塾長の山行記録

塾長の山行記録

私=juqchoの登山の記録集。基本は癒し系バリエーション、四季を通じて。

水無川本谷〜沖ノ源次郎沢

日程:2001/10/27

概要:丹沢の水無川本谷をF1からF5まで遡行し、左から合流する沖ノ源次郎沢の2段40mの涸滝を登る。帰途は書策新道を戸沢出合へ下山。

山頂:---

同行:黒澤敏弘ガイド

山行寸描

▲本谷F5を登るかっしい。頑丈な鎖にしっかり体重を預ければ問題なく登れる。(2001/10/27撮影)
▲沖ノ源次郎沢F2を懸垂下降するかっしい。背景の紅葉とかっしいの楽しそうな表情に注目。(2001/10/27撮影)

2001/10/27

△09:55 戸沢出合 → △11:15-25 F3手前 → △12:05-20 書策新道横断点 → △12:30-14:55 沖ノ源次郎沢涸滝 → △15:00 書策新道横断点 → △15:45 戸沢出合

8月の小川山で鮮烈なクライミング・デビューを果たしたかっしいに沢登りの面白さを教えたいと思い『猫の森』のプライベート講習でかっしいを連れて丹沢へ。昨年私も体験した水無川本谷から沖ノ源次郎沢へ継続するコースです。午前9時に渋沢駅で待ち合わせて黒澤ガイドの車で戸沢出合へ向かう途中、山中にあらわれたダート道に驚くかっしい(20代半ば)に黒澤ガイドは「昔は舗装されていない道の方がごく普通だったんですよ。ねぇ、塾長さん」とこちらに同意を求めましたが、日頃『中高年』のレッテルをかたくなに拒否している私は「何のことですか?」ととぼけました。

戸沢出合に車を置き装備装着ですが、私は通常の沢装備なのに対し、黒澤ガイドの足回りはゴム長靴、かっしいはヘルメットにハーネス姿も勇ましいものの靴はナイキのスニーカー。あまり他人に見せたくないような一貫性のないパーティー構成で書策新道は極めて危険な崩壊地がありますとの看板を横目に見ながら歩き慣れたルートをゆっくり進みましたが、10月下旬といっても今日は気温が高く、じんわり汗ばんでくるくらいです。やがていつもの堰堤脇の崩壊地に着いてみると、崩壊が一層進んでいてますます悲惨な状況になっていました。巻き道も悪そうなので崩壊地を登ることにし、先行した黒澤ガイドがスリングで作ってくれたアブミ状の足掛かりでここを突破しました。

F1は左(右岸)の鎖を登り、F2は右の乾いた壁をしっかりしたホールドに支えられて登ります。F3で先行パーティー2人が右の壁にトライしているのを見つつ、手前のゴーロで小休止。ここの左手にガレが合流しており、これを登ると書策新道へ突き上げるので「あのパーティーが墜ちたら、ここから搬出しましょう」と黒澤ガイドは物騒なことを言っていましたが、先行の2人はどうやら無事にF3を突破しました。一方、我々は左の壁につけられた鎖をゴボウで登り横に伸びる鎖を頼りにトラバースして落ち口へ抜け、さらに小滝をいくつか越えて、高さのあるF5を右の鎖を使って越えると書策新道が本谷を横断する地点に到達します。ここまでかっしいは、体力的にも精神的にも少々厳しいものを感じつつもよく頑張ってしっかりついてきていました。ほとんど山登りの経験なくクライミングの世界に入ったかっしいが、いきなりの沢登り=バリエーションでこれだけ登れれば立派なものです。

実はこのときF3を登っていた先行の2人こそ、後にいくつもの山行を共にすることになるNiizawa氏とSakurai氏でした。

書策新道との交差点の少し上、紅葉のアーチの下にリュックサックを置いて昼食をとってから、懐かしい沖ノ源次郎沢のF1はそのままの足ごしらえ(つまりゴム長靴・スニーカー・沢靴)で登り、F2の下で全員クライミングシューズに履き替えました。この日のF2の涸滝は1年前とは比較にならないほどきれいに掃除されており、いかにもフリーのゲレンデらしい表情をしています。まず右寄りのクラック沿いのラインを黒澤ガイドが登ってから、上から確保されてかっしい・私の順に登りました。ここは出だしの1段上がったところからの左足の1歩がちょっと高く、それを支えるための右手のかけどころに少し悩みますが、ここを越えてしまえば難しいところはありません。落葉が多少滑りはするものの、フットジャムも交えながら気分良くすいすい登っていったところ、上から声が掛かりました。

か「塾長さん、速いですね〜」
黒「うん、さすがだ」
私「(自慢気に)亀の甲より年の功!」

……自爆。

懸垂下降してから、今度は中央のクラックルートに挑戦です。ここは壁の真ん中を上に伸びるクラックを登り、真ん中のレッジからややかぶり気味の岩を乗り越した後の2mほどの傾斜が厳しいスラブが核心部です。下から見ているとさすがに黒澤ガイドもここは慎重で、「(墜ちたら確保を)お願いします」とビレイをしている私に声を掛けてから取り付き、最後は思い切り良く上のホールドをとって抜けていきました。次に登ったかっしいは、やはりスラブに手が出ず右のカンテを回りこんで上へ。最後が私の番ですが、実はクラックの一番下の部分が案外適当なホールドがなくちょっと緊張し、なんとか岩をだましながら体勢を整えてクラックを直上し、レッジの部分もクライミングシューズのフリクションのおかげでスムーズに処理して、いよいよ核心部に到着しました。ところが、上のホールドがちょっと遠く、そのままランジしてもとれる位置にはありません。左下にスメアリングを利かせられそうなフットホールドを見つけましたが、そこに左足を置くためには右足の位置を一歩上げておきたいところなのに右足側のフットホールドはカンテの右に求めるしかなく、試行錯誤しているうちにそのままかっしいと同じラインで上がるしかなくなりました。結局スラブ越えを果たせないまま終了点に着いてしまい「確保されているんだからもっと大胆に挑戦すればよかった」と後悔することになってしまいました。

F2を懸垂下降で降りてクライミングシューズを脱ぎ、今度は私も運動靴に履き替えてからF1を懸垂下降で本谷へ戻って横断点から書策新道に入ると、入渓点手前の看板にあったように3カ所程ガレている地点がありましたが、特に苦労することもなく十分明るいうちに戸沢出合まで下ることができました。

今回は沢登り+フリークライミングの「一粒で二度おいしい」コースで、かっしいにも十分楽しんでもらえたようでした。沢の季節はこれで終わりですが、来年はさらに多くの同僚を沢に引っ張りこんで、自分たちでも易しい沢を楽しめるようにしていきたいものです。