阿弥陀岳北稜〜赤岳西壁主稜

山頂 阿弥陀岳2,805m / 赤岳2,899m
分類 八ヶ岳 / アルパイン
日程 2013/12/17
同行 セキネくん
概要 美濃戸口を早朝に出発し、行者小屋経由でまず阿弥陀岳北稜から阿弥陀岳。そこから中岳を越えて文三郎尾根を途中まで下り、今度は赤岳西壁主稜へ継続。赤岳山頂でロープを畳み、再び文三郎尾根を下ってその日のうちに美濃戸口に帰着。

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阿弥陀岳北稜第二岩稜。上の画像をクリックすると、阿弥陀岳北稜の登攀の概要が見られます。(2013/12/17撮影)

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赤岳西壁主稜中間部。上の画像をクリックすると、赤岳西壁主稜の登攀の概要が見られます。(2013/12/17撮影)

八ヶ岳の主立ったアルパインルートは登り尽くしてしまったので、この山域での発展系のテーマはアイスクライミングか継続登攀。後者については、今年1月にケイ氏と阿弥陀岳南稜〜赤岳西壁南峰リッジ〜阿弥陀岳北稜、3月にセキネくんと阿弥陀岳北稜から赤岳西壁主稜をそれぞれ目指しましたが、前者は天候悪化のため中途で退却、後者もアクシデントと体調不良による時間切れで阿弥陀岳北稜のみに終わっていました。今回の山行は、後者のリベンジとなります。

2013/12/17

■04:50 美濃戸口 ■05:30 美濃戸 ■07:30-08:10 行者小屋

美濃戸口から柳川に架かる橋のあたりまで車を進め、ここからヘッドランプ頼りに車道を美濃戸へ徒歩。通い慣れた道なので歩く分には何の不安もありませんが、私は寝不足が祟ってプチ・パンチドランカー状態でのアプローチとなりました。

今年は冷え込みが早く、アイスクライマー達の間では八ヶ岳の氷瀑の発達が良いという情報が飛び交っていましたが、南沢のところどころもきれいに凍っていて、アイゼンが欲しくなる場面もありました。

それでも順調に歩みを進めて、美濃戸から2時間で行者小屋に到着しました。左手には大同心・小同心などの横岳西面の岩峰たち、右手には赤岳から阿弥陀岳に連なる雄大なスカイライン、そして後ろには遠く北アルプスも見通せます。

ハーネス、アイゼン、ギアを装着し、ここまでの徒歩で使ったストックと不要な上衣をデポして、まず阿弥陀岳北稜を目指しました。

阿弥陀岳北稜を登るのは、これが四度目。雪の状態は毎回違いますが、今回は下部では十分な雪があり、上部の第一岩稜は逆に草付が一部露出している状態でした。ウォーミングアップも兼ねて第一岩稜からロープを結ぶことにしましたが、登ってみればロープの必要性は感じられませんでした。

登るにつれて赤岳が大きくなってきて、さらにその向こうには富士山も姿を現しました。GREAT!!

事前の申し合わせ通り、第二岩稜の1ピッチ目はセキネくんがリード。出だしの立った岩を難なく登っていってロープがするすると伸びたのですが、少しロープが出たところでしばらく動きが止まり、「?」と思っていたら上から「ビレイ解除!」の声が降ってきました。えっ、ちょっと早いんじゃないの?不思議に思いながら後続してみたところ、セキネくんは左の凹角から上がって来る位置にあるハンガーボルト2本でビレイポイントを作っていました。しかし、ここはもっと奥の三角の岩までロープを伸ばして欲しかったところ。セキネくん、私のYouTube動画での予習を怠りましたね?

気を取り直して引き続きセキネくんが正しい位置までロープを伸ばし、3ピッチ目(本来の2ピッチ目)は私がリード。出だしの岩壁は岩が凍り付くこともなく、快適に登って未発達のスノーリッジを渡り、ハイマツに残置されたスリングで支点を作ってセキネくんを迎えました。阿弥陀岳山頂は、そこからわずかの登りです。

■11:05-15 阿弥陀岳 ■12:20 文三郎尾根分岐 ■12:30-45 文三郎尾根途中 ■12:55 赤岳西壁主稜取付

阿弥陀岳の山頂からは、富士山や南北アルプスの眺めが絶景ですが、赤岳西壁主稜へつなげるためには長居はできません。

手早く写真を撮り、ロープを畳むと阿弥陀岳から赤岳へ向かう急下降に向かいました。

中岳を越え、赤岳への登りの途中で文三郎尾根への分岐に到着。この時点で正午前だし、ルート上には先行パーティーもいない様子なので、赤岳西壁主稜への継続は可能と判断しました。

登山道の上で行動食をとりつつしばし休憩しながら向こうに見えているルートの概念を再確認してから、おもむろに主稜取付へのトラバースにかかりました。このあたりは雪の量がまだ少なく、斜面のところどころに岩が露出していてルートファインディングに気を遣いましたが、セキネくんが巧みにラインを見つけてくれて無事に取付に達しました。

しっかりしたハンガーボルトに支点を作って、テクニカルなチョックストーン越えから始まる1ピッチ目はセキネくんのリード。自信ないな……と言いながら試行錯誤を始めたセキネくんでしたが、足の長さを活かしてステミングの態勢を作り、チョックストーンを抱え込むようにして身体を引き上げていきました。後続の私も離陸には少々頭を使いましたが、後は自然にチムニーを登り詰め、右後ろへ折り返してセキネくんの待つビレイポイントへ達しました。ここはかなりランナウトするので、難しくないとは言ってもリードは慎重さが必要です。

2ピッチ目は私(以下、奇数ピッチはセキネくん、偶数ピッチは私)のリードで、ビレイポイントから少し左後ろに戻るようにしてリッジに乗り、頭上を目指します。突き出したステップに乗ってから最初の立った壁を越えて少し行った先に岩にロープを巻き付けた箇所があり、私はロープの屈曲を嫌ってここで短くピッチを切ったのですが、これは失敗。もう少し先の岩にハンガーボルトが設置してあり、そこまでロープを伸ばした方が良かったようで、このためにこの後のピッチがいずれも中途半端な位置でビレイを行なうことになってしまいました。

3ピッチ目は小さいながらも明瞭なリッジを進み、4ピッチ目で門のような岩の間を抜けてさらにリッジを進むと、徐々に左から隣の岩稜が近づいてきます。ルートは前方でこの左隣の岩稜に合流することになるのですが、そのところどころに残置スリングが垂れているために、初めてここを登る場合にはルートファインディングに悩むことになるでしょう。実際には、前方に見えているコル状の場所を目指して雪の斜面をどこまでも登ってゆけば、ちゃんとハンガーボルトが迎えてくれることになっています。

5ピッチ目をリードしたセキネくんがこの支点に達する手前でロープが一杯になってしまい、10メートルほどコンティニュアスでの行動となりましたが、特に問題なし。支点に着いたところで背後に目をやると、素晴らしい山岳展望が広がっていました。ただし、西の方から徐々に雲が近づいており、ここまで無風快晴と絶好だった気象条件が徐々に悪化しつつあるようです。

ここからの6ピッチ目が、赤岳西壁主稜の核心部。偶数ピッチを私がとったのも、以前赤岳西壁主稜を登ったときにここをリードできなかったことのリベンジのためです。その出だしは、ビレイポイントの奥にある小垂壁の乗越しから。少々トリッキーな感じではありますが、足の運びを十分に吟味して取り付けば、体感はIII+程度で問題にはなりません。ここを越えてから左の岩稜の側面を進むと、自然に浅い凹角に導かれることになりますが、ここが真の核心部。切り立った壁登りになっていて、シーズン前にアイゼントレーニングを十分に行っておかないと緊張することになるでしょう。ただしホールドは豊富にあり、凹角の中程に残置ピンもあってランナーをとれるので危険はさほどありません。

「ここ、シビれますね」と言いながら登ってきたセキネくんが7ピッチ目を登り、さらに凹角を抜けて右へ折れ曲がる8ピッチ目を私がこなせば、空が急速に広くなって登山道がすぐ近くに見えてきます。最後はビレイをとることもなく、ロープをずるずると引きずったセキネくんが20メートル程歩いたところで、登山道に合流しました。

■15:45-55 赤岳 ■16:15 文三郎尾根分岐 ■16:50-17:10 行者小屋 ■18:40-50 美濃戸 ■19:20 美濃戸口

既に日が翳り、雲が広がり始めた赤岳山頂に到着。どうやら明るい内に行者小屋まで下ることができそうです。ロープを畳み、南峰に移って周囲の山々の素晴らしい眺めを目に焼き付けてから、さっさと下山を開始しました。

行者小屋に着いた時点ではまだ明るさが残っていましたが、登攀具をはずしデポ品を回収して行者小屋を後にしたときには、すっかり暗くなっていました。ここからは再びヘッドランプの灯りを頼りとした歩行となりましたが、雪の中の明瞭なトレースのおかげでスピーディーに下ることができ、一人でおとなしく待っていたセキネ号のもとに着いたのは19時を大きく回らない時刻でした。

今回は、冬の八ヶ岳とは思えないほど穏やかな天候、先行パーティーがいなかったこと、そして何より、無限の体力を誇るセキネくんの力のおかげで目的を達成することができました。セキネくん、お疲れさまでした。またいずれ、別のルートで力戦系のチャレンジをしましょう。