横岳西壁小同心クラック

山頂 横岳2,829m / 硫黄岳2,765m
分類 八ヶ岳 / アルパイン
日程 2004/03/14
同行 Sakurai氏
概要 赤岳鉱泉から大同心稜を登り、小同心クラックを登攀。横岳山頂から硫黄岳経由で赤岳鉱泉へ戻り、下山。

click

小同心の全容。上の画像をクリックすると、小同心クラックの登攀の概要が見られます。(2004/03/14撮影)

顕著なチムニーを抜けるところ。両足の突っ張りで垂直に登るのが楽しい。(2004/03/14撮影)

横岳直下のSakurai氏。背後には抜けてきた小同心。(2004/03/14撮影)

→「赤岳西壁主稜」からの続き。

2004/03/14

■07:00 赤岳鉱泉 ■08:20 大同心基部

赤岳鉱泉で朝食をとって、7時に出発。硫黄岳に向かう道を少し歩いてすぐに大同心沢に入り、そのまましっかりした踏み跡にしたがって大同心稜をひたすら高度を上げました。昨年の11月にも登ったこの樹林帯の中の道はかなりの急坂ですが、1時間もしないうちに頭上が開けてきて大同心の巨大な姿が前方に立ちはだかってきました。何度見ても素晴らしい存在感、いつかはここを正面から登りたいものです。

樹林帯を抜けたところで前方に二人組が先行していることを視認。実は大同心ルンゼの雪の状態が不安だったので、あの二人組が小同心クラックまで先行してくれるといいなと思っていたら、先行パーティーは期待通りに先へ進んで行ってくれました。

踏み跡は大同心の基部を右に回り込み、大同心南稜の取付付近から右下へ下っていきます。かちかちに凍り付いているのでは?という心配は杞憂だったようで、適度な締まり具合の雪の斜面をいったん大きく下ってすぐに登り返しました。雪まじりの草付のトラバースはところどころ狭い箇所もありますが、安定した場所へ抜けて振り返ると、大同心に斜めに日が当たって実に日本離れした絵になる景色です。

■09:00-10 小同心クラック取付

小同心クラック取付には先行の男女二人組がいましたが、女性の方はすぐに「花摘み」に行ってしまったため、さっさと登攀準備を終えた私が男性の方にテレパシーを送ると「どうぞお先に」と言ってくれました。

1ピッチ目、私のリード。ビレイは残置ピン2本です。ホールドが豊富な緩い斜面を15m左上し、そこからけっこう立った凹角に入り、途中岩角にスリングを巻いたりしてランナーをとりながらしばらく登ったところでビレイ用の支点が出てきました。ロープの残りを聞くとまだ20mあるといいますから、ここは昨年ビレイをとったところより一段下の支点なのでしょう。さらに前進するかどうかちょっと迷いましたが、今回はあらかじめ肩までの間に2回ピッチを切ると申し合わせてあったので、ここでSakurai氏を迎えることにしました。ところが、これが結果的には正解。というのは、ビレイ解除してロープを巻き上げ始めるとすぐに、Sakurai氏の手元でロープがスタックしてしまい、にっちもさっちも行かなくなってしまったのです。あぶねー。それにしても登り始める前にビレイ態勢に入ったSakurai氏の身体の前でロープを振り分け直しておいたというのに、いったいどうしたこと?後続の二人組の冷たい視線を感じながらしばらくもがいていたSakurai氏でしたが、結局セルフビレイに使っていない方のロープをハーネスからはずしてほどき直し、なんとかこの苦境を打開することに成功しました。この間、口には出しませんでしたがSakurai氏の30m頭上で待機している某クライマーの脳裏にありとあらゆる罵詈雑言が去来していたことは言うまでもありません。

2ピッチ目、Sakurai氏のリード。テラスから右寄りの狭い凹角を登っていき、顕著なチムニーを両足の突っ張りで直上し、ここを抜けたところの小テラスで切るピッチ。ここはけっこう楽しく登れるところですが、さすがにクライミングシューズのときに比べると慎重になります。

3ピッチ目、私のリード。目の前の狭いかぶったクラックは、前回は左側から宙に身を乗り出すようにして登りましたが、今回はアイゼン・プラブーなので少し弱気に正面からガバホールド頼りで強引に抜け……るはずが左足が岩の出っ張りの上に乗っかってしまい格好悪いことおびただしい。気を取り直して態勢を整え、あとは難しいところもなくそのまま小同心の肩に抜けました。ここで日の当たる世界に飛び出すと横岳が目の前にどーんと広がり、稜線を歩く登山者の姿も見えて実に気分がよいところです。

4ピッチ目、肩から頭へはごく短く易しいピッチですが、3ピッチ目を抜けて息があがっているSakurai氏を無慈悲に急かして先行してもらいました(鬼)。

■10:40 小同心の頭 ■11:20-30 横岳山頂

小同心の頭でいったんロープを両側から巻き、コンテで横岳を目指しました。このプロムナードは一般登山道並みで、左を見下ろすと大同心南稜に3人パーティーが取り付いているのも見えてついつい余裕の声援を送ってしまいます。

最後は横岳直下の壁に取り付くことになります。ここは残置ピンが意外に見つけにくいですが、ここでも昨年の経験が生きてすぐにビレイ態勢を整えることができ、山頂へのウイニングクライムはSakurai氏に登ってもらうことにしました。淀みなく上へ抜けていくSakurai氏を見送り、ややあってのコールに応え後続。ロープをぐいぐい引いてくれるSakurai氏のビレイに導かれて、私もすぐに横岳の頂上に立つことができました。あいにくギャラリーはいなかったのですが、今日も気分のよいクライミングを楽しむことができて大満足です。山頂で今度こそしっかりロープを畳み、アタックザックに押し込んでいる頃に、ようやく後続二人組の男性の方が小同心の頭に上がってきたのが見えました。Sakurai氏が肩に抜けたときには彼は我々のすぐ後ろにつけていたのですから、女性の方が肩へ抜けるピッチかそのひとつ下のピッチで苦戦したのでしょう。

■12:30-45 硫黄岳 ■13:25-14:00 赤岳鉱泉 ■15:00-25 美濃戸 ■16:10 美濃戸口

この日はルート中で風に吹かれることはなかったのですが、横岳から硫黄岳にかけての稜線は強風でした。それでも耐風姿勢を要する手前ぐらいで、時折風によろめかされながらも硫黄岳山頂に到着。Sakurai氏はシャリバテでスピードが全然あがらなかったのですが、山頂で行動食を口に入れてようやく人心地がついたようです。あとは一般道をひたすら下って赤岳鉱泉に戻り、装備をしまいデポ品も回収し、おでんを食べてから下山しました。

この2日間は天候に恵まれ、またSakurai氏の確かな技量にも支えられて楽しいクライミングを2本連続することができました。赤岳西壁主稜の上部岩壁で核心部のリードを逃したのはちょっと心残りですが、そう言えば最初のチムニーをショートカットして仲間うちから「あの主稜登攀はノーカウント」と言われている人もいるので(あ、嘘です)、いずれ再挑戦する機会もあるでしょう。また、小同心クラックは今回季節を変えて2度目でしたが、ここはそのロケーションの良さ(小同心を直登するライン / 横岳山頂へどんぴしゃで登り着くフィナーレ)が魅力で、飽きることがありません。

一方、Sakurai氏はロープワークと体力面で課題を残しましたし、私自身にしてももっとスピーディーに行動できなければダメ。ゲレンデでのトレーニングをここのところおろそかにしていた感がありますが、やはり「練習」をちゃんとした上での本番なのだなと実感させられて、これはこれで収穫でした。Sakuraiさん、そんなわけで今年は秋のB岩に向けたゲレンデトレーニングに地道に時間をかけていきましょう!