御前山〜大岳山

日程:2013/02/23-24

概要:数馬から鞘口峠に上がり、月夜見山、御前山を経て大岳山に達し、大岳山荘の軒先に1泊。翌日、御岳から日の出山を経て金比羅尾根を武蔵五日市へ下山。すなわち、日本山岳耐久レース(ハセツネ)のコースの後半。

山頂:御前山 1405m / 大岳山 1267m

同行:---

山行寸描

▲縦走の模様。御前山周辺はしっかり雪がついていた。(2013/02/23-24撮影)
▲大岳山荘近くから見た夜明けの関東平野と富士山。(2013/02/24撮影)

建国記念の日の三連休にハセツネの前半を歩いたので、しからば続きを歩いてみるかと再び奥多摩へ向かいました。今回のコース上の主要な山は御前山と大岳山になりますが、ここも先日の三頭山と同様、1986年の5月に歩いたところ。とはいえコースコンディションは冬山そのものなので、今回も1泊2日の装備で臨みました。

2013/02/23

△07:25 数馬 → △08:25-35 都民の森 → △08:50-09:00 鞘口峠 → △10:35 月夜見山 → △10:45-11:05 月夜見第二駐車場 → △11:40 小河内峠 → △12:35 惣岳山 → △12:50-13:00 御前山 → △14:05-10 大ダワ → △15:40-45 大岳山 → △16:00 大岳山荘

渋谷駅を始発で発って、新宿、立川と乗り換えて武蔵五日市駅に6時14分着。改札を出たところのコンビニが開いていないのに一瞬動揺しましたが、駅のすぐ近くにセブンイレブンがあるのを見つけ、バスの出発時刻までの間隙を縫って朝食をゲットしました。

バスの中ではすっかり爆睡……といきたかったのですが、南秋川沿いの谷底を進む車内は恐ろしく寒く、眠るどころではありませんでした。そしてバスはところどころの停留所に新聞を落としていきながら奥地へ進み、終点・数馬に7時すぎに着きました。ここで身繕いをし、いよいよ出発です。

蛇行しながら登り続ける車道をゆっくり歩くこと1時間で、前回の山旅の終点となった都民の森に到着しました。今回も道中での補給は一切しないことにしているため、温かい飲み物を買えと誘いをかけてくる自動販売機には目もくれず山道に入ります。わずかの登りで鞘口峠に到着し、ここで6本爪の軽アイゼンを装着して、月夜見山方面へ向かいました。鞘口峠から月夜見山までの間は、ハセツネ本番のときは私のペースだとだいたい午前1〜3時頃に通過することになるのですが、暗闇の中に左側が切れ落ちて緊張する急なトラバース道の際どさは今日のこの時間帯でも相変わらず健在です。しかし、締まった雪のおかげでかえって安全に渡ることができました。

月夜見山の手前で車道を歩くところがありますが、そこからは大きな三頭山と、その右手に奥秩父の山並みが見通せていました。

鞘口峠から誰にも会わずにハセツネの第2関門である月夜見第二駐車場に到着し、奥多摩周遊道路を走る車やオートバイや自転車を眺めながらパンと水の昼食をとりました。鞘口峠から駐車場までは1人分の踏み跡しかなかったのに、不思議なことにここから御前山方面には雪の上に立派な踏み跡が続いていました。小河内峠に向かう下り坂はぬかるんでいると滑りやすく気を使うところですが、こうして雪にしっかり覆われていればどんどん足を出していけます(ただしところどころ凍っているので軽アイゼンは必携です)。

小河内峠を過ぎると道は登り基調に変わり、ひと頑張りで惣岳山に着きました。さらに続く御前山の登り道の途中では、登山道脇の木杭の交換作業中。ごくろうさまです。やがて到着した御前山のてっぺんでは、大勢の登山者が休憩中でした。ここは眺めはあまり良くない山頂ですが、雲取山から東に連なる石尾根方面だけはきれいに見えており、リュックサックを下ろして行動食をとりました。

あまり時間を空けずに大ダワ方面へ下降を開始しましたが、こちらも締まった雪に軽アイゼンがよく利いて気持ち良く高度を下げることができました。しばしの頑張りで大ダワに着き、ここからいったん軽アイゼンを外して緩やかな尾根道を大岳山へ向かいましたが、大岳山の手前から凍り付いた道が出てきたので再び軽アイゼン出動です。高校のワンゲル?らしき大部隊とすれ違いながら歩き続けて最後に急登をこなせば、そこが西側の展望に恵まれた大岳山の山頂でした。

そろそろこの日の泊まり場を考えるべき時刻。頑張れば暗くならないうちに日の出山までは行けそうですが、翌日の行程をそんなに短くする必要もないので、大岳山を少し下ったところに建つ大岳山荘の敷地を狙うことにしました。

岩がちの山道を急降下し、大岳神社の社殿が現れてすぐの場所に、大岳山荘の建物はありました。その立派な建物は往時の賑わいを想像させますが、2008年に閉鎖されて今は廃屋の状態です。また、山荘の近くにはずいぶんモダンな作りの茶色い建物が建っていましたが、こちらも閉鎖されていました。

山荘の引き戸は鍵が掛かっておらず中に入ることもでき、そこは意外に整理整頓されている印象を受けましたが、さすがに無断で中に泊まるわけにはいきません。

しかし幸い軒先は地面が乾いており、近くには整備されたトイレもあって泊まり場としては申し分のない環境なので、例によって野宿することにしてまだ明るいうちに食事を済ませ、18時前にはシュラフにもぐり込んでしまいました。

2013/02/24

△06:45 大岳山荘 → △07:50-08:05 長尾平 → △09:00-20 日の出山 → △12:05 五日市会館 → △12:15 武蔵五日市駅

この夜は厳しい寒波が北日本を襲っていたようで、大岳山周辺でも夜間に風が渡り、笹がワサワサと音を立てていました。そのためさすがにちょっと寒い思いをしましたが、それでも10時間以上眠って午前5時に起床。トイレに行こうとシュラフを抜け出てみたところ、関東平野の夜景の広がりがあまりにも見事で見とれてしまいました。

朝食をとり朝のお勤めを済ませ、朝日に照らされてピンクに染まる富士山の写真を撮ってから、今日の行程を開始しました。昨日の出発時には4リットル担いでいた水を残り1.5リットルに減らすとリュックサックはぐっと軽くなり、しかもこの日の道のりはほとんど下りばかりなので、ずいぶん気が楽です。

相変わらず豊富な雪に覆われた道を下り続けましたが、ロックガーデンへの道を分けた先の給水場は生きていて、この季節でも水が途中で補給できることがわかり一安心(ここだけはハセツネのときも水を補給してよいことになっています)。

やがて下り着いた長尾平(ハセツネの第3関門)で上衣を軽くし、軽アイゼンを外しながらふと見ると、そこには山肌を切り拓いて長谷川恒男氏の記念碑がありました。

登攀の前には、葛藤がある。なぜ悩むのか。それは行動を起こすことによって、『肉体』が滅びることを『精神』が恐れるからだ。『精神』とは、ヒトが人間であることを示す最後の砦なのだ。 長谷川恒男

この記念碑は長谷川恒男氏の没後20周年を記念して2011年10月10日に設置されたそうですから、私もこの前を通っているはずなのですが、これまで気付いていませんでした。

人っ子一人いない御岳神社の門前街を抜けて、日の出山へ向かいます。日の出山の山頂部の一角には立派な東雲山荘、そして最高地点には東屋があり、ここからの関東平野の眺めも見事で、東京湾がきらきらと輝いているのが見えました。日の出山という山名の由来は知りませんが、確かにここは初日の出を拝むのに絶好のロケーションです。

日の出山からはアップダウンの少ない金比羅尾根を淡々と下っていくだけですが、どうしたわけかこの辺りから左の登山靴の足首あたりが当たって痛むようになってしまい、本来なら漫歩と言ってもいいような山道歩きが思わぬ苦行になってしまいました。それでも何とか最後まで歩き通して、琴平神社を経由して武蔵五日市市街へ帰還できました。

太線は今回歩いたルートで、最後にちょっとつらい目に遭いましたが、それでも2日間とも天気に恵まれて楽しい雪の奥多摩ハイキングでした。