塾長の山行記録

塾長の山行記録

私=juqchoの登山の記録集。基本は癒し系バリエーション、四季を通じて。

葛葉川本谷

日程:2002/08/10

概要:会社の同僚たちと共に丹沢の葛葉川本谷を遡行。三ノ塔から二ノ塔を経て二ノ塔尾根を下降。

山頂:---

同行:てっしー / I氏 / オグ / M氏夫妻

山行寸描

▲横向ノ滝。ホールドは豊富で水をかぶりながら楽しく登れる。(2002/08/10撮影)
▲板立ノ滝。左から登ったがけっこう悪く、後続にはロープを出した。(2002/08/10撮影)
▲富士形ノ滝。右から行けば簡単だが水流沿いにこだわって登る方が楽しめる。(2002/08/10撮影)

2002/08/10

△10:45 葛葉の泉 → △12:45 林道横断点 → △13:20-45 富士形ノ滝 → △15:10-40 三ノ塔 → △17:00 葛葉の泉

この日は職場のクライミング仲間を引き連れて初の沢登り。経験豊富なてっしーとその学生時代の友人I氏、沢は初めてのオグ、丹沢のベテランM氏とその奥さん、それに私の6人で葛葉の泉に集合したのはけっこう遅い10時半頃になりましたが、それもそのはず今日は帰省ラッシュの初日で、高速道路はどこも大渋滞なのでした。各人の出立ちは、私はいつもの沢装備、てっしーとI氏は学生時代に使い慣れた北海道の秀岳荘特製フェルト足袋、オグは地下足袋に草鞋、M氏は沢登りというより沢ハイクのつもりでトレッキングシューズで、奥さんはスニーカーです。したがって、以後M氏夫妻は基本的に沢の河原や巻き道を進み、その他は水にじゃぶじゃぶ入ってアホになりきるというパターンで遡行が続きました。

きれいに整備された入渓点でまずオグの草鞋を濡らし、足にセット。子供たちが水浴びしているすぐ横をヘルメットをかぶったいかめしいいでたちで申し訳なさそうに通り過ぎてから、すぐに樹木が両岸に迫る小滝を越えるようになり、やがてゴルジュとなって気分が出てきます。しばらく思い思いに遡行していると、狭くなった岩の間を上から水がどうどうと落ちてくる横向ノ滝に出会いました。ここは一見高度感がありますが、ホールドがしっかりしているので手掛かり足場を探しながら正面をステミングの要領で登ると簡単です。

この辺りから少し滝が大きくなってきて、続く7mの滝では単独の中年男性が何度か取りついては諦めてを繰り返していましたが、左側からでも行けますし右側の豊富な水量の斜面に真っすぐ突っ込んで登っても快適で、特に問題になるところはありませんでした。続く2条5mの滝は右側の狭いルンゼ状のところに入り、とにかく横に逃げずに直登します。沢は初めてのオグもそろそろコツがつかめてきたようで、後ろで見ていても堂々たる登りっぷりです。

やがて、本谷で一番悪いとされる板立ノ滝が前方に見えてきました。多くの記録では水流の右側から登っているようでしたが、一応ホールドがつながると判断して左側からまず私が取り付きました。しかし濡れて滑りやすい外傾フットホールドに強度不明瞭なホールドで確かに悪く、しかもけっこう壁が立っていてムーブが制約されます。落ち口の左側にいったん格好悪く膝から乗り上がってからかぶった岩の下を回り込むようにして上に抜けましたが、これはてっしー以外ではちょっと難しいムーブ。そのてっしーにはロープを投げて上がってきてもらい、残りのメンバーには巻いてもらうよう指示をしました。するとオグとM夫妻は定石通り左岸側から難なく巻いてきましたが、I氏は右岸の土の斜面を上がってけっこう危なっかしいトラバースになってしまい、冷や汗をかきました。

板立ノ滝のすぐ先の曲り滝を越えると頭上に林道が横切っており、そこから先も小さな滝をいくつも越えて行きます。そろそろ疲れてきた頃におむすびのような姿をした富士形ノ滝が見えてきたので、その手前で昼食休憩としました。

富士形ノ滝は両脇から行けばなんということもなく越えられますが、この頃にはメンバー間に「とにかく水流沿いに登る」という暗黙の了解ができていたので、まず私が先鋒をつとめることにしました。2段の滝の下段は左側から回りこんで上がり、上段の数mを見上げるとけっこう立った壁の真ん中に水流溝ができていて、出だしの3mを処理できれば後はホールドがありそう。うまい具合に足下の右に岩があり、これと水流左側の壁をつかって両足突っ張りで高さを稼ぎ、上に見えていたホールドを左手でむんずとつかんだら、後は水流の中の細かい出っ張りに足を突っ込んで無事に上に上がることができました。沢靴ではないM夫妻には横道を登っていただいて、オグ・I氏には正面から登ってもらいましたが、いずれも巧みに下部を処理して上がってきます。最後にてっしーの番になりましたが、今日のメンバーの中で一番フリーの技術が高いてっしーが妙に苦戦しており、とうとう途中で諦めてしまいました。おいおい、どうしたんだよと声を掛けると、てっしーの友人のI氏が「私のことを気遣ってわざと登れないフリをしたんですよ。こいつはそういうヤツなんです」と助け舟を出しました。実はI氏は仕事上の事故で左手先に義手をはめており、ところどころで苦労しながらそれでもここまで他と遜色なく登ってきていたのですが、板立ノ滝はさすがに巻いてもらっていたのでした。しかしてっしーがそんな殊勝な理由で登らなかったハズがなく、I氏の発言はセンスの良いからかいです。もちろん、てっしーも地団太を踏んで悔しがっていました。

この後は水量もだいぶ減りましたが、それでも遊び感覚で水流にこだわりながら遡行を続けました。ナメ滝を越え、やがて涸れ沢になってきてそれでもしばらく登っていると赤布に導かれて左の尾根を目指すようになり、適当なところから尾根筋に上がってしばらく進むと三ノ塔尾根で、ここにははっきりした登山道がありました。

樹林の中の暑い道を我慢しながら登るとやがて風遠しの良い稜線に出て、わずかの歩きで三ノ塔の頂上に着きました。塔ノ岳方面は曇っていましたが相模湾方面は展望が良く、江ノ島や三浦半島がはっきりと眺められます。沢道具をしまってしばらく気持ち良い風に吹かれて休憩して下山にかかりました。

二ノ塔の山頂から長く滑りやすい二ノ塔尾根をひたすら下って入渓点の葛葉の泉へ戻り、やわらかくおいしい水をたっぷり飲み、フェルトソールの洗濯までしてから沢を辞しました。今回は全ての滝をフリーで直登できて自分としては満足のいく遡行でしたし、沢初見参のオグが本番に強いところを見せてくれたのは今後に向けて大きな収穫でした。