Asia

今年はAsiaのデビュー30周年。これを記念して『XXX』というアルバムも出し、円熟のプログレ演歌を聴かせてくれました。

そして、この新譜を持ってのジャパンツアーは9月24日から4日連続で、渋谷公会堂が2 Days、あとは大阪と名古屋。まあそれにしてもよく働く人たちで、今年、John Wettonは1月にソロ6月にU.K.、Geoff DownesとSteve Howeは4月にYesでそれぞれ来日しており、Carl Palmerは今年はこれが初来日であるものの、来年2月には自身のバンドで来ることになっています。

2012/09/24

定時少し過ぎにぴゅーっと職場を出て、渋谷へ直行。公園通りの坂道で雨に降られ、小走りになって渋谷公会堂へ向かいました。

グッズ売場は長蛇の列になっており、お買い物は終演後にすることにしました。CD販売は別のカウンターで行っており、新譜『XXX』を買うとロゴ入りボールペン&ステッカーをプレゼント、ということになっていましたが、この特典のためにCDをもう一枚買うほど酔狂ではなく、こちらもスルー。

場内に入ると、ステージ上に楽器が並んでいるのが見えました。配置はいつもの通りで、上手側にはGDの9台のキーボードがコの字型に並び、中央手前にはJWの立ち位置(足元に歌詞を映すディスプレイとベースペダル)、中央奥はツーバスのCPのドラムセット、下手にはSHの立ち位置。おやっと思ったのはSHの立ち位置にもマイクがセットされていたことで、彼が歌うとすれば「One Step Closer」以外にありません。BGMはなぜかRushの『Moving Pictures』の曲で、やがて定刻になって着席を促すブザーとアナウンスが入り、そこからしばらくして照明が落ちるとクラシカルな楽曲がかかりました。ブルーの光に包まれて4人が上手から登場すると大歓声があがり、それぞれが定位置についたところでGDのシンセサイザーの美しいメロディから、コンサートがスタート。

Only Time Will Tell
ブラックのZONを抱えたJWのYou're leaving nowという第一声が入ると、周囲から「おぉ!」というどよめきが湧き起こりました。それくらい、JWの声はしっかりと、力強く出ています。大喜びして楽しげに一所懸命手拍子を送る聴衆たち。しかしこの曲、別れの歌なんですけど……。
Wildest Dreams
CPの4カウントからスタート。コーラスのパートは、サンプリングしたものをGDがフットペダルで出していた模様。SHのシングルトーンのギターの音圧が強烈。そしてドラムソロパートでは、期待通りに前のめりにツッコむCP。曲が終わったところで、JWが「コンバンワ!キミタチサイコダヨ!」。そしてニューアルバムの説明をして、次の曲へ。
Face On The Bridge
これぞプログレ演歌、という堂々たる曲。JWもこぶしをきかせているし。『XXX』の中では、はねるようなリズムとそっとささやくようなソロを伴う「Bury Me In Willow」が私はお気に入りなのですが、ライブ向きという点では確かに「Face On The Bridge」に軍配が上がるかも。
Never Again
オリジナルメンバーによる再結成第一作『Phoenix』のオープニング曲。中間部では演奏が空中分解しかける場面がありましたが、そこはベテラン、なんとかこらえてSHのギターソロになだれ込みました。曲が終わったところで、JWとSHが何やらひそひそ、さらにCPも加わって三者会談(何やら段取り違い?があったらしく、曲目を確認し合っていた雰囲気)の後に、CPのキュー。
Time Again
速い!ここで気づきましたが、この曲に限らず彼らの演奏スピードはスタジオ盤とほぼ同じか、むしろ速いくらい。4月のYesが古い曲のテンポをぐっと落としていて、原曲の疾走感や躍動感を損なっていたのとは大違いです。まぁ、その原因がバンドの真ん中後ろでにらみをきかせている某氏にあるであろうことは容易に想像できますが。
Tomorrow The World
イントロの間、さかんにチューニングを気にするSH。キーボードのイントロに続いて入ってくるギターのロングトーンは、恐らくEBOWによる持続音。少々複雑な構成の長い曲で、ライブ演奏としてはまだこなれきっていない感じもありましたが、それでもしっかり聴かせて、最後はかなりアグレッシヴなギターソロで締めくくられました。
Masquerade / In The Course Of The Day (SH Solo)
Maestro of guitarとJWに紹介されて、椅子に座ったSHによるアコースティックギターソロ。前者は、Yesの『Union』に収録されていた美しい曲で、後者は思わず手拍子が湧き上がるリズミカルな曲。
I Know How You Feel / Don't Cry / The Smile Has Left Your Eyes (JW / GD Duo)
続いてGDのキーボードをバックにJWが歌うデュオコーナー。「I Know How You Feel」は『XXX』に収められた曲で、残る二つの曲は『Alpha』からの曲ですが、いずれも恐らく作曲時の姿に近い形での演奏なのでしょう。最後の「The Smile Has Left Your Eyes」では、上手袖からスタッフがベースを渡そうと出てくるとJWが手で制し、デュオでの演奏の後半になって改めてベースを受け取って、そこから全員が揃ってのアウトロが付け加えられるという演出でした。
Holy War〜CP Solo
前作『Omega』から、パワー全開で元気が出てくるこの曲。後半に長いドラムソロが入るのですが、この曲ではなぜかCPが走らずリズムをキープできていました!ということは、「Wildest Dreams」での暴走は確信犯なのか?そして、曲のエンディングからそのままなだれ込んだCPのドラムソロは、ロールの速さで度肝を抜くかと思えばシンバル上にスティックを転がして笑いをとったりと硬軟織り交ぜた、もう彼にしかできないような芸の世界。珍しくWavedrumを用いたメロディックなパートも含めて、最後は両手を突き出してのバスドラ連打に「シャツを脱ぐのか?」と一瞬期待しましたが、さすがにもはやいい歳のCPは、そんな下品なことはしませんでした。全身全霊を打ち込んだソロが終わると、会場はスタンディングオベーション。
An Extraordinary Life
『Phoenix』収録。冒頭のキーボードに重なるアコギのカッティングのストロークが全然リズムに合っていなくてハラハラしましたが、ドラムが入ればなんとか曲の体裁を回復しました。後半のギターソロは盛り返してGood。どうなることかと思った……。
My Own Time (I'll Do What I Want)
この曲、私はライブでは初めて聴いたのですが、これほどライブ映えする曲だとは思いませんでした。スタジオ盤よりはるかにリズムが生き生きとしており、メロディにも思わず口ずさんでしまう魅力があります。ヴォーカルはかなりきつい高音を用いる部分がありますが、JWはそこもファルセットに逃げずにしっかり歌っていて、この曲はこの日の自分にとってのイチオシとなりました。
Open Your Eyes
歌詞の内容の説教臭さと曲のアレンジの荘厳さとがアンバランスなこの曲、しかし好きです。特に、中間部でのギターとシンセサイザーのハモリは何度聴いてもうっとりしますが、真後ろの席の体育会系青年の爆音手拍子が全てを台無しに。若者よ、なんでもかんでも手拍子叩けばいいってものではないぞ。それに、もっとリズム感を鍛えなさい。
Sole Survivour
ここからアンコール。曲名連呼パートでは聴衆もみな一本指立てて合唱。そしてSHの没我のギターソロが長く続きましたが、アイコンタクト一発でちゃんとエンディングに移行するところはベテランの味です。
Heat Of The Moment
いわゆる「鉄板」のこの曲。もはや言うことはありません。最後は毎度の如く聴衆にタイトルを歌わせるサービスコーナーがありましたが、CPのバスドラがテンポを外していて歌いにくい!最後は半音上に転調して、ゴージャスな終曲。

とにかくJWの元気さが目立ったこの日のライブが終わって、上気した感じのお客さんたちは帰路に着きました。私はグッズ売場に向かい、ツアー・パンフレット(2,500円也)と『XXX』記念Tシャツ(3,500円也)を購入。

また散財してしまった……。

2012/09/25

二日目。この日のロビーには、パンフレット売場が別に設けられていました。

昨日の席は中央左寄りでしたが、今日は右端。昨日と同じくRushの曲が流れ、昨日と同じく定刻にブザーが鳴って、昨日と同じ曲で演奏がスタート。

Only Time Will Tell / Wildest Dreams / Face On The Bridge
舞台上のメンバーの衣裳も、JWのブルーのシャツ、SHの赤いシャツ、GDの柄シャツは同じですが、CPは昨日はグレーのシャツで、今日はピンクのシャツでした。そして最初の3曲の流れは、昨日と一緒。はっきり違いがあったと言えるのは、「Wildest Dreams」のドラムソロパートでCPがそれほど走らなかったこと(笑)。また、これは自分の座席の位置によるのかもしれませんが、各楽器の音が昨日よりもきれいに分離していて、特にキーボードの音がひとつひとつクリアに聞こえてきたのが嬉しい違いでした。なお「Face On The Bridge」の中では、ギターソロの最後にJWがCPに合図してギターソロを打ち切るように終曲へ進行させてましたが、SHは「もっとソロを弾き続けたかったのに!」という表情だったように見えました。
Time Again
この演奏は凄かった!怒濤の如く疾走するリズムセクション、複雑に絡み合うギターとキーボード。特にJWはベース演奏中も大きくボディアクションを入れて、明らかに気合の入り方が違いました。この曲の後に「キミタチサイコダヨ!」が出ましたが、いやいや、バンドの方も最高。
Ride Easy
Wetton-Howeの組合せで書かれた曲で「Heat Of The Moment」のB面だったこの曲。リハーサルが不足だったようで、ヴォーカルの入りが遅かったり、中間部のギター・ベース・キーボードによるメロディアスな絡みで各人のリズムがばらばらになったり(もっぱらJWがリズムを見失った模様)。
One Step Closer
SHのメインヴォーカルにJWが上でハモる曲。Yesの曲でもヘタだとか声が出てないとか言われるSHの歌ですが、この曲では二人が対等のヴォーカリストとして仲良く歌うのが聴いていて嬉しくなる佳曲です。終盤のソロでは楽しげに腰を振りながらギターを弾くSHの姿も見られました。
Mood For A Day / Second Initial (SH Solo)
JWにVery capable handsと紹介されたSHのソロコーナーは、Yesの『Fragile』収録の有名な「Mood For A Day」と、彼のお気に入りらしいカントリーっぽい「Second Initial」。このコーナーが終わって立ち上がったSHはマイクで何か話そうとするのですが、聴衆の歓声と拍手がなかなか止まず、ついにキレたフリ(?)をして聴衆の笑いを誘ってから、JWとGDを紹介しました。
I Know How You Feel / Don't Cry / The Smile Has Left Your Eyes (JW / GD Duo)
ここの流れは、昨日とまったく同じ。
Without You
ファーストアルバム『Asia』のプログレッシヴなB面に入っていた、格調の高い曲。スタジオ盤ではストリングス系だったイントロのシンセの分散和音をなぜかローズ系のエレピの音にしていたのが少々違和感があり、その後の演奏も少々ラフな感は否めませんでしたが、とにかく曲がいいので聞き惚れてしまいます。
Cutting It Fine
さらに『Asia』からのこの曲。ヴォーカルに細かいミスはあったものの、かなり質の高い演奏だったと思います。最後のボレロ部分もGDがサンプル音源を駆使しながらきっちり弾いて、その間他のメンバーは暗闇の中に溶けていました。
CP Solo
GDの演奏が終わり暗転したステージからシンバルロールの音がフェードインしてきて、すぐにどかどかとバスドラ連打。あとはまたしてもCPワールドが眼前に展開しました。とにかく、この人のドラムソロはおよそグルーヴという単語とは無関係の世界で、うまいんだかヘタなんだかわからないながらにその手数と豪快なアクションだけで客を惹き付けてしまうのが凄いところです。演奏が終わったところで聴衆はスタンディングオベーション、MCに立ったCPはすっかり息を切らせてしまっていましたが、これだけ聴衆に愛されるドラマーというのも少ないでしょう。
Here Comes The Feeling
『Asia』の最後の曲。これは私のフェイバリットソングで、輝かしいキーボードのリフを聴くと思わず拳を握ってしまいます。聴衆の半分は立ったまま、そしてCPの渾身のソロにカツを入れられたのか、バンドの演奏はぐっと引き締まったものとなっていました。これで、この日だけで『Asia』の全曲を演奏したことになります。
Open Your Eyes
遂に、聴衆総立ち。後半、ギターとシンセのユニゾンフレーズの箇所では珍しくSHが自分の立ち位置を離れてGDにぐっと近づき、二人できれいにユニゾンを決めていたのが印象的でした。この曲の演奏で、長いコーダ部を全力のスネアロールで叩ききったCPはすっかりヘロヘロに……。
Sole Survivour / Heat Of The Moment
アンコールの2曲は、前日と同じ。「Heat Of The Moment」で両手を頭上にかざし嬉々として手拍子を送る聴衆の姿はほとんど阿波踊り状態でしたが、確かにAsiaのライブには、なじみの「○○音頭」で踊るお祭りのノリがある感じがしました。終演後、メンバー4人も満面の笑みをたたえてステージ上を左右に歩き回り聴衆の歓呼の声に応えた後、仲良く肩を組んで別れの挨拶を行いました。

終わってみれば、二日目のセットリストは『Asia』全曲+αという感じの懐メロ大会で、実は私としてはちょっと感心しません。前回のOmegaツアーが選曲も演奏も現役バンドとしての貫禄を示してくれていたのに対して、今回は過去の遺産に依存し過ぎ。初日こそ「An Extraordinary Life」や「Holy War」も演奏されましたが、たとえば『Omega』には「Finger On The Trigger」や「Listen Children」「Light The Way」「I Believe」など個性もありライブにも映えそうな曲があり、『XXX』でもデュオではなくちゃんとしたバンド演奏で「Face On The Bridge」以外の曲を聴かせることができたはずです。それをしなかったのは、もしかするとこの日本での演奏がツアーの出だしで、リハーサルの時間が不足していたからかもしれません。

それでも、繰り返しになりますが、すっかり年相応に落ち着いてしまった演奏を展開したYesに比べると、やんちゃな程にスピード感にこだわった今回のAsiaのライブは、ロックの醍醐味を味わうことができた出色の出来であったと思います。この後、バンドは10月から11月にかけて北米をぐるっと回って、12月が本国イギリスですから、その最終日である12月22日のロンドン公演では、きっとよりバラエティに富み演奏も緊密度を増した、素晴らしいショウが展開されることでしょう。

ミュージシャン

John Wetton Vocals / Bass
Geoff Downes Keyboards / Vocals
Steve Howe Guitar
Carl Palmer Drums

セットリスト

2012/09/24

  1. Only Time Will Tell
  2. Wildest Dreams
  3. Face On The Bridge
  4. Never Again
  5. Time Again
  6. Tomorrow The World
  7. Masquerade / In The Course Of The Day (SH Solo)
  8. I Know How You Feel / Don't Cry / The Smile Has Left Your Eyes (JW / GD Duo)
  9. Holy War〜CP Solo
  10. An Extraordinary Life
  11. My Own Time (I'll Do What I Want)
  12. Open Your Eyes
    -
  13. Sole Survivour
  14. Heat Of The Moment

2012/09/25

  1. Only Time Will Tell
  2. Wildest Dreams
  3. Face On The Bridge
  4. Time Again
  5. Ride Easy
  6. One Step Closer
  7. Mood For A Day / Second Initial (SH Solo)
  8. I Know How You Feel / Don't Cry / The Smile Has Left Your Eyes (JW / GD Duo)
  9. Without You
  10. Cutting It Fine
  11. CP Solo
  12. Here Comes The Feeling
  13. Open Your Eyes
    -
  14. Sole Survivour
  15. Heat Of The Moment