塾長の山行記録

塾長の山行記録

私=juqchoの登山の記録集。基本は癒し系バリエーション、四季を通じて。

正沢川本谷(敗退)

日程:2012/09/22-23

概要:幸ノ川橋から茶臼山に向かう道を辿り、沢登コースから正沢川へ入渓。初日は玉ノ窪沢出合までにして幕営。2日目に正沢川本谷を詰める予定だったが雨のため遡行を中止し、往路を戻る。

山頂:---

同行:トモコさん

山行寸描

▲初日の遡行。翌日の好天を期待しながらの幕営だったのだが……。(2012/09/22撮影)
▲2日目の下降。雨であえなく敗退にはなったが、それなりに楽しい沢ハイクになった。(2012/09/23撮影)

このところ夏ごとに中央アルプスの沢をご一緒しているトモコさんとは、昨年は彼女の仕事の都合で機会を得られませんでしたが、3年前は中御所谷、一昨年は太田切川本谷を共に遡行しており、さて今年はどうするかということになりました。日程にゆとりがあれば、木曽側なら奥三ノ沢、伊那側なら中田切川本谷に行きたかったのですが、諸般の事情で1泊2日しか使えません。このため行き先が限られる中、ちょうど先日ケイ氏と遡行したばかりの正沢川細尾沢の本流筋である正沢川本谷を勧めるガイド本の記述を見つけたのでこれを選ぶことにしました。細尾沢が木曽駒ヶ岳にダイレクトに詰め上がる沢なのに対して、本谷の方はその北にある支峰である将棋頭山に通じており、茶臼山経由4時間で登り始めと同じ場所へ下ってくることができるのが利点。金曜日の時点での天気予報も土日の晴れを示しており、気楽な遡行を楽しむことができるはずだったのですが……。

2012/09/22

△14:30 幸ノ川橋 → △15:00-10 入渓点 → △16:20 玉ノ窪沢出合

正沢川細尾沢のときと同じく新宿を8時10分に発つバスに乗って、途中渋滞に阻まれながらも日義木曽駒高原の道の駅に着いたのが14時近く。大阪から自分の車で先に来ていたトモコさんとここで合流し、またしても幸ノ川にかかる橋のたもとまで車で入りました。私のリュックサックには幕営装備一式とロープ。トモコさんのリュックサックには今夜と明朝のための食材。実はこのとき、急転直下明日の予報が雨になっていることを知って転進したひろた氏と現場監督氏がこの幸ノ川の遡行を終えて早くも下山の途についていたことを、神ならぬ身の私は知る由もありませんでした。

前回と同じ場所から正沢川に入ってゴーロの中を遡行すること1時間余りで、早くも玉ノ窪沢出合に到着しました。今日は出発が遅いこともあり、またガイドブックに「玉ノ窪沢出合左岸の岩小舎は7、8人可で快適」と書かれていて興味津々だったこともあって、ここに宿をとることにしました。ところがくだんの岩小舎は、玉ノ窪沢の左岸をほんの少し上がったところに確かにあって中には砂が敷き詰められて平らではあるものの、天井が低く、湿っぽいこともあって私もトモコさんもダメ出し。そのすぐ近くの小尾根上にテントを張るのにおあつらえの木に囲まれた小さいスペースがあったので、タープを雨よけに張った上でその下にテントを設営しました。

トモコさんが用意してくれた料理は、カレー味のシチュー(ソーセージ、ジャガイモ、人参入り)、サラダ、フランスパン、さらに焼きそばまであって大満足のディナー。たらふく食べてお腹を満たした後は、焚火をはさんで各自持参したお酒を楽しみました。集めた薪や小枝が湿っていて最初は火付けに苦労したのですが、ここで絶大な威力を発揮したのがトモコさんがまな板代わりに持参していた牛乳の紙パックです。紙パックが焚付けに良いということは知識としては知っていましたが、これほど確実に燃えてくれるとは目からウロコ。そしてなんとか炎が立ち上がるようになった焚火を眺めながらのおしゃべりは、お互いの幼少の頃のテレビ番組や給食のメニューや習い事の話。トモコさんと私は同じ年の生まれですが、私は小学2年生から6年生まで川崎市、かたやトモコさんは富山と地域が異なり、よって思い出話の中にいろいろとカルチャーショック的な相違点が浮かんできて飽きません。それでも20時を過ぎたところで、翌朝の早出に備えて就寝することにしました。

2012/09/23

△06:40 玉ノ窪沢出合 → △08:30 茶臼山コース横断点 → △08:50 幸ノ川橋

狭いテントに2人入っていればそれだけで十分温かく、柔らかく平らな下地のおかげもあってぐっすり眠れましたが、夜中にはタープを打つ雨だれの音が時折聞こえていました。一応3時半に起床し、お粥とパックのたくあんの和風な朝食をとりましたが、そうしている間にも徐々に悪天候がはっきりしてきました。そんなの(金曜日までは)聞いてないよ……とは思うものの、あたりが明るくなるにつれてこの日の晴天は望めないことがはっきりしてきたため、遡行は中止することに。熾し直した焚火の近くで肩を並べて雨よけのフライシートをかぶり、しばらくのんびりと穏やかな時間を過ごした後に、重い腰を上げてテントを畳み下山を開始しました。

雨模様の中、昨日に比べて明らかに水量が増えている正沢川のゴーロの下りは、岩と岩の間のどこを下るか、徒渉するならどこが水流に倒されないかなどパズルを解くような難しさと面白さがあり、これはこれで楽しいものでした。おかげで登りよりもむしろ時間をかけながら茶臼山コースが正沢川を横断する地点に下り着いてみると、そこにかかっている橋はワイヤーに板を何枚がぶら下げたもので相当にスリリング。しかし、我々はもっぱら左岸を下降していたのでこの橋を渡る必要はなく、そこからほんのわずかの歩きで元の幸ノ川橋に帰り着くことができました。

まだ早い時刻なので風呂にも入れないのではないかと心配していましたが、さすがトモコさん、近くの丸中山荘に併設されている「やすらぎの湯」が朝から開いていることを知っていました。冷えきっていた身体を湯船に沈めて芯まで温め、その後に木曽福島駅まで送ってもらって解散しました。

往復10時間と12,000円をかけて、実際の遡行は登り下りとも2時間に満たないというのは割に合わないようにも見えますが、周囲数キロに誰もいない自然の中でのゴージャス(?)な一夜は不思議に楽しく、満ち足りた気分で帰路に就くことができました。トモコさん、お疲れさまでした!また来年もよろしくお願いします。ただし、さすがに次は晴天に恵まれるよう祈りましょう。