北岳バットレスDガリー奥壁

山頂  
分類 南アルプス / アルパイン
日程 2008/08/16-17
同行 ヤマダくん
概要 第五尾根支稜からDガリーを詰め、Dガリー奥壁を登ったが、またしてもルートファインディングのミスから、核心部の連続ハングを巻いてしまった。

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Dガリー奥壁の赤いスラブ。上の画像をクリックすると、Dガリー奥壁の登攀の概要が見られます。(2008/08/16撮影)

頭上に城塞ハング。その右端の大チムニーを目指して登ります。(2008/08/16撮影)

高度感のあるスラブ登り。左の岩峰はマッチ箱。(2008/08/16撮影)

2008/08/16

■04:30 白根御池 ■04:55 二俣 ■06:35-07:05 Dガリー大滝下

張り切って2時半に起床、と言いたいところですが、昨日の15ピッチの登攀の疲れが残っており、うだうだしているうちに出発は4時半になってしまいました。しかし、今日は昨日にも増して他のクライマーの気配が薄く、そんな安心もあって二俣からの登りもついついビスターリなペース。

それでもなんとかDガリー大滝を目の前にする斜面に着いてみると、壁にとりついているのは1パーティーのみ、昨日我々が登った下部フランケの1ピッチ目にいるだけ(彼らはその後横断バンドからピラミッドフェースに入った模様)。Dガリー大滝周辺は我々の貸し切りで、この天気のよいのにもったいない、というかここまで登攀者が少ないのは北岳に対して失礼ではないでしょうか?

■07:35 Dガリー大滝上 ■09:45-10:05 Dガリー奥壁取付 ■12:30-13:10 終了点

Dガリーを完全にトレースするのならDガリー大滝を登るべきところなのでしょうが、昨日第五尾根支稜から見た大滝は雪に磨かれて意外に悪そうだったので、今日も安直に昨日と同じラインから3ピッチで大滝の上に出ました。ここからはガリー内の登りになるので、ヤマダくんは最初からアプローチシューズのままですし、私もいったん軽登山靴に履き替えました。しかし、ガリー内はところどころ滑りやすいところもあってビブラムソールではそう簡単ではなく、少々苦労しながら緩傾斜帯へ抜けました。右手に昨日登った下部フランケの核心部を見やりながら、我々はDガリーの中央を適当にラインを選んで登っていきます。そのうちちょっと軽登山靴ではためらわれるスラブが出てきたところでクライミングシューズに履き替え、ロープを結んで右上。その上からは傾斜も立ってきて、III級程度の快適な登りが3ピッチほど続きます。下部フランケからDガリーへ継続するバンドはどれだろう?とちらちら右の方を気にしながら登りましたが、途中でヤマダくんがビレイした場所がそうだったのかもしれないと思いつつも、今ひとつ判然としませんでした。

Dガリーの詰めは安定したテラスに出て、そこにはダケカンバの木にスリングが巻かれてあり、また岩に赤ペンキで「4」と書かれていました。高度は、既に八本歯のコルよりずいぶん上です。ここで、行動食をテントに忘れてきたヤマダくんと暑さに溶けかけたスニッカーズを半分ずつ分け合いました。

そして実は、目の前には圧倒的なハングが連続。そのハング下にはピトンも打たれているし、アイゼンがひっかいた跡も見受けられます。これだけ条件が揃えば当然ここがDガリー奥壁の取付だと気がつきそうなものですが、見ればハングの右側の凹角が登路としてはごく自然で、あえて目の前のハングを越えなければならない必然性がわかりません。このため私は「これって右から凹角を登る方が自然。核心部のハングはまだ先なんじゃないの?きっとハングを越えざるを得ない地形がこの上にあるんだよ」とアホな判断をしてしまいました。ヤマダくんはトポの写真と見比べながら「そうかなあ?このハング、写真のまんまですよ」と首をひねっていましたが、礼儀正しい若者であるヤマダくんは年長者の言うことを素直にきいて右から巻き上がっていきました。

……ヤマダくん、ごめんなさい。

〔Dガリー奥壁〕

1ピッチ目(40m+10m/IV+,A0)。ヤマダくんのリード。ハングの右の凹角を登ります。途中で残置ピンが見つかったとヤマダくんから報告があったので「やっぱりこちらが正解だったんだ」と思ったのですが、ずいぶんロープを伸ばした後で再びヤマダくんからかかった声は「……スラブに出ちゃいました」。うぅ、またやってしまった。昨日といい今日といい、明らかにこれは事前の研究不足だよなあ。仕方なく後続すると、凹角を20mほど登ったところからヤマダくんは左手の赤いスラブに乗り移っており、私もスラブのバンドを使ってスラブに入りました。スラブは縦にクラック、横にバンドがところどころ入っており、下部はクラックを右手で引きながらフェース上の細かい凹凸を拾ってダイナミックに登ります。ついで中段はクラックの中に手足を突っ込み痛い思いをしながら登りましたが、ロープ長の関係でヤマダくんは中途半端なところにある残置ピンとカムで支点を作っていたので、その上10mに見えている正規ビレイポイントまで引き続き登ってもらうことにしました。そのためにヤマダくんをビレイしている間、プアーな支点に体重を預ける気にはなれずチムニーの小さなフットホールドに片足で立っている状態で、とにかく足が痛くて仕方なかったのですが、ふと気づいて目の前のクラックに膝を押し込んだらすっと楽になりました。ヤマダくんからコールがかかって後続しましたが、最後の数mはちょっとシビア。指も入らないリスが伸びていて、そこにいかにも「どうぞ私の頭を踏んでください」と言う風情のピトンが3本。本当は左右のフェースの凹凸を拾いながら登るところなのでしょうが、誘惑に負けてピトンを踏んでしまいました。

2ピッチ目(45m/IV+)。私のリード。ヤマダくんがビレイしているところは楽に立てるバンドで、これは右にトラバースすると第四尾根からのラインに合流できるようです。ルートはいったんそちら方向へ数m、バンドの上を歩いてから頭上の城塞ハングに入った顕著なチムニーを目指して易しい草付スラブを登っていきます。そして頭上を2mほどの垂壁に押さえ付けられるところで、城塞ハングのチムニーからそのままスラブを断ち割って下りてきている割れ目を、右のフェース〜チムニー〜左のスラブ上と乗り上がるのですが、ここはちょっと緊張しました。幸い要所に残置ピンがあり助かったのですが、ギアラックにぶら下げたカムを用心深く背中側に移していなかったら、狭いチムニーの途中でひっかかって往生したかもしれません。スラブ上はフリクションで、城塞ハング手前の残置ピンまで。

3ピッチ目(20m/III)。最後はヤマダくんのリード。城塞ハングの巨大チムニーにすっぽり入り、左右の壁のホールドを使って典型的なチムニー登りでずり上がると、左上の斜面の支点へ。ホールドは豊富で途中ドロップニーで安定できるところもあり、簡単です。

あとは、第四尾根の終了点までロープを引きながら歩くだけ。鳳凰三山を背負いながら登ってきたヤマダくんと握手を交わし、ロープを解きました。この第四尾根終了点からは中央稜がすぐ近くに望め、昨日登ったラインを再確認できます。二度の不手際で思い通りの登攀にならなかったのですが、とにかく無事に二日間とも終了点を踏むことができたのは幸運でした。

こちらは前日第四尾根から撮ったDガリー奥壁の写真。この壁のどこを登るんだ?とそのときは思いましたが、実際に登ってみればラインは明瞭でした(ハングを除いて)。

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■14:05 八本歯のコル ■15:35 二俣 ■15:55 白根御池

終了点から、色とりどりの花と雷鳥の家族の姿を愛でながら歩き登山道に出て、北岳山頂には立ち寄らずにそのまま八本歯経由で白根御池を目指します。途中の展望台からはバットレスの全景が見渡せて、下部フランケやDガリー奥壁のラインも再確認できました。しばらく立ち止まってバットレスを見上げ続けましたが、下部フランケはともかく、Dガリー奥壁出だしのハングをはずしたのはやはり残念。ここは、宿題として来年以降に持ち越すことにしましょう。次に登るときは、かつての自由闊達な岳人たちのように、バンドトラバースや懸垂下降を縦横に活用して、ピラミッドフェースからDガリー奥壁へつないでみたいものです。

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2008/08/17

■06:40 白根御池 ■08:15 広河原

この日は下山するだけ。昨日帰幕した頃から夜半にかけて降った雨も朝にはあがり、涼しい空気の中を快調に広河原へと下りました。

バスや乗合いタクシーの時刻まで2時間もありましたが、手近な岩でボルダリングのまねごとなどをしているうちに幸いタクシーに相乗りしてくれる人も見つかり、芦安温泉に移動して汗を流すことができました。そして最後は甲府で、生ビールとヒレカツの大で楽しかった四日間の山旅を締めくくりました。ヤマダくん、お疲れさまでした。私のミスでとんちんかんな北岳バットレスデビューになってしまったかもしれないけれど、これに懲りていなければ、これからもあちこち一緒に登りましょう。