸 ■13:00 赤岳鉱泉

新宿7時発のスーパーあずさに乗って9時に小淵沢でヨシノさんと合流し、そこからヨシノさんの車で美濃戸口へ。

美濃戸口周辺はほとんど雪がありませんでしたが、進むにつれて雪が出てきました。行く手に大同心と小同心の姿を望めば、冬山気分が蘇ってきます。

例年なら12月からアイスの練習を繰り返すところですが、今年は相方かっきーが負傷休場中のため、これが今季初アイスです。そこで、まずはアイスキャンディーでの練習から。ドライ壁脇の垂直の面にロープを垂らしてアックスを振るいましたが、1年近くのブランクはやはり大きく、身体の重さに腕がすぐに悲鳴をあげました。しかし、1本目よりは2本目、2本目よりは3本目と回数を重ねるごとに、アックスの引っ掛け方や足の置き方、そして背中の筋肉の使い方を思い出し、ほんの少しではありますが勘が戻ってきたような気がしました。

夕食は「とろあじと豚ロースのしゃぶしゃぶ」ですが、実は夕食を待つ間の談話室で思わぬ出会いがありました。保科雅則ガイドの教室を通じて知り合ったムトウ氏とその相方のハナダ氏です。雪焼けで真っ黒な顔をしていたのでムトウ氏だと気づかぬままに「こちらの席、空いていますか?」と声をかけたところ「○○さん(私の本名)」と逆にお声がけをいただいたのですが、久しぶりの邂逅を喜びつつお二人の予定を聞けば、この二日間はアイスキャンディーでの練習でまったり過ごすとのこと。なんで?と怪訝な顔をすると、お二人で昨年末にシビアな山行を重ねて完全燃焼したからだと説明をいただきましたが、その山行とは、ひとつは12月上旬の小同心ルンゼ(ミックスクライミングでの2メートルのルーフ越え!)、もうひとつは年末の明神岳2236峰岩稜会ルート(プアプロテクションでの登攀と一か八かのヘッデン懸垂下降!)。前者はぶなの会のブログで拝見していてすげーなーと勝手に仰天していたのですが、お話を伺うと後者の厳しさもまさに異次元でした。そしてもうひとつ、ムトウ氏は私の昨年10月の事故のことをご存知だったのですが、なんと「あの岩は、我々が去年6月に登ったときにハナダも落としそうになって、必死に戻したんですよね」と衝撃の事実を明かして下さいました。うむー、そのときから既に誰が触っても落ちる状態にあったわけか。かっきーは運がなかったなあ……。

2017/01/08

■07:05 赤岳鉱泉 ■07:40 裏同心ルンゼF1 ■09:40 裏同心ルンゼ涸滝下

5時半起床、6時から朝食。しっかり朝ごはんをいただいて、身繕いをしてから表に出ました。稜線はくっきり見えており、少なくとも午前中は天気がもちそうです。

裏同心ルンゼには明瞭な踏み跡が続いており、歩きやすい状態でした。しかし、この積雪だと滝は埋もれていないかな。

……という懸念は不要だったようで、F1はブルーアイスがおおむね露出していました。先行は誰もおらず、我々がこの日の一番手であるようです。フリーで行ってもいいかな?と思いましたが、試みにアックスを打ち込んでみると予想以上に堅く、これは傾斜は緩くてもロープを出した方がいいだろうとここでロープ(60mシングル)を結ぶことにしました。まずは今期二度目のアイスであるヨシノさんに先行していただいて、ガチガチの氷にアックスを強く打ち込みながらのクライミング。ヨシノさん、ナイスリードです。続いてしばし先のF2は、本来ならそこそこ傾斜のあるはずの一段目が二段目共々雪に埋もれてしまっており、最後の三段目が2メートルほど急傾斜で立っている状態でした。ここは私が先行し、三段目の基部にスクリューを1本だけ打って抜けました。

F2を越えてすぐ先の右手にあるF3も高さ・角度共に難しさを失っていましたが、せっかくロープを結んでいるのだからとヨシノさんがリード。そのまま目一杯ロープを伸ばしたところが両側から岩が迫って喉のようになっていて、本来はここから先が氷のスロープであるF4であるはずですが、これまたものの見事にただの雪の斜面になっていました。最後のF5はかつて負傷退却を余儀なくされた因縁のある滝ですが、左端の柔らかく易しい薄青色の斜面を私がなんということもなくリードして30メートルほどロープを伸ばし、右上する氷のガリーを見送った先の右岸にあるリングボルトの支点でヨシノさんを確保しました。

そのまま奥の涸滝の下まで進んだところでロープを畳み、これで裏同心ルンゼの氷瀑はあっけなく終了です。ポイントごとに氷の露出がありはしたものの、やはり相当程度に雪に埋もれてしまっていて、正直に言って不完全燃焼の感なきにしもあらずですが、今季初アイスだと思えばこの程度がちょうどよかったのかも知れません。

■10:05-20 大同心取付 ■11:05-50 赤岳鉱泉 ■13:00-15 美濃戸 ■14:00 美濃戸

我々がF5を越えた頃から前方の大同心からコールが聞こえていたのですが、それは北西稜に取り付こうとしていたパーティーのものでした。昨年3月にセキネくんと登ったときにもこの1ピッチ目には侮れないものを感じたのですが、このパーティーはどうやら1ピッチ目敗退となってしまったようです。

そのまま大同心の基部沿いに草付斜面をどんどん登って、小尾根をひとつまたぎ越した先で大同心稜に達しました。

横岳、赤岳、阿弥陀岳、そして中央アルプス、御嶽山、北アルプス、硫黄岳、大同心。

あとは通い慣れた大同心稜を下るだけ。雪雲がうっすらと広がりつつありますが、幸いにして下山まではもってくれそうです。

ギア類をすべてザックに詰め込み、アイスキャンディーで練習中のムトウ氏とハナダ氏に「お先に!」と挨拶を送って、あとは緩やかな下り道をひたすら歩くだけでした。

大同心の基部沿いを登る途中で、落し物を拾いました。ご覧の通り新品のクォークで、刃は研いでおらずフィンガーレストも外してあるところからすると、アイス仕様ではないように思われます。実際、拾った場所は大同心稜の大同心に向かって左手の斜面で、雲稜ルート取付から50メートルほど下がったあたりですから、大同心南稜か雲稜ルートの登攀途中で落としたものかも知れません。

ともあれ、この美しい一本は赤岳鉱泉の受付に預けました。お心当たりの方は赤岳鉱泉にお問い合わせ下さい。

我々が美濃戸口に下り着いた日曜日の14時頃から、天気予報通りの雪が降り始めました。美濃戸口にいる間は穏やかな降り具合だったのですが、帰路の中央道は甲府盆地から大月を経て談合坂までたいへんな吹降りで、徐行運転を余儀なくされるほど。

この雪で、裏同心ルンゼは完全に雪の下に埋もれてしまったものと思われます。