第13回世界バレエフェスティバル

2012/08/03

第13回世界バレエフェスティバルのAプロを、東京文化会館大ホールで観ました。18時開演、終演は22時10分。ちょうどこの日の午後は社外研修があって大手町で早めに仕事から解放されたために、夕食をとってからでも開演に間に合いましたが、そうでなければ同僚たちの目を気にしながらの早引けを余儀なくされるところでした。しかし、開演時刻を遅くすれば遠くからのファンは帰宅ができなくなるし、難しいところではあります。

さて、この日の演目は以下の通り。

演目 ダンサー 振付
「スターズ・アンド・ストライプス」 ヤーナ・サレンコ
ダニール・シムキン
ジョージ・バランシン
「モペイ」 フリーデマン・フォーゲル マルコ・ゲッケ
「幻想『白鳥の湖』のように」第1幕のパ・ド・ドゥ エレーヌ・ブシュ
ティアゴ・ボァディン
ジョン・ノイマイヤー
「ドリーブ組曲」 上野水香
マシュー・ゴールディング
ジョゼ・マルティネス
「扉は必ず…」 オレリー・デュポン
マニュエル・ルグリ
イリ・キリアン
「海賊」 ポリーナ・セミオノワ
イーゴリ・ゼレンスキー
マリウス・プティパ
「セレナータ」 ナターリヤ・オシポワ
イワン・ワシリーエフ
マウロ・ビゴンゼッティ
「瀕死の白鳥」 ウリヤーナ・ロパートキナ ミハイル・フォーキン
「ロミオとジュリエット」第1幕のパ・ド・ドゥ マリア・アイシュヴァルト
マライン・ラドメーカー
ジョン・クランコ
「ジュエルズ」ダイヤモンド アニエス・ルテステュ
ジョゼ・マルティネス
ジョージ・バランシン
「ディスタント・クライズ」 スヴェトラーナ・ザハロワ
アンドレイ・メルクーリエフ
エドワード・リャン
「パガニーニ」 マルセロ・ゴメス マルセロ・ゴメス
「ラ・シルフィード」第2幕より タマラ・ロホ
スティーヴン・マックレー
ヨハン・コボー
「ブレルとバルバラ」 エリザベット・ロス
ジル・ロマン
モーリス・ベジャール
「明るい小川」パ・ド・ドゥ アリーナ・コジョカル
ヨハン・コボー
アレクセイ・ラトマンスキー
「カンタータ」 ディアナ・ヴィシニョーワ
ウラジーミル・マラーホフ
ナチョ・ドゥアト
「オネーギン」第1幕のパ・ド・ドゥ ポリーナ・セミオノワ
フリーデマン・フォーゲル
ジョン・クランコ
「ドン・キホーテ」 オレシア・ノヴィコワ
レオニード・サラファーノフ
マリウス・プティパ

演奏は東京フィルハーモニー交響楽団、指揮者はポール・コネリー氏。おなじみの序曲『戴冠式行進曲』でこのイベントならではの華やいだ雰囲気が盛り上がったところで、以下、各演目に対して一言ずつコメントを。

スターズ・アンド・ストライプス

トランペットの輝かしいソロで幕を開けるスーザの曲に乗って、華やかでコミカル、でもバランシーで優雅さを忘れないダンスが展開。軍服姿のシムキンの溌溂としたジャンプや大胆な回転で、会場はいきなりヒートアップ。

モペイ

上半身はだか、下半身を黒いタイツに包んだフォーゲルが、モノトーンの照明の明暗の中で激しく、しかしユーモアを交えて踊る印象的なソロ作品。最後に光の輪がダンサーに向かって収斂していき、残された光を頭上に向かってフッと吹き消してみせました。

幻想『白鳥の湖』のように

ノイマイヤー版「白鳥の湖」の第1幕ラストのパ・ド・ドゥ。緊迫した男女(狂王とその心を掴もうとする王女)の間の狂おしいほどの感情が、恐るべきスピードで描かれます。特に、男性ダンサーによるサポートの完璧さには目を見張りました。

ドリーブ組曲

久しぶりに見た上野水香さんのすらりと長い手足の動きに、大人の女性の優美さが加わった印象。男女のダンスが重なり合いながら流れるように展開して、素敵な一幕でした。

扉は必ず…

大きなベッド、大きな扉のセット。イリ・キリアンがフラゴナールの絵画「閂」からインスパイアされて、オレリー・デュポンとマニュエル・ルグリという二人のベテランのために振り付けた作品。部屋から逃れようとする者と止めようとする者の葛藤と和解(最後には同じ方向を向いて林檎を分かち合う)が、ゆったりした動きの中にキリアンらしいシビアな身体言語を散りばめて描かれます。この作品は、とりわけ大きな拍手を集めました。

海賊

メドーラとアリのパ・ド・ドゥ。セミオノワのグラン・フェッテは最初に3回転を見せて、あとは1-1-2回転。とにかく堂々たるトラディショナルな技の応酬でした。

セレナータ

これは凄かった!南イタリアを舞台に、バンドネオンの音に乗って若い男女のほとんど喧嘩のような緊迫したダンスの連続。情熱的でかつ技巧的、身体能力の全てを使い尽くして、最後に倒れ込んだ二人の荒い息づかいが聞こえる中、暗転。感動しました。

瀕死の白鳥

幽玄の世界ですな……。

ロミオとジュリエット

シュツットガルトコンビによる、バルコニーの場面。サポートされて回転しながらふわっと片足を折って身体を沈める動きや流れるような自然なフィッシュで、ジュリエットの可憐さが際立っていました。

ジュエルズ

ひたすらノーブル。大人のバレエ。

ディスタント・クライズ

無音の中で、スヴェトラーナ・ザハロワが自分を平手打ちするマイムから、やがてオーボエを中心とする音楽が入り、後方の闇の中から現れた男性を伴って二人で踊り続けた後、男性は再び闇の中へ、そして女性は冒頭のマイムへ回帰。男性は、女性の病んだ心の中の幻だったのか?

パガニーニ

これは会場が湧きました。肉体むきむきのマルセロ・ゴメスと、超絶技巧を惜しげもなく披露するヴァイオリニスト、チャールズ・ヤンの一騎打ち。もう一度見て(聴いて)みたい。

ラ・シルフィード

シルフィードとジェイムズとの、戯れるような明るいパ・ド・ドゥ。アントルシャの連続に片鱗を見せましたが、マックレーの実力はこんなものではないはず……という意味で、ちょっと残念だった演目。

ブレルとバルバラ

ジャック・ブレルとバルバラのシャンソンを用いたベジャール作品。何より、ジル・ロマンがまったく衰えを知らないキレのあるダンスを見せてくれたことに感激しました。

明るい小川

はいはい、このカップルはいつまでも幸せでいて下さい(笑)という感じの演目。一瞬でのスムーズなリフト、ためらいのないダイナミックなダイヴなど、パートナーに全幅の信頼を寄せていることがはっきりわかります。

カンタータ

マラーホフ、そのタンクトップに短パン姿は避けてほしかった……。しかし、彼ほどのベテランになっても、世界初演の演目を持ってくる向上心はさすがです。

オネーギン

手紙をしたためるうちに眠りに落ちたタチヤーナが、夢の中で鏡の向こうから現れたオネーギンと踊る場面。セミオノワのこの日2作目の出演で、コンセプトとしては思い切り「薔薇の精」ですが、片足を支えられてすっくと立ち上がるリフトの高さに、可愛らしさだけではない主人公の芯の強さを垣間見せました。

ドン・キホーテ

締めくくりは、やはりこれ。キトリのグラン・フェッテの安定感もさることながら、バジルのソロでの高いジャンプと力強い回転、アダージョでのとりわけ大きなグランド・ピルエットなど、意欲的なダンスに拍手喝采。

最後は、これもおなじみ『眠れる森の美女』からアポテオーズを聞きながら、ダンサーたちが次々に舞台に現れて喝采を浴び、フィナーレを迎えました。3年に一度のこのフェスティバルを、私は長年にわたって見続けていますが、今年はとりわけ充実した内容であったと思います。新旧それぞれの世代のスターが力量を発揮したこのフェスティバル、3年後の第14回はどういう顔ぶれになるのか(さすがに次はないだろう……という予想がつくダンサーもチラホラ)今から楽しみです。