水無川流レノ沢

日程:2009/12/05

概要:戸沢出合から流レノ沢をプラブーツとアイゼンで遡行。そのまま大倉尾根を下山。

山頂:---

同行:---

山行寸描

▲因縁のF1。今回は比較的容易に抜けられた。(2009/12/05撮影)
▲F2。左のルンゼから巻いた。(2009/12/05撮影)
▲4m滝。右のランペから登ったが岩の脆さにドキドキ。(2009/12/05撮影)

2009/12/05

△07:05 大倉 → △08:15-45 戸沢出合 → △10:10-25 大倉尾根 → △11:30 大倉

この時期、冬山に向けてアイゼントレーニングは必須ですが、諸般の事情から広沢寺へ行く時間がとれません。そこでふと思い出したのが、2002年に同じくアイゼンを履いて挑んであえなく敗退した流レノ沢。この沢は遡行対象としては魅力に乏しく、もっぱら大倉尾根からの下降路に使われている不遇の沢ですが、それなら簡単だろうと安易に取り付いて跳ね返されて以来いつかはリベンジせねばと思っていた相手でした。そんなわけで始発電車と始発バスを乗り継いで大倉に降り立ち、懐かしい戸沢出合までの道を歩きました。

作治小屋ってこんなに綺麗だったっけ?などと思っているうちに、表丹沢の沢登りの基地である戸沢出合に到着。かつては「丹沢の上高地」などと呼ばれていたそうですが、今日は立派な角を生やした鹿がのんびり草を食んでいるだけの寂しい光景でした。そして、その対岸にゴーロを押し出しているのが目指す流レノ沢です。

足回りをプラブーツとアイゼンに替え、念のためハーネスとヘルメットも装着しておもむろに出発。連続する堰堤を越え、ごろごろと歩きにくい沢筋の岩の上を我慢しながら進むと、沢が右に曲がったところで前回敗退したF1が現れました。しばらく眺めてみましたが、やはり前回と同じ水流左寄りのラインをとるしかなさそうです。下段は簡単に上がって、そこから上段は突っ張りを駆使して身体を引き上げ、ちょっと甘いフットホールドに乗り込んでここを解決。意外にあっさり抜けられて拍子抜けです。確か前回はホールドがぼろぼろ崩れてしまって嫌気がさしたのが敗因でしたが、今回は岩が比較的しっかりしていたようです。とはいえ、つるんとした岩にアイゼンでのフリーソロで乗り込むのは少々のアドレナリンを必要としました(体感III+)。

F1から5分ほどで出てきたのがF2。さすがに濡れるのは嫌なので左のルンゼから簡単に高巻きました。その後には『丹沢の谷 110ルート』(山と溪谷社 1995年)のトポでは2段8mのF3というのがあってこれがこの沢最大の滝ということになっているのですが、どうやら完全に埋まってしまっているようで、それらしい滝に出会わないうちに落ち葉で埋め尽くされた小さなゴルジュに入りました。

その先に出てきた顕著な滝が、おそらくトポに「上流の4m滝」として紹介されている滝でしょう。まっとうに水流沿いに行くのは無理なのでその右側におあつらえむきにスロープを落としているランペを登りましたが、岩が脆くてちょっと緊張します。しかしある程度高さを稼いだところに上からトラロープが垂れていたので、保険のためにこれにセルフビレイをとって最後の1mをじわじわと登りました。その先はほんの一足程度の小滝、石積堰堤などが続いて、やがて二俣になったところに大きなペットボトル二つをぶら下げた水場が現れました。水流は右俣からきていますが、すぐ上に尾根筋が見えているのでここで沢を離れることにし、左の斜面に見えている道を登ると10分ほどで大倉尾根の登山道に飛び出しました。

装備を解き、行動食の草餅を食べてしばしまったり。次々に登山者やボッカが通り過ぎて行くものの自分がどこに出たのかよくわかりません。トポでは「堀山ノ家」のすぐ下ということになっており、登山道を少し登ってみたら「大倉尾根27」の標識がある場所でした。まだずいぶん早い時刻なのでここから塔ノ岳に足を伸ばしたい気もしましたが、早朝は青空が広がっていたのに今は雨がぱらつき始めているため、あっさり下山することにしました。

流レノ沢は確かに遡行興味が湧く沢とは言いがたく、またアイゼントレーニングの対象としてもちょっと物足りないものがあります。それでもアイゼンの前爪に乗り込む感覚を少しは取り戻させてくれましたし、また冬山装備のコンディション再確認の機会としても意味があって、久しぶりに取り出した装備の中でアンチスノープレートとスパッツに補正すべき不具合を発見できました。というわけで、今回はそれなりに価値のある遡行になったと言ってよさそうです。