三ツ峠

山頂 三ツ峠山1,786m
分類 関東周辺 / 黒澤敏弘ガイド
日程 2000/09/30-10/01
同行  
概要 岩登りのゲレンデ・三ツ峠でトレーニング。課題はリードクライミングへの挑戦。

核心部の2ピッチ目クラック。胸を突かれる2mをジャミングを決めて越えます。(2000/09/30撮影)

岩場全景。ヘルメットが遠く見える地点(赤丸で囲んだところ)が中央カンテ取付。(2000/10/01撮影)

2000/09/30

■09:30 達磨石

関東の岳人の聖地とも言ってよい岩登りの古典的ゲレンデ、三ツ峠へ。課題はアウトドアでのリードクライミングの実践です。インドアではリードを練習してあるものの、アウトドアでは今回が初めてで、期待と不安が相半ば。数日前に買い足したカラビナやクイックドローなどのギアで重いザックを背負って、黒澤ガイドと若いS氏と共に達磨石の登山口から歩き出します。いかにも日本の山道といった感じの柔らかい樹林の道を登ること2時間、ところどころに石仏などを見ながら高度を上げてふとカーブを曲がると、目の前に圧倒的な岩壁が連なっています。岩の存在感は素晴らしく、近づくと岩が上から迫ってくるような錯覚を覚えます。

■11:40-12:10 中央カンテ取付

三ツ峠といえばマルチピッチ。その最も代表的なルートが、これから登る「中央カンテ」です。先行パーティが上に見えるためまずヘルメットをかぶり、それからおもむろに身支度をします。まず黒澤ガイドが出だしの簡単な壁を越えて第一バンドを横断し、奥の左上ランペ(20m/III)を登ったところで確保支点を作るのを待っている間に、どんよりしていた空がとうとう泣き出しました。このとき3人の心の中には一様に次のような考えが浮かびます。「この雨の中を登るのは嫌だなぁ。しかしここまで来て講習中止というわけにはいかないだろうし……」

S氏、私の順で登り、次の2ピッチ目がこのルートの核心部となる垂直のクラック(10m/IV+)。S氏はクライミングシューズではなく登山靴で登っているのですが、濡れた狭いクラックを苦労しながらも見事に登り切りました。自分も後から続きましたが、胸を突かれるような2mで逡巡しなかなか進めません。クラックの奥に握りこぶしを入れてジャミングで支え、足を突っぱってやっと乗り越すことができましたが、その上でチョンボ(残置ピンの頭を踏む)してA0にしてしまいます。

気持ちの落ち着くテラスからの3ピッチ目(30m/IV)は、すぱっときれいなコーナークラックを登り、頭上をハングでさえぎられる前(右の写真の位置)で左のちょっと遠いカンテに突き出た小さなフットホールドに乗り移り、そのままカンテ左のフェースに回りこんで登るものですが、ここでS氏がピンチ!左のカンテに出るところで右上のホールドをつかみ、思いきって左足を伸ばしていかなければならないのですが、岩が濡れている上にビブラムソールのS氏にはこのムーヴが危険なものに感じられたため、コーナークラックの最上部まで行き着いてハングの左を抜けようとし、そこで行き詰まってしまいました。何度か行きつ戻りつを繰り返したものの突破できるきっかけが見つけられないため、黒澤ガイドから指示が出て私がS氏の下まで登り「人間フットホールド」になって肩を貸すことに。なんとかS氏を上部へ送りだしてから自分は左カンテのコースをとりましたが、確かに自分も登山靴だったらこちらを登りたいとは思えません。何はともあれ登山靴で登り切ったS氏の力量に感嘆しつつ、クライミングシューズのありがたさを噛み締めながら終了点に到着し、懸垂下降2回で取付に戻りました。

■14:40-15:20 中央カンテ取付 ■15:35-45 三ツ峠山頂 ■16:00 三ツ峠山荘

装備を解き、黒澤ガイド・S氏と別れて今日の宿、三ツ峠山荘を目指しますが、その前に山頂を踏んでおくことにしました。岩場を左に進んで突き当たりの道を急登して山頂部に出、岩場の上へ戻るように道を辿るとNHKの施設の前を通って山頂(開運山)に到着。この頃には雨は上がって高曇りになっていましたが、展望はまったくありません。

ひと休みしてからもと来た道を下り、岩場へ下る道を左に分けて四季楽園の前を直進し、ぽつんと寂しそうな毛無山の方向指示盤の先に建つ三ツ峠山荘に宿泊を申し込みました。同宿者はほかにどこかの10人程の団体と、明らかにガイドらしい方と年輩の生徒数名のみ。したがって奥のひと部屋を丸まる個室状態で借りることができました。早速濡れたギア類をぶら下げてからこたつにもぐり込み、記録の整理をしながらズボンを乾かしました。しばらくうだうだしていると、隣の部屋で酒盛りをしているガイド一行の会話に「マッターホルン」という言葉が聞こえてきて耳がダンボになります。どうやらガイドの方がツアーを引率しての苦労話などを披露しているようなのですが、「マッターホルンに登るのなら、5月の前穂北尾根を登れてほしい」という話に、ほほ〜そういうものかと納得。いつの間にか記録の整理がガイド氏の発言のメモとりに変わってしまいました。後で食事のときにこの方の顔を見たところ、どうも穂高のガイドブックなどで有名なS氏のようでしたが、確信なし。

2000/10/01

■08:55 三ツ峠山荘

朝、昨夜寝入るときと同じ雨の音で目を覚まします。外は明るくなっていますがこれではダメかなと思いながら黒澤ガイドの携帯に電話をすると、下界では雨は上がっているとのこと。朝食を終える頃になると雨があがり、ガスも切れて富士山が目の前に意外なほど大きく見えます。岩場も見下ろすことができて期待が膨らみます。

■09:15 御巣鷹山

昨日と同じ中央カンテの取付に11時の待ち合わせとしましたが、他の宿泊者は皆岩場へ出かけてしまい、一人で山小屋に居残るのも気が進まないので、散歩がてらに「三ツ峠」のもうひとつのピークである御巣鷹山まで歩くことにしました。ほとんどアップダウンのない緩やかな道は、樹林の下にトリカブトの群落をかかえていて気持ちがよかったのですが、御巣鷹山山頂はNTTの施設がいっぱいに建てられていて他に何もありませんでした。

■09:30-10:35 四季楽園前テラス ■10:40-11:40 中央カンテ取付

四季楽園の前のテラスで1時間程朝寝をし、おもむろに岩場におりて行くと、中央カンテ下の壁で4人パーティーが登山靴で練習をしていました。その模様を見るともなく見ているうちに黒澤ガイド夫妻とベテランS氏が合流。今日は達磨石からではなく裏登山口の方から登ってきたそうです。

ギアを着けて最初は取付左側のフェースを使った足慣らし。グレード5.8、と黒澤ガイドが認定したルートを最初はTRで登り、ついでTRのままクイックドローをクリップしていく練習。途中もそれなりに細かいですが、最後のバンドへよっこらしょと登るところがうまくいかず苦労します。黒澤ガイドはマントリングで一気に上がれと指示するのですが、いま一歩だけ立ち位置が低いように感じられて思い切れず、ずりずりと足を上げて格好わるく這いずり上がってしまいました。昼食後、いよいよリードで登ります。あらかじめヌンチャクはかけてあるので、インドアと同じ要領でクリップすることだけに気を使えばOK。とはいっても登れなければクリップもへちまもないのですが、今回はどういうわけかスムーズにムーヴがつながって気持ちよく登れてしまいました。ロワーダウンすると黒澤ガイド夫妻からもよいクライミングであったと御墨付きがあり、せっかくの初リードなので「千手観音左ルート」と命名してもらいました。ネーミングは、取付の小さな岩屋の奥にある千手観世音菩薩の石碑に由来します。

最後に再び「中央カンテ」を登ります。今回は第一バンドまででいったん切り、ここから左上ランペを自前のギアを肩にかけた私がリードしました。ここは、易しいようでも右から岩に圧迫されて左へ追い落とされるようになるので気が抜けません。途中2箇所にランニングビレイをとってビレイポイントに着き、要領悪く時間をかけながら確保支点を作って黒澤ガイドが上がってくるのを迎えましたが、とれるところではこまめにプロテクションをかけるようにとの注意。ここから上は黒澤ガイドのリードで、次のピッチ=垂直クラックは昨日と同様フィストジャムですが、岩が昨日よりは乾いていることもあってぐいぐい登れ、最終ピッチのコーナークラックもレイバックでスムーズに登れました。終了点からやはり懸垂2回で下り、最後にブッシュに突っ込んで痛い目を見ながら取付に帰還しました。

■14:55-15:15 中央カンテ取付 ■16:20 裏登山口車止め

ギアを片付けて四季楽園前まで登り返し、裏登山道を下ります。今回はIII級とはいえマルチピッチの一部をリードすることができ、「中央カンテ」のルート自体も面白く楽しめて、満足しました。