塾長の山行記録

塾長の山行記録

私=juqchoの登山の記録集。基本は癒し系バリエーション、四季を通じて。

阿弥陀岳中央稜

日程:2010/02/13

概要:舟山十字路から広河原沢を詰めて阿弥陀岳中央稜に取り付く。御小屋尾根と合流したところでケイ氏は下山、きむっちと私は山頂から行者小屋経由赤岳鉱泉へ。

山頂:阿弥陀岳 2805m

同行:きむっち / ケイ氏

山行寸描

▲広河原沢側から見た阿弥陀岳。中央の顕著な尾根筋が中央稜、左は御小屋尾根、右は南稜。(2010/02/13撮影)
▲下部岩壁。ここはどんづまりまで詰めて壁沿いに右へ大きく回り込む。(2010/02/13撮影)
▲見上げる上部岩壁(きむっちの視線はいったいどこへ?)。こちらは壁の手前斜面を左にトラバースして抜けた。(2010/02/13撮影)
▲中央稜最上部。この後わずかで雪雲につかまることになる。(2010/02/13撮影)

1月の連休を体調不良で無為に過ごした今年、これではならじと月が改まったところで八ヶ岳へ行くことにしました。今回同行してもらったのは、このところ古賀志山で組んでいるきむっちとケイ氏です。ただしケイ氏は日曜日に獺祭の新酒発表会があるといううらやましい理由で土曜日のみが同行可能。そこで金曜日の夜に舟山十字路に入って仮眠後、阿弥陀岳中央稜を登って御小屋尾根に合流したところでケイ氏は御小屋尾根を下山し、きむっちと私は阿弥陀岳山頂から赤岳鉱泉へ下って1泊して、翌日きむっちが登ったことがないという阿弥陀岳北稜を登る2本立てのプランとしました。

2010/02/13

△06:30 舟山十字路 → △08:00 中央稜取付 → △10:25 下部岩壁下 → △11:15 上部岩壁下 → △13:30-35 御小屋尾根合流点 → △13:55-14:00 阿弥陀岳 → △14:50 行者小屋 → △15:15 赤岳鉱泉

マットもシュラフもケイ氏が用意してくれた至れり尽くせりの一夜が明けて、舟山十字路を出発。予報ではこの日遅い時刻に雪が降るようですが、朝のうちは曇りながら行動には問題ありません。最終パッキングをして出掛けようというところでケイ氏が一言「ハーネスを忘れた……」。一瞬呆然としかけましたが、考え直してみれば中央稜は初級バリエーション。スリングで簡易ハーネスを作ればなんとかなるはずです。

舟山十字路からゲートの奥に伸びる林道をひたすら詰めて、いくつめかの堰堤で遭難碑を見たところで堰堤の前を左岸に移り、そこから奥に伸びるはっきりした登山道を進むとやがて木の幹に赤ペンキで「四区」と大きく書かれた場所に出ました。ここを右に進んで左斜面にもう一度「四区」の赤ペンキが出てきたら、そこから斜面を上がることになります。

ここでケイ氏用に簡易ハーネスを作りましたが、すっかり作り方を忘れていて四苦八苦。下半身側は忘れようがないのですが上半身側がよくわからず、結局適当に結んで安全環付カラビナで止めたものの後で調べたらやはり間違っていたようです(こういうのはときどき知識の棚卸しをしないとダメだ)。そんな具合にあれこれやっているところへ後から男女パーティーがやってきて、言葉を交わしてみると彼らも中央稜狙いですが、さらに先から斜面に取りつく計画だそうです。

なお、今回の山行の数日前に雪が降っていたので皆で示し合わせ、きむっちはワカン、ケイ氏と私はスノーシューを持参していたのですが、見上げる斜面には雪が少なくむしろアイゼンとピッケルの方が有効です。結局この2日間、スノーシューは単なるお荷物になってしまいました。

樹林の中の急斜面をひたすら登って、しばらく平坦な地形を進んでから再び角度がつくあたりから、頭上に下部岩壁、左手に御小屋尾根が見えるようになってきました。この間、先頭を行くケイ氏はほとんど踏み抜きもなく雪の上を進んでいますが、セカンドのきむっちはケイ氏の足跡をなぞっているのになぜか時折足を潜らせ、しんがりを行く私はさらに新たな踏み抜きを作ってしまうといった具合。それでも樹林が切れて開けた尾根筋を詰めると、下部岩壁の基部に到着です。

相変わらず雪は締まっておらずところどころ足をとられますが、ロープを結ぶ必要はないだろうと意見が一致して各自自己責任で右へのトラバースを開始。大きく回り込んで最後に稜線上に抜ける箇所がちょっと嫌らしく、ここはきむっちに奮闘してもらうことになりましたが、おおむね危険な箇所もなく楽勝です。

そのまま頭上に見えている上部岩壁目指して斜面を登り詰め、上部岩壁基部の手前の大木にスリングで支点を作ってセルフビレイ。こちらも見た感じ傾斜の緩い雪の斜面をシンプルに左へトラバースするだけですが、引き続き雪が柔らかいのでここからは私のリードでロープを伸ばすことにしました。

斜面のトラバースは難しいところもなく、そのまま基部のバンドに乗り上がって岩壁左端に達しましたが、稜角を回り込むところがちょっと微妙。そこで眼下の木の幹を使って2mのクライムダウンで上部岩壁左の雪面に降り立ちピッチを切り、後続してきたケイ氏ときむっちを迎えて念のためもう1ピッチロープを伸ばしましたが、こちらは雪がしっかり締まっていて快適に上部岩壁の上のリッジに乗り上がりました。

ロープを畳んで後はてんでに尾根を詰め上がるだけ。きむっちのシャリバテ、私のシューズの不調などがあったものの、どうにか雪雲につかまる寸前に御小屋尾根に達することができました。後続のカップルが全然追いついてこないのをちょっと心配しつつ、ケイ氏とはここでお別れです。一般登山道とは言っても出だしはかなりの急降下、くれぐれも気をつけて!

中央稜はそれほど難しいところもなく、比較的短時間で阿弥陀岳の山頂に立つことができる手頃なルート。上部のアルペン的な様相や周囲の眺めも素晴らしく、もっと登られてもいいような気がしました。ただし、舟山十字路に車をデポしなければならないという制約はありますし、そもそもあまり人が入らない静かさがいい点でもあるのかも。

摩利支天を越えて阿弥陀岳の山頂に着いたときにはすっかりガスの中。証拠写真だけ撮ってそそくさと下山しましたが、それにしてもきむっちの足が速い!この急降下をまるで平地と同じようにすたすたと下っていきます。山スキーヤーで雪に慣れているきむっちと、元来高いところが苦手な私の差は歴然でした。さらに中岳沢のコルからは雪崩を警戒して文三郎尾根まで進むという選択肢もありましたが、この季節、この気温、それに下りでスピーディーに行動できるなら危険は少ないだろうと判断して、中岳沢を一気に下りました。

テント村になっている行者小屋前を通り、中山乗越を経て赤岳鉱泉着。ゴージャスな夕食に満腹になって、翌日の好天を期待しながら早々に床に就きました。

◎「阿弥陀岳北稜」へ続く。