塾長の山行記録

塾長の山行記録

私=juqchoの登山の記録集。基本は癒し系バリエーション、四季を通じて。

裏同心ルンゼ

日程:2001/12/01-02

概要:赤岳鉱泉をベースにして、初日はジョウゴ沢でアイスクライミングの練習。2日目は裏同心ルンゼを抜け、大同心の肩から大同心稜を下降。

山頂:---

同行:黒澤敏弘ガイド

山行寸描

▲裏同心ルンゼF2。最後のF5を除いてまずまずの結氷状態だった。(2001/12/02撮影)
▲大同心の肩でポーズ。1年ぶりでのリベンジ達成の瞬間。(2001/12/02撮影)

2001/12/01

△10:05 美濃戸 → △12:55-13:35 赤岳鉱泉 → △13:55-16:00 ジョウゴ沢F1 → △16:15 赤岳鉱泉

昨年の12月に裏同心ルンゼのF5で落氷に当たって負傷し、周囲に居合わせたクライマーの方々に助けていただきながらの敗退を余儀無くされてから、このルートはぜひとも片付けておかなければならない宿題になっていました。快晴の空の下、前日の雪で美しく白く輝く横岳西壁を目指して美濃戸から歩き慣れた柳川北沢沿いの道を進み、体力温存のため極力ゆっくり歩いて1時前に赤岳鉱泉に到着したら、持参のテントを張ってからジョウゴ沢へ出向きました。

周囲のクライマーたちの情報では、ジョウゴ沢の上部は氷の状態が悪く登れないとのこと。そこで手近なF1でまず昨年のおさらいをしてみることになりました。振返りを行ったのはアイゼンの蹴り込み方、アックスの打ち込み方、それにリストループの調節とアイゼンの研ぎ方など。手近の氷の壁で行ったアックスとアイゼンの前爪でのトラバースのボルダリング的な面白さを楽しみ、最後に滝の左寄りをダブルアックスで気持ち良く登って、ついでにF2を覗きに行くと何人かが氷瀑に取り付いていました。確かに氷が透けて中を流れる水が見えてはいますが、登れないというほど悪い状態ではないようです。しかし、このところミックスクライミングに凝っている黒澤ガイドはそれよりも滝の左手の岩壁に目をやってミックスで登る課題が面白そうだと舌なめずりをしていましたが、こちらがひきつっているのに気付いたのか渋々諦めてくれました。

テントでの夕食は毎度おなじみ「王侯の晩餐」で、ズブロッカをくいっとやりながらカロリーたっぷりの食事の後、シュラフにもぐりこんで黒澤ガイドのマッキンリー登山時の話などを語らい合いました。さらに、こちらのサーマレストに穴があいていてペチャンコになっていたのに同情した黒澤ガイドがゾウ足を貸してくれていて、これに素足を入れてシュラフにくるまると実に暖かく、しっかり睡眠をとることができました。

2001/12/02

△06:20 赤岳鉱泉 → △07:00 裏同心ルンゼF1 → △10:00-15 大同心取付 → △11:25-12:25 赤岳鉱泉 → △14:00 美濃戸

味噌煮込み力うどんの朝食でしっかり暖まってから、装備を分け合って出発。倒木が累々と横たわっていて歩きにくい裏同心沢を奥に進むと、F1・15mに先行者は誰いません。これは幸いと急いで登攀具をつけ、アイゼンを履いていよいよ登攀開始です。

F1は左寄りに緩やかに登り、しばらく進んだ先のF2は3段30mを一気に越えました。F1を登っている時点では後続パーティーが1組見えていましたが、そのパーティーもF2の上に着く頃にはまったく見えなくなって、周囲に誰もいない氷の沢に響くのは我々のコールとアックスやアイゼンが氷に打ち込まれる音だけです。昨日のジョウゴ沢での練習がきいてアックスが順調に決まり、体重を大胆にリストループへかけながらどんどん前爪を上げていきましたが、チリ雪崩が細かく降り注ぎはじめているため黒澤ガイドはさらにスピード最優先で抜けきってしまいたい様子です。

傾斜のあるF3・8mは左のコンタクトライン沿いに攀じ登り、ナメ状のF4・20mはつるべで私がリードしてF5の取付までロープを伸ばしました。因縁のF5・10mは氷が薄くちょっと悪い状態で、昨年同様左寄りのルートを選択した黒澤ガイドもここでは取付と滝の途中2カ所にアイススクリューをねじ込んでランニングをとり、75度程度の傾斜を慎重に乗っ越していきました。フォローの私も同じラインを登り、途中で一度左足をスリップさせこの日唯一のテンションをかけてしまったものの、無事にF5を越えて奥の涸棚F6の下から大同心の基部を右上し、大同心の取付まで登って一息つきました。これでようやく、1年前の敗退のリベンジ達成です。

大同心の取付でロープを外し、ふと見上げると大同心正面壁に2人パーティーが取り付いているのが見えました(右の写真)。いつか自分もあそこを登りたいものだと思いながら見ていたところ、フォローの女性が「あっ!」と声をあげたと思ったらカラカラと音をたててアブミが落ちていってしまいました。しかしリードの男性がわははと笑っているので、どうやら予備のアブミがあり登攀に支障はない様子です。

視線を右に向けると小同心が聳えており、次の目標はこちらの小同心クラックだなと睨みつけてから下降を開始しました。大同心稜の下りは途中からアイゼンを外してスピーディーに下降し、帰幕する頃には朝からの雲がとれてきれいに青空が広がりました。テントの前で前日コンビニで買ってあった稲荷寿司をぱくついてからパッキングを済ませ、凍りついて滑りやすい登山道を飛ばして美濃戸まで戻ったら赤岳山荘で野沢菜をいただき、さらに車で下る途中で「もみの湯」に立ち寄って露天風呂で心身の疲労を癒してから、小淵沢で黒澤ガイドと別れJRで帰京しました。