塾長の山行記録

塾長の山行記録

私=juqchoの登山の記録集。基本は癒し系バリエーション、四季を通じて。

美濃戸口の氷瀑

日程:2012/03/17-18

概要:アルパインガイド保科雅則氏の保科クライミングスクールの講習で、初日は長野県川上村の岩根山荘に設置された人工氷瀑=アイスツリー、2日目は美濃戸口の河原奥の氷瀑と氷柱でのアイスクライミング。スクリューをセットしながらの初めてのリード体験。

山頂:---

同行:保科雅則ガイド

2012/03/17

山行寸描

▲アイスツリー。裏に回るとかなり痛々しい姿になっていた。(2012/03/17撮影)
▲スクリュー練習中の私(左端)。(2012/03/17撮影 © 2012 Iwane-sansou)

△10:30- 岩根山荘

先月に続いて保科ガイドのアイスクライミング講習。今回はゲストが5人ですが、うち3人がアイスクライミング初体験で、私はもっぱら神奈川県から来たアルパインクライマーF氏と組んで、リードに向けた練習に取り組むことになりました。

まず普通にトップロープで登って身体を慣らしてから、トップロープで確保された状態でスクリューをねじ込む練習。ついで、ねじ込んだスクリューにリードロープをクリップする練習を繰り返しました。この日はあいにくの天気で、昼休み後は雨のためにしばらく様子見になったほど。ただでさえ痛々しい姿のアイスツリーがさらに溶けてやせ細っていくのを見るのはつらいものがありましたが、幸い雨は時折ぱらぱらと降る程度に落ち着いてくれて、午後の練習も、タープを張って雨宿りしながらもそれなりにできました。また、合間にはアックスへのヤスリのかけ方の実演も見せていただいたりして、これまた有意義でした。

最後はスクリューを8本持って氷壁に取り付き、まず最初の登りで4本スクリューを入れた後ロワーダウン、そして下に着いたらそのまますぐ2セット目を登ってさらに4本、という練習をしました。前回のアイスツリーでは2本目を入れるのもつらかったのですが、今回は足でしっかり立ち、さらにレストも適度に入れることを覚えたせいか、パンプに耐えつつも無事に8本入れることに成功しました。

もっとも、単純に腕が上がったというのは早計かもしれません。今回持参したアイゼンは新調したばかりのBDスティンガーで、モノポイントアイゼンの威力というのをまざまざと実感しました。氷の状態にもよるのかもしれませんが、とにかく爪先がさくさく氷に刺さり、ストレスなく足を上げていくことができます。やはり保科ガイドがおっしゃる通り「アイスは道具7割」であるようです。

この日は、岩根山荘泊まり。暖かいお風呂に入って、おいしい夕食をとって、ぬくぬくと眠って、翌日のリード本番に備えました。

2012/03/18

山行寸描

▲河原奥の氷瀑。左右2本のラインをリードした。(2012/03/18撮影)
▲氷瀑の左隣にある氷柱をトップロープで登る私。美しい垂直のブルーアイスを快適に登れる。(2012/03/18撮影)

△09:55 美濃戸口 → △10:20-15:30 河原奥の氷瀑・氷柱 → △15:45 美濃戸口

岩根山荘を朝8時に出て、車で美濃戸口へ。昨日一緒に講習を受けた5人のうち3人が抜けて替わりに新しい3人が加わり、美濃戸口から美濃戸への道を下って柳川を渡ったところのすぐ先を徒渉し、5分ほど上流の左岸の氷瀑に向かいました。

出だしが緩やかなナメでその上がやや傾斜の立った小規模な氷瀑をまずは普通にトップロープで左右各1本登ってから、保科ガイドに「今度はトップロープなしでリードしてみましょう」と言われていよいよリード体験です。

チェストハーネスを借りてスクリューを5本、クイックドローも同数持って、まずは左ルート(III+)から。出だしに1本ランナーをとってからナメを上がり、傾斜が変わるところで1本。さらにもう1段上がって氷が立ってくるところで1本。氷の状態は良好でアックスは吸い付くように刺さりますし、スクリューも抵抗なく受け入れてくれます。そして足に履いているのは新品のBDスティンガー。これでつまづくようなら一生リードはできないでしょう。落ち着いてアックスを振るい、ランナーをとって、足を上げて……を繰り返して、無事に終了点に到達。スクリューを回収しながらロワーダウンしたところで、保科ガイドからは「安定してます。もう(リードは)大丈夫です」といううれしい言葉をいただきました。

休憩時間の間に固定分散の作り方(エイトノットが基本だが長いスリングがないときに手早くインクノットで作成)を教わってから、午後はまず右ルート(IV級)のリード。こちらの方が傾斜が立っていて(70〜80度)左手にぶら下がりながらスクリューをねじ込む感覚になりますが、前日の岩根山荘での練習を思い出しながら左アックスを頭上に打ち込み、左右の足は極力平行に置いてしっかり立ってスクリューを入れていって無事にクリアできました。

リード練習が終わって緊張感から解放された後は、氷瀑の左隣にある氷柱をトップロープで登りました。こちらはきれいなブルーアイスの垂壁ですが、要所にアックスをしっかりかけられる凹凸があって意外に易しく、フリークライミングの感覚で言うと5.9くらいの感じ。大胆に足を開いたり、意味不明のアウトサイドフラッギングをかましたりしながら気分良く2本登りました。

最後はV字スレッドの作り方講習です。氷に開けた穴にスリングを通して懸垂支点とする方法(アバラコフ)ですが、実際に作ってロープをかけてみると、4人が体重をかけて引っ張ってもびくともしませんでした。

こんな具合に盛りだくさんの講習でしたが、何といってもリードができたのが最大の収穫です。実は最初に保科ガイドにメールを差し上げたときにお伝えしていた私なりの目標は「この冬のうちにリードをできるようになること」だったのですが、まさか3回の講習でそこまで引っ張り上げていただけるとは思っていませんでした。これで、来シーズンからの冬の行動半径はぐっと広がることになることでしょう。保科ガイドには感謝あるのみです。またこれからも折々に、御教示をお願いします。