塾長の山行記録

塾長の山行記録

私=juqchoの登山の記録集。基本は癒し系バリエーション、四季を通じて。

蝶ヶ岳

日程:2013/10/14

概要:横尾から空身で蝶ヶ岳往復後、上高地へ下山。

山頂:蝶ヶ岳 2677m

同行:チオちゃん / スミヨさん

山行寸描

▲稜線に出て、まずは蝶槍へ。上の画像をクリックすると、蝶槍の上からのパノラマが見られます。(2013/10/14撮影)
▲蝶ヶ岳山頂付近から見た横尾本谷。屏風岩も大キレットも南岳のカールも、みな立派。(2013/10/14撮影)

◎「横尾本谷右俣〜天狗池」からの続き。

2013/10/14

△05:00 横尾 → △07:50 稜線分岐点 → △08:05-25 蝶槍 → △08:35 稜線分岐点 → △09:00-05 蝶ヶ岳 → △09:40 稜線分岐点 → △11:20-12:30 横尾 → △15:00 上高地

一夜明けて今朝も満天の星空。この日は空身で蝶ヶ岳へ登ることにしました。槍ヶ岳と穂高岳の展望台として有名な蝶ヶ岳へは1999年の冬に登ろうとしたことがありますが、そのときは雪の深さに負けて敗退したので、自分にとっても未登です。

横尾山荘のすぐ左手から蝶ヶ岳への登山道に入り、歩きやすい道をぐんぐん登ると30分ほどで「槍見台」。ここから遠くに槍ヶ岳の穂先が見えていますが、まだ日は当たっていない様子です。

樹林や笹の中の道をさらに30分登ると再び展望の開けた場所に出て、そこの立ち木に貼られたテープには手書きで「なんちゃって槍見台」と書かれていましたが、眺めはこちらの方が本物の槍見台よりグッドです。

既に朝日を浴びてオレンジ色になっている槍ヶ岳を眺め、さらに穂高岳山荘の姿も見つけてそこでこの日働いているはずの3人共通のボル友ケンくんに向かって「ケンく〜ん」と声援を送りました。当初の計画通りなら、スミヨさんはあの小屋に泊まってケンくんと再会できていたはずなのですが……。

登りは続きます。途中、ずいぶん登ったところで「標高約2000M」と書かれた板が地面に横たわる丸太に打ち付けられているのに遭遇しましたが、振り返れば現在地は屏風ノ頭(標高約2560m)とほぼ同じ高さですから明らかにこれは間違っています。

案の定「標高約2000M」標識からほんのわずかで森林限界に達し、ハイマツの斜面のすぐ上が稜線でした。蝶ヶ岳山頂へは分岐から右ですが、まずは左手、常念岳方面にある蝶槍を目指すことにしました。

稜線上に岩が積み重なった突起である蝶槍は、最高の展望台です。正面には大キレットをはさんで穂高岳と槍ヶ岳が並び、南の方には遠く乗鞍岳、北の方には野口五郎岳、そして間近に常念岳。スミヨさんが思わず「来て良かった〜」と感嘆の声を上げたほどの眺めが得られました。

見飽きぬ展望に一区切りをつけて、向こうに見えている蝶ヶ岳の山頂を目指すことにしました。顕著な二重山稜ができているなだらかな尾根状の稜線につけられた歩きやすい道はハイマツの間を縫い、さしたる登りもないままに蝶ヶ岳ヒュッテの横を通って山頂に続いていました。

すぐに到着した平坦な山頂は、高さはこちらの方が蝶槍よりも高いのですが、常念岳の展望がなくなる分展望は劣るような気がします。ところがちょっと不思議なことに、山頂標識は一番高い地点よりも少し手前に立っています。もちろん我々は山頂標識の数m向こうに足を伸ばして「えーと、この岩(高さ10cmほど)の上が最高点だな」と確認してその上に立つことを忘れませんでした。

展望が蝶槍に劣ると書きましたが、その代わりここからは角度の関係で横尾本谷右俣の全貌を見ることができました。大キレットに突き上げる左俣の様子、カール底のモレーンや残雪、最後に横尾尾根へ登る斜面の傾斜具合などが眺められて、昨日のことなのに懐かしく思い出されます。一方、反対側に目をやれば広く安曇野一帯が見下ろせてこれまたとてもいい気分。この眺めに向かって、それぞれに感想を述べ合いました。

私「シモベ共よ、我が足下にひれ伏すがよい」
チ「人がゴミのようだ〜」©ムスカ
ス「……」

いつまでもこの稜線上にとどまっていたいところですが、この日のうちに帰京しなければならないために、後ろ髪を引かれる思いで山頂を後にしました。

分岐に戻って下降開始。なぜか標高2500m地点にある「標高約2000M」の標識や「なんちゃって槍見台」のテープを眺めながら高度を下げました。しかし人間というのは現金なもの。下り始めると急速にお腹が空いてきて、皆一様に「横尾山荘の豚丼」を呪文のように唱えながら先を急ぎました。

横尾まで下りてしまえばもう急坂はありません。念願の豚スタミナ丼を揃って食し、テントを畳んで荷造りを済ませたらとっとと上高地を目指しました。ただし、途中の徳沢でソフトクリームに手を出したことは言うまでもありません。

当初の計画通りとはいきませんでしたが、チオちゃん・スミヨさん、3日間お疲れさまでした。少なくとも後ろの2日は天気と展望に恵まれて、楽しい山行になりました。スミヨさんは大キレットが、チオちゃんは前穂高岳北尾根が宿題に残りましたが、それはまたいずれ。そして私にとっては、蝶ヶ岳の上からの大展望を雪のある季節に見たいという気持ちが再び湧いてきました。今年の年末?それとも数年先?いつ実現するかはわかりませんが、純白の槍穂がオレンジ色に染まる光景は、きっと素晴らしいものに違いありません。