第6回日経日本画大賞展

2015/05/30

上野の森美術館で「第6回日経日本画大賞展」を見ました。「東山魁夷記念」と銘打たれたこの大賞展は2002年の第1回からずっと見てきていますが、今回は2012年の第5回から3年のインターバルで開催されたもの。この10数年の間には出展される絵の傾向に振幅があり、特に2008年の第4回あたりは前衛度が強く前面に出て「ついていけない」と思ったものです。しかし、今回の出展作は日本画ならではの線の楽しみと色の喜びのバランスがとれた作品が多いように感じられ、私としては満足度の高い展示でした。

大賞は岩田壮平《雪月花時最憶君-花泥棒》で、その大画面いっぱいに広がるカラフルな花とその花に埋もれるような自転車に乗る男の姿は会場でも他を圧するインパクトがありましたが、垂らし込みによって氾濫するような色彩は私の感性には合わず、同様に絵の具の溶け合い混じり合う偶然の効果を活かした作品としては、何気ないグラデーションが胡粉の灯火を小さく置かれることで景観が浮かび上がる魔法を見せた荒井経《べろ藍の風景 I・II》の方にずっと惹かれるものを感じました。線描の楽しみを味わうことができた作品としては、蒼野甘夏《ビル風赤松図》が古典的な素材を斬新な構図で見せてくれていますし、画面左から右へ向日葵の盛衰を描く木下めいこ《輝跡》やマッコウクジラ・植物・女性の足が複雑に絡み合って見る者を異次元へ誘う髙橋ゆり《儚くも嘘吹く》には深い思想性を感じます。

また、激しく泡立つ波の下に何者かが怪しく蠢いているかのような武山剛士《龍這波濤》の不気味さ、無数の手のひらサイズのうさぎたちが賑やかに祝祭の雰囲気を醸し出す田中望《大宝市》の東北らしいおおらかなユーモアにそれぞれ目を瞠り、程塚敏明《Departure / Fly away》の幾何学的構成や突き抜けた空間感覚や、逆に南聡《雨雫》のミニマルな雨滴(とりわけ画面右下の蜘蛛の巣の表現!)の細やかさにいずれも長い時間、足を止めました。

ただ、一方で画面の大きさを競うかのような超大作が多かったことは展覧会全体の印象を散漫にしたように思いますし、複数回の入賞者の作品には既視感を拭えないものも少なからずありました。さらに、涼《110036》などは明らかに『Ghost In The Shell』の「人形使い」のモチーフで、それがたとえ古墨や大濱紙といった豪奢な素材面の工夫を伴うものであったとしてもオリジナリティの欠如に対しては疑問符をつけるしかありません。

そうしたもろもろはあっても、「日本画」の地平を広げていこうとする作家たちを顕彰し、紹介しようとするこの展覧会の意義にはこれまでと変わらずに共感を覚えますし、次回が今から楽しみでもあります。

《ビル風赤松図》蒼野甘夏
《36匹の双子の鼠》淺井裕介
《梅 1101》浅見貴子
《べろ藍の風景 I・II》荒井経
《portrait-36》安藤陽子
《雪月花時最憶君-花泥棒》岩田壮平
《departure》岩永てるみ
《香焔 三幅対》及川聡子
  • 《夜居》梶岡俊幸
  • 《Inside》川島優
《輝跡》木下めいこ
《Stride》神彌佐子
《真夏の残像》清野圭一
《儚くも嘘吹く》髙橋ゆり
《0306》高村総二郎
《風ノ門・818》武田州左
《龍這波濤》武山剛士
《Trick》田中武
《大宝市》田中望
《繰り返される呼吸》谷保玲奈
《Departure / Fly away》程塚敏明
《さまよう》堀江栞
《蜜月》町田久美
《転換を繋ぎ合わせる》松井冬子
《刻》マツダジュンイチ
《時の隙間》丸山勉
《雨雫》南聡
《お・で・か・けーちょっと圏外までー》村山春菜
《紅白紅白梅図屏風》山本太郎
《110036》涼