一ノ倉沢衝立岩中央稜

山頂  
分類 上信越 / アルパイン
日程 2010/05/29
同行 きむっち
概要 一ノ倉沢を詰めてテールリッジから衝立岩基部に達し、中央稜を登る。登攀終了後は同ルート下降。

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一ノ倉沢の雪渓からテールリッジへ。上の画像をクリックすると、一ノ倉沢衝立岩中央稜の登攀の概要が見られます。(2010/05/29撮影)

3ピッチ目、高度感のあるトラバースを行くきむっち。この頃は日も当たって、岩が乾くかと期待したのですが……。(2010/05/29撮影)

核心部のチムニーを見上げる。またA0にしてしまった……進歩なし。(2010/05/29撮影)

「谷川岳(のアルパイン)を登りたい」というきむっちの希望を聞いたのは、たぶん阿弥陀岳に登った帰路でのこと。一ノ倉沢で最初に取り付くとすれば南稜か中央稜が定番ですが、これらはもちろん私も既登。しかし私も一ノ倉沢にはまだいくつか登りたいルートがあるので、それでは中央稜と凹状岩壁、南稜とザッテル越えといった組み合わせで初夏と秋に登ろうということにしました。今回は、その第一弾。私は金曜日の仕事を早引けして17時20分に渋谷を発ち、21時過ぎにはベースプラザに入ってただちに就寝しました。きむっちは午前1時頃に車でベースプラザに着いたそうですが、爆睡中の私はさっぱり気づかず。

2010/05/29

■04:20 一ノ倉沢出合 ■04:40 テールリッジ末端

3時起床、3時半ベースプラザ出発としましたが、一ノ倉沢出合に着いてみるとまだ真っ暗。車中で少し待機して、衝立岩の姿がある程度見えるようになった頃に、おもむろに車外に出て準備を始めました。我々の音を合図にしたように、駐車場にいた他の車からもクライマー達が出てきましたが、幸いなことに我々が一番手となって、雪渓に足を踏み入れることができました。

雪の量はたぶん平年並みといったところなのでしょうが、出合からテールリッジまできれいにつながっていて、さくさくと進むことができました。テールリッジ末端にも嫌らしいシュルントはなく、そのままテールリッジをアプローチシューズで登ります。ただ、前日までの雨で岩は濡れており、途中ワンポイントIV級となる箇所は残置ピンにクイックドローをかけて慎重に越えました。

■05:20-05:40 中央稜取付 ■09:45-10:15 終了点

中央稜取付でシューズを履き替え、いよいよ出発。今日は奇数ピッチをきむっち、偶数ピッチを私がリードすることにしました。

1ピッチ目(IV)、階段状ですが、きむっちは確実にロープを伸ばして行きます。

2ピッチ目(III)、出だしを左奥に回り込むところが、ルートに慣れていないと見つけにくいかも。しかし私は、このルートを登るのは既に3回目……。

3ピッチ目(IV)、最初のトラバースが際どいところですが、ここもきむっちは難なく進んでいきます。やるなあ。その先は、浮き石が多く神経をすり減らすフェース。

4ピッチ目(IV,A0)、出口のチムニーが核心部で、過去2回A0している私は、今回は途中で左のフェースに転進するつもりだったのですが、立ったフェースに余裕なく残置ピンを追ううちに、気がつくとチムニーの中に吸い込まれていました(←ここはアリ地獄か?)。おまけに右壁はびしょ濡れでスメアが効かず、かといってバックアンドフットには狭く……と万策尽きて残置ピンの頭を踏んでしまいました。情けない……。

5ピッチ目(III)、易しい凹角を登ってリッジ上の顕著なピナクルまで。ところで、この頃南稜の方を見ると、ちょうど烏帽子沢奥壁のトラバースバンドを渡っているパーティーの中で落石が起こり、同じパーティーの後続が手を傷めた様子。彼らはしばらく鎌形ハングの下に留まって治療や善後策の協議、さらには怪我人を置いて残りのメンバーが南稜テラスの見学(?)に行ったりしていましたが、高いところから見ているこちらはどうして早く下山しないのかとやきもき。幸い南稜フランケなどに人がいないとは言うものの、落石は人が起こすものとは限らないのに。

←右下の5人が事故パーティー。左上は南稜テラス。

6ピッチ目(III+)、岩が堅くて本来は快適なフェースですが、この頃には雲が稜線から下に降りてきて気温が下がり、気分もグレー。

7ピッチ目(III)、カンテ状から凹角を登ります。ビレイ中に左手を見ると、ちょうど凹状岩壁6ピッチ目の崩壊地が見えていて、そこだけ岩の色が白っぽく、ちょうどセメントを吹き付けたみたいに見えます。明日はあそこを登るのか?いやいや、見るからに濡れていて、ところどころ水が流れてすらいる烏帽子沢奥壁を見て戦意喪失。明日登れるとしても、勝手がわかっている南稜に転進することにしようとこのとき決めました。

8ピッチ目(III)、湿ったチムニー登りから階段状を登り、最後に右手に一段降りてII級程度のルンゼ。終了点まであと2mでロープ一杯になったのでいったん灌木でピッチを切り、後続のきむっちが視界に入ったところで改めてロープを伸ばしました。

初めての一ノ倉沢での登攀を無事終えたきむっちと握手の後、シューズを履き替え、軽く食事。後続の二人パーティーが終了点に到着したところで、コップスラブの残雪を敬遠して北稜下降ではなく同ルート下降を開始しましたが、II級ルンゼを下りきったところの中間支点にさらに後続の二人組が着いていて、ここでしばし待機。二人組のトップがII級ルンゼではなく正面のフェースに取り付いている間にビレイヤー氏に話を聞くと、彼らの後ろにさらに数パーティーいるとのことだったのですが、待てど暮らせど後続は現れません。それならばと、ビレイヤー氏が登り始めて支点が空いたところで下降を再開しました。II級ルンゼのロープ回収時に結び目が岩に引っかかって落石を起こしてしまい、続く登り7-8ピッチ目の間も傾斜が緩く岩も脆い場所が続くので、50mロープ1本での下降を重ねます。全ての下降はラインを把握している私が先行し、後続のきむっちが下降してきてロープを回収している間に、私の方は次の懸垂下降のための支点が不安だと思えばスリングを付け替えるという手順。そのために6mmスリングを多めに持ってきていました。そして、登り6ピッチ目はすっきりしたフェースになるのでロープ2本をつなぎ、ピナクルの横から凹角まで一気に下っていったのですが、ちょうど登り4ピッチ目の核心ピッチを抜けたところのテラスに、登ってきているパーティーのトップが後続をビレイしている姿が目に入りました。

このため、その手前のテラスでピッチを切り、きむっちにもそこまで降りてきてもらって下のパーティーが通過するのを待つことにしたのですが……なにしろただでさえ核心部で時間がかかる上に、下のパーティーは実は3人組。ここで実に丸1時間も待つことになりました。まぁしかし、山は登り優先だし相身互い。登りパーティーがいれば下降は控えるのが基本です。下の3人が核心部を抜けきったところで「先に降りて下さい」と言ってもいただいたのですが、我々のすぐ後ろにも同ルート下降を選択した2パーティー4人が待機していて、それらが全て降りるのを待っていたら彼ら3人組は時間切れ敗退にすらなりかねません。そんなわけで3人にはさらに登ってもらって、すれ違い終えたところでいったん短く核心部の上、つまり先ほどまで3人がいたテラスへ下りました。

ここからは、ほぼ垂直の壁が下まで続いています。ロープを2本つないで一気に50m目一杯下ると、そこは登り3ピッチ目のトラバースを終えたあたり。そこからもう一度50m下れば、ぴったりトラバースバンドに達することができました。

■14:00-10 中央稜取付 ■15:00 テールリッジ末端 ■15:15 一ノ倉沢出合

後続からの落石を避けるために中央稜取付に直ちに移動してからロープを畳み、テールリッジを下ります。岩が濡れているので積極的にロープも出して、無事に雪渓の上に降り立ちました。

駐車場に戻ってギアをしまうと、何はともあれ湯テルメへ直行。風呂につかってさっぱりしてから、夕食をとりに車を走らせたのですが、時計の針が17時を回っていないせいかめぼしい食堂はみな閉まっています。仕方なくどんどん南下するうちに、いっそ沼田の「山彦」まで行くか!ということになりました。

ここは以前、2007年に尾瀬の小淵沢を遡行した際の帰路に立ち寄って以来ですが、怒濤のボリュームは健在。うまい!けど多い!……と悲鳴をあげながらなんとか完食し、近くのショッピングモールで翌日の朝食と行動食を仕入れてベースプラザに帰還しました。しかし結局、その夜に降った雨が翌朝まで残ったため、日曜日の登攀は中止。ゆっくり朝寝してから、帰路につきました。

予定の二本をこなせなかったのは残念でしたが、今年の秋に、紅葉と乾いた岩とを求めてまた谷川岳に足を運ぶことにしましょう。きむっち、その際はよろしく!