太刀岡山

日程:2000/04/16

概要:太刀岡山で岩登りのトレーニング。

山頂:---

同行:黒澤敏弘ガイド

山行寸描

▲太刀岡山。上まで登るわけではなく、10分ほど歩いた下の方にゲレンデがある。(2000/04/16撮影)

2000/04/16

△11:00-17:40 太刀岡山

先月に引き続き『猫の森』の講習会。この日は本来は三ツ峠の屏風岩を登るはずでしたが、あいにくの雨とあって黒澤ガイドの咄嗟の判断で御坂峠を越え、桃の花が満開の甲府盆地を突っ切って茅ヶ岳の近くの太刀岡山に転進したところ、これが大正解でこちら側は雨が上がり日が差してきています。車を置いて10分ほど歩いたところの岩場の前に、黒澤ガイド夫妻、もう1人の客のS氏(なんと71歳)と私の4人が荷物を広げました。

最初にトライしたのは右端にある「新人さんいらっしゃい」(5.9)。例によって黒澤ガイドがルート解説つきの手本を示しながら登ってロープをセットし、TRで登ります。最初チムニー状の溝を手掛かり足掛かりを求めながら直上して、チムニー出口の岩に右手を掛けながら左のフェースに移動。手を上方のホールドにかけてから両足を左に運んで左手をカンテの外にかけ、左足を一歩上げておいて右足を移し一気に身体を引き上げる……と書くのは簡単ですが、もたもた登っているうちに冷たい岩に指先の感覚が奪われてホールドが不安になってくる上に、トラバースの足場は下から見ると楽勝に見えたのに実際にそこに立ってみると外傾したわずかな出っ張りでとてもコワイ。そして左足で立ち上がるところはますますフットホールドに確信がもてずにテンション。ぶら下げてもらいながら何度か挑戦しましたがどうしても身体を上げきることができず、とうとう断念してしまいました。

ついで昼食休憩の後にトライしたのは、同じフェースの左のカンテの外側から登る「阿行小あなこ」(5.10a)です。ここは出だしの3mが難しく、右手をカンテにかけながら右足、左足と上げていくのですが、身体を振られるのを防ぐための左手のホールドがなく、私もS氏もさんざん苦労しました。下からのアドバイスと何度かのテンションの末にやっと終了点に到達し、ロワーダウン。ここで黒澤ガイドが手本を示しその分解写真を撮ることができましたが、下から見て「そうか、あそこに足を乗せるのか。よーし、今度こそ」と思ってもそうは問屋が卸してくれません。ついで「新人さんいらっしゃい」に再挑戦するも、また同じところで力尽きました。

今度は岩場の中央部に移り、人工登攀ルートをフリー化したという「ノット・アーティフィシャル」(5.11b)を使ってアブミの練習です。ボルトにアブミを掛ける→手をスリングに通す→3段目に足を乗せる→2段目にもう一方の足を乗せ膝を外に出してかかとの上に座り込む→次のボルトにもう一つのアブミを掛ける、の繰り返しで身体を上げていくのですが、かかとの上に座る感覚がいまひとつわかりません。それでも何とか与えられた課題をこなして、数m登ってからロワーダウン。

最後に15分ほど歩いて場所を小山ロックに移し「バーボンを片手に」(5.10b)ですが、最初の3mほどのかぶっている部分(これが5.10bのゆえん)は私にはとても無理なので、ここにアブミをかけてズルをさせてもらいました。終了点にいる黒澤ガイドに確保されながら2段につないだアブミで梯子を登るように身体を上げ、「ここからは簡単ですから」と言われた壁に乗り移るところがまず難関で、アブミの最上段に立ち上がりフットホールドを岩の上に求めていくところがどうしてもうまくいきません。ここで時間をかなり費やし、やっと乗り込めたところからさらに2m上がるところがまた恐怖。岩が少々濡れている上に、握力ゼロの状態で足を信じて立ちこんでいくことがどうしてもできず立往生。とうとうアブミを再び使うためにロープで引っ張り上げることになりました。この時点で気持ちがすっかり岩に負けてしまっており、アブミの最上段に立ったところからもさんざん苦労したあげく一度はリタイアを宣言しましたが、下からの励ましとアドバイスで右上の木の幹にしがみついてやっとテラス状のところに辿り着きました。後はホールドに困らない斜面をゆっくり登ってほうほうの体で終了点に到着です。どれだけ時間がかかったのかわかりません(少なくとも30分以上?)が、上で確保していた黒澤ガイドも下で見上げていた2人も寒い中を辛抱強く待っていていただいて、ありがたいやら申し訳ないやら。その後にS氏がすいすい上がってくるのを待って黒澤ガイド・S氏・私の順に懸垂下降しましたが、宙に身体が浮く空中懸垂は初めての経験でした。

道具類の回収とパッキングを終えて岩場を後にしたときには西の空に日が低くなっており、岩壁がオレンジ色に染まっていました。

それにしても今回は、自分の意識面での弱さがはっきりと出た感じです。足を信じ、ビレイヤーを信じて身体を思い切って上げていかなければならないのだと頭ではわかっていても、いざ岩に向き合うと傾斜が本当の角度よりもはるかに急に感じられて、ついホールドにすがりついてしまいます。基礎的な持久力も不足してはいますが、それ以上に意識面でのブレイクスルーが必要な感じで、修行の道の険しさを痛感しながら捲土重来を誓って山を下りました。