摩利支天沢大滝

山頂  
分類 八ヶ岳 / 保科雅則ガイド
日程 2015/04/04-05
同行  
概要 アルパインガイド保科雅則氏の保科クライミングスクールの講習で、八ヶ岳でアイスクライミング。初日に摩利支天沢大滝を登り、二日目は雨天だったため赤岳山荘の屋内壁でドライツーリング。
摩利支天沢大滝全景。左側はすっかり溶け落ちて、激しく水が流れていました。(2015/04/04撮影)
見上げれば、垂直のつるつる氷。しかし、アックスは気持ち良く刺さりました。(2015/04/04撮影)
見下ろせば、この高度感(トップロープですが)。(2015/04/04撮影)

今シーズンの内に保科雅則ガイドのガイドで大滝を一本登っておきたいと思い、もろもろの都合を重ね合わせて選んだのは、八ヶ岳の摩利支天沢大滝。その名の通り、阿弥陀岳の摩利支天峰の中腹にある滝です。

2015/04/04

■10:10 赤岳山荘 ■12:50-16:20 摩利支天沢大滝 ■18:00 赤岳山荘

小淵沢駅に9時集合。保科ガイドとは1年以上ぶりです。今回はクライアントの数が7名と多いため、ガイド補助のカワイ氏もついて下さって引率者2名体制でした。

今宵の宿となる赤岳山荘を起点として、南沢沿いの道を進みます。道は部分的に凍りついているために歩き出して少しのところからアイゼンを装着しての歩行となりましたが、徐々に気温が高くなり汗ばむほど。途中には流水が露出しているところもあって、プチ渡渉といった趣きでした。

南沢大滝・小滝への分岐のところで小休止となったときにメンバーの一人が「あとどれくらいですか?」と聞きましたが、保科ガイドの答は「まだまだ先」。確かに、そこからそこそこの距離を登ったところで、それと見知っていなければわからないであろう浅い沢筋に着きました。これが摩利支天沢で、ここから踏み抜きやすい雪に覆われた沢筋を上流に詰めていきましたが、途中の喉状の急斜面では雪の下から流水の音も聞こえています。しかし、ここで帰りに事件が起こることになるとは、このときは誰も予想してはいませんでした。

先ほどまでとは打って変わって冷え冷えとしたガスの中に、摩利支天沢大滝が姿を現しました。高さは15mくらい?思ったほど高さがある印象ではありませんが、それでも立派です。先に来ていた男女3人パーティーが休憩中で、彼らは右端にトップロープを垂らしていましたが、保科ガイドもその左に2本のトップロープをセットしました。

滝の左端はご覧のように流水が流れ落ちており、風向きによっては滝を登るクライマーに飛沫がかかってきます。先行3人パーティーが下山していった後は、滝の右裏から正面へ回り込むラインも引けて、都合3本のトップロープとなりました。

見た目には傾斜がないように思えるのですが、実際はほぼ垂直。いやー、こんなのリードするのは怖いだろうなと思いながらアックスを振るいましたが、アックスやアイゼンの前爪は気持ち良く刺さり、手早く登れば快適です。しかし、氷柱の左半分は中間で横に亀裂が入っており、また落ち口の上に出てみると上流は土が露出している状態で、もはやアイスクライミングのシーズンははっきりと終わりであることが窺えました。

私は左、右奥、右、もう一度右奥と計4本登りましたが、これだけ登れば満足。感触としては、この日のように氷がアックスを受け入れてくれる氷質であればリードも(テンションを入れながら)可能かも……という気がしますが、ノーテンでのリードは10年早い感じです。

さて、夕方が近づいてきたところで沢筋を下り始めたのですが、行きのときに草付を登った喉状の急斜面で帰りは雪の上を通過して下ろうとしたところ、先頭で雪質を見ながら道をつけてくれていたガイド補助のカワイ氏が「端に寄った方が良さそうです」と言った途端に雪を踏み抜いて大穴に落ち込んでしまいました。すぐ近くにいた保科ガイドは瞬時に自分のザックを斜面の下に放り捨てて穴に近づき、今まで聞いたことがないほど緊迫した口調で「カワイくん!カワイくん!」と声をかけ、どうやら姿は見えないものの中にいるらしいことを確認すると、クライアントがザックから取り出したロープにカラビナを付けて穴の中に落としました。幸いなことにカワイ氏はハーネスをしたままだったのでロープを身体に固定することができ、このロープをクライアント全員で引っ張ってカワイ氏を引きずり出すことに成功しました。カワイ氏は穴の中で流水をかぶり続けていたために全身びしょ濡れ、そして脱出する際に自分のザックを穴の底に残置することになってしまいましたが、それでもとにかく命が助かって何よりでした。

残りの者はロープをフィックスしてゴボウでこの斜面を下ることになりましたが、大穴の周辺の雪も不安定でかなり肝を冷やしました。くわばらくわばら……。

とにかく早く宿に戻ろうと、一目散に赤岳山荘を目指して下山です。おかげで十分に明るい時刻に山荘に着くことができました。

風呂はありませんが、美味しい夕食ですっかり温まり、食後は休憩スペースのストーブの前でお酒を飲みながらまったり。しかし保科ガイドはこの夜、ザックと共に車のキーなどを失ったカワイ氏を自分の車に乗せ、同氏の自宅がある小谷村への往復5時間余りのドライブに赴くことになったのでした。

2015/04/05

■-12:00 赤岳山荘

明けて翌朝は雨。予定では、この日は南沢小滝に行くことになっていたのですが、この天気ではガイドならずとも外に出る気になれません。そこで保科ガイドが繰り出した奥の手が、赤岳山荘の本棟の向かいにある別棟の3階のシークレット・ドライ壁でのトレーニングでした。

小さいながらも前傾壁やルーフを使えるドライ壁でウォームアップのトラバース課題をこなしてから、フィギュア・フォーやフィギュア・エイトを試しましたが、これは下半身が重い自分にはかなり厳しい!だいたい、こういうのはどこで使うわけ?

さらにどっかぶりのルーフ課題などを与えられ、最後はアックスにぶら下がって前腕の持久力を試されたり懸垂の回数を競い合ったり(ガイド二人は当然の如く15回以上)と絞られましたが、これはこれで楽しいものでした。

今シーズンのアイスクライミングは、これで終了です。昨年12月に思いがけず多量の降雪があったために長いアルパインアイスに取り組めなかったのは残念でしたが、リードの技術を多少は高めることができたように思います。来シーズンこそは、八ヶ岳東面や甲斐駒ヶ岳のロングルートに挑戦したいものと夢見つつ、アックスとアイゼンをしまうことにしました。