U.K.

2011年4月にEddie JobsonとJohn WettonがU.K.名義で来日したとき、たとえそこにBill BrufordやAllan Holdsworthがいなくても十分に狂喜したのに、わずか一年後に今度はオリジナルメンバーでの来日。ただしBillとAllanが袂を分かった後のドラマーであるTerry Bozzioとのトリオ編成です。

ここ5年ほどをとっても、この3人のライブには比較的頻繁に参戦していたのですが、それぞれ違う企画での来日ばかりで、3人のうちの二人が同じステージに立った姿をようやく見たのが、上述のとおり昨年4月のこと。

そして、遂に実現した今回のトリオ編成こそ1979年の来日時の組合せであり、33年前のあの感動の再現です。当然、チケット争奪は熾烈を極めるわけで、最初にアナウンスされた6月15〜17日の3Daysは涙なくしては語れない奮闘の末にゲット。そのあまりの人気の高さにまず6月14日、ついで6月21日の公演が追加され、いずれも辛うじてチケットを入手することができました。今回のジャパンツアーは結局東京5日&大阪1日の6ステージとなったのですが、そのうち東京5日を総なめということになります。しかし、こんなに人気を呼ぶなら、もっと大きなハコでやってくれればよかったのに……。

2012/06/14

定時と共に仕事を終えて、そそくさと川崎へGO。もう通い慣れた感のあるクラブチッタに着いたときには小さな行列ができていましたが、スムーズに入場できました。

グッズ売場では、プログラム、色違いのTシャツ2種類、同じくタオル2種類。ロゴや色遣いは、3人の初来日時のライブ盤である『Night After Night』のジャケットをイメージしたものです。私は、プログラムとTシャツ2枚を購入しました。

CDとDVDの売場では、購入1点につきバッジひとつを進呈中。ま、これはいいかなという感じ。

場内に入ったときのBGMは、Pink Floydの「Comfortably Numb」。ステージには幕が下りていて、機材は姿を現していません。そこから数曲がかかって、定刻の19時半を15分ほど過ぎたところで、照明が落ちるとともに重低音が響き始めました。幕が上がり、ブルーのライトがステージ奥から正面を妖しく照らすと、大歓声の中を下手からEddie Jobsonが登場し、キーボードでさらに大音量の重低音を重ねました。この日の私の席は、ステージに向かって左寄りのN列7番。Eddieのキーボードの正面にあたります。

Alaska
極北のオーロラのような高音のポルタメントフレーズの間を埋め尽くす、強烈な重低音。ビリビリとした震動が、比喩ではなく本当の風のように正面から吹き付けてきて、吐き気を催すほど。そしてTerry Bozzioが銅鑼で参加し、さらに下手からJohn Wettonも登場してステージに3人が揃ったところで、Eddieのカウントでリズムが始まると、それまで暗かった舞台上が明るく照らし出されました。ダークなベストの上にジャケットを着てサングラス姿のEddieは、例によって(恐らく)Infinite Response Vax77を二段重ね。襟の小さな黒いシャツ姿のJohnのベースは、昨年のU.K.公演や今年のソロで使ったGibson VictoryベースではなくZON Legacy Elite Blackで、足元にはベースペダルはなし。そして、これまた黒いノースリーブのスポーティーな姿のTerry Bozzioのドラムセットは、まさかの要塞フルセットでした(日本には彼のセットが常時備蓄されているという話を聞いたことがあります)。EddieもJohnも比較的淡々とした表情で演奏しているのですが、Terryはひっぱたくシンバルの方に必ず顔を向ける独特の動きで、最初からエンジン全開という感じです。
Night After Night
「Alaska」から間髪入れずに、今回のツアーのテーマ曲とも言うべきこの曲。イントロや中間の速いパッセージからピアノのリフに入るところで1オクターブ上がってしまっていたり、微妙にリズムに乱れがあったりと万全の演奏ではありませんでしたが、とにもかくにもありがとうと言いたくなる曲。オルガンソロはライブ盤をほぼ再現したものでしたが、レスリー効果までは出せていなかったようです。
Nothing To Lose
Eddieのカウントでスタート(この曲に限らず、キュー出しは全てEddieが行っていました)。EddieもTerryもコーラスに参加してくれないので、ヴォーカルパートはJohnが孤軍奮闘で、最高音部にはファルセットも用いて頑張っていました。前半を終えてからリズムセクションがマーチ風につないでいる間に下手の袖でブルーのヴァイオリンを受け取ったEddieによるヴァイオリンソロは、これも『Night After Night』通り。

ここでEddieが前に出てきてMC。33年間も待ち続けたこのラインナップで再び演奏できて嬉しい、このラインナップでのリユニオンのアイデアはポーランドでのUltimate Zero ProjectのときにU.K.の三十周年として生まれたものだ、といった趣旨の話があって、次の曲。

Thirty Years
美しいストリング音にTerryのフリーなシンバルワークが重なり、Johnの情感のこもったヴォーカル……とうっとり聴いていたのですが、おかしいな。歌詞を忘れることにかけては定評のあるJohnがこの日はいつものように足元のモニターを見る仕種を見せていません。実はマイクの左前、ベースのネックに目を落とすとそのすぐ先にくる位置に小振りのパッドがスタンドで設置されていて、Johnはそこで歌詞を見ながら歌っていたようです。ヴォーカルパートが終わってからのシンセソロは、多少メロディラインを見失いかけた部分もありましたが、流麗なものでした。最後は、Eddieが全ての音をつかみとるように右手を宙に泳がせて終曲。
Rendezvous 6:02
Johnのヴォーカルは、だんだん調子が上がってきた様子。この曲でも、ピアノの美しいアルペジオにTerryが多彩で繊細なシンバルワークで参加しました。中間の太いシンセソロも迫力がありましたが、もう少し音量レベルを上げてもよかったかも。
Carrying No Cross
昨年の4人U.K.公演で鬼門となった曲。そのときは冒頭の抒情的なヴォーカルパートでJohnがリズムをつかみきれず、タイミングをはずすことが続いた曲だったのですが、この日は完璧です。そしてフロアタムの連打から始まるインストパートの演奏は、Eddieの集中力もTerryのパワーとスピードも最高レベルで発揮されて、鳥肌ものの迫力でした。特に、極限まで音符を詰め込んでくる渾身のオルガンソロと、インストパート最後のエコーがかかったスネアの破壊力は圧倒的!この演奏が聴けただけでも、この日足を運んだ甲斐があったと言えるくらい。

そして、ここで出ました!Johnの「キミタチサイコダヨ」。さらにJohnから「Very capable hands and amazing, Mr. Jobson」と紹介されて、Eddieのソロコーナー。

Keyboards & Violin Solo
両手を組み合わせた繊細なピアノの高速フレーズから「Prelude」や「Theme Of Secrets」を引用して「Nostalgia」からヴァイオリンソロへ。ヴァイオリンはディストーションを効かせたりパーカッシヴに叩いたりと多彩ではありましたが、12分ほども続いたEddieのパフォーマンスは、正直に言って冗長という感を免れませんでした。
Drum Solo
続いてTerry Bozzioのソロ。背後の小物打楽器群をキャラキャラと鳴らし、ガムラン風の音をメロディアスに奏でたりした後にメロディックタムへと移り、やがて正面を向いて徐々にヒートアップ。彼の最新教則DVDに収められたソロでいうと「C Lydian」と「Boogaloo」をつないだような感じですが、もっと即興性があり、もっとパワフルで熱いもの。力強いトリプレットのバスドラパターンを右足だけでキックし、左足はハイハットでリズムをキープした上で、両手が自由なリズムでオスティナートを叩く場面もあって、そのめくるめくようなリズム感とテクニックと音圧とに、つまりTerryが出す音の全てに圧倒されました。こちらも12分ほど。
As Long As You Want Me Here
上手からキーボードが一台引き出されてきて、おっ、北米ツアーで歌われたKing Crimsonの「Fallen Angel」かな?それにしてはEddie用のマイクがないけど(北米ツアーではEddieもコーラスを披露していました)……と思ったら、EddieがMCで1979年のライブレコーディングに向けマテリアルを増やすため作曲した二つの曲のうちのひとつだと紹介したのが、この曲(もう一つはもちろん「Night After Night」)です。ノリノリのヴォーカルと端正なピアノの組合せは意外に良くて、今回のライブの中で異色ながらハイライトのひとつとなりました。
Danger Money
上手のキーボードが引っ込むまで間の悪い時間があって、Eddieのカウントからいきなり爆音で始まったのが「Danger Money」。イントロの重い白玉パターンからいったんブレイクし、オルガンのグリッサンドで主題部へ。タイトルを連呼するところでJohnは、高音になる部分は潔く歌うのを諦めてベース演奏に専念していましたが、これは正解でしょう。オルガンが8分音符で刻む後ろで怪しげなメロディを奏でる倍音だらけの低音はEddieがシンセで出し、そこにTerryもシンバルで参戦。さらにこのあたりからTerryが一段とヒートアップしてきた感じで、スネアやシンバルの高速連打が随所に見られるようになってきます。そうしているうちにスタッフが上手から出てきて何やら取り上げたのですが、見ればそれはバスドラでした。どうやらあまりのキックのパワーに、正面から向かって左寄りの最大口径のバスドラが吹っ飛んだようです。恐ろしい……。そしてメインパートが終了し、アウトロの白玉パートに入ったときのTerryのスネアのフラム打ちの音量!エコーも効かせてもの凄い存在感で会場を圧倒していました。
In The Dead Of Night
U.K.の代表曲で、これまでJohnのソロ公演などで何度も聴いていますが、Terryのアグレッシヴなドラミングのおかげで、非常に新鮮。Johnのヴォーカルも絶好調になり、Eddieのシンセソロも弾き倒し系の音数の多いもの。まさに堂々たる演奏でした。
By The Light Of Day
シーケンスパターンの後ろでTerryがスポークでリズムを刻みつつシンバルで色をつけて、Johnのしみじみ系ヴォーカル。途中から、これまた抒情的なヴァイオリンが入って原曲の雰囲気がきれいに再現されました。最後にあのCS80の音色のレガートなストリングスが鳴り響き、やがてTerryのドラムが割って入って……。
Presto Vivace & Reprise
高速キーボードソロは、ワンコーラスだけながら完璧な演奏!そして「In The Dead Of Night」の主題部に戻って、Eddieがキャラキャラと弾くアルペジオをバックにTerryが速射砲のようなドラミングを展開して、大団円。

U.K.コールと手拍子の中に再び姿を現した3人。Eddieの手には、この日初めて登場するクリスタルのヴァイオリンが握られており、そのままJohnの近くに立って「1,2,3,4,...」とカウントしてアンコール1曲目。

Caesar's Palace Blues
この演奏は凄かった!突き刺すような音色のヴァイオリンと破壊力抜群のドラム(特にバスドラ)が音量とスピードを競い合うような展開になり、非常にスリリングでした。
The Only Thing She Needs
この日のラストナンバー。どかどかと本家Terryの変態ドラムが入って、カコカコとしたオルガンのパターンからベースとシンセの掛け合い。ヒートアップしたTerryが走り気味になってきたところで、Johnのヴォーカルがリズムを引き締め直しました。ところが、中間のカコカコフレーズから通常のリズムパターンに入るタイミングをTerryが間違えてワンコーラス早く入ってしまい、Terryはしまったという顔。Johnは「あらら」という顔で舌を出し、Eddieも苦笑していました。そのミスを帳消しにするかのように、後半のピアノアルペジオからグリーンのヴァイオリンによるソロ、さらに高速オルガンソロでのドラミングは強力で、随所にバスドラが32分音符の連打を入れたりスネアロールとシンバル連打の間を高速移動したり。まさに、渾身の演奏でこの日の2時間ほどの演奏を締めくくりました。

最後に、ステージ中央に立ったJohnがEddieににこやかに何やら話しかけているところへ、ドラムセットを出てきたTerryが抱きつくように合流して、終演のお辞儀。本当に仲の良さそうな3人の姿を見て、こちらも目頭が熱くなってきました。33年間のわだかまりは、すっかり溶けたということなのでしょうか。

ともあれ、楽器演奏に関しては想像を遥かに超えるレベルのパフォーマンスが見られ、ヴォーカルも好調なところを見せてくれて、翌日以降のライブ連戦に期待が高まってきました。

2012/06/15

デジャヴのごとく、今日もクラブチッタ。変化があったと言えば、グッズ売場の配置が変わっていたことくらいでしょうか。

この日の座席は、L列17番でほぼど真ん中。ステージ上は、前日と同様の構成で曲が展開していきます。以下、ポイントだけ記述すると次のとおり。

  • Night After Night:ヴォーカルの音量レベルが低く、Johnは曲を終えた後に自分の口を指差してからその指を上に突き上げて、レベルを上げてくれと要求していました。演奏自体は文句なく、昨日のようなキーボードのオクターブ間違いもありませんでした。
  • Nothing To Lose:昨日吹っ飛んだバスドラが、この日もキックのたびにぐらぐら。こちらはハラハラしながら見守りましたが、結局最後までもってくれました。
  • Rendezvous 6:02:この日もいい演奏だったのですが、最後のピアノアルペジオの音色がセレクトミス……というより、次の「Carrying No Cross」の冒頭の音色に先走ってしまったようです。演奏終了後、やれやれという表情で下手袖のスタッフに何ごとか語りかけるEddie。しかし、プログラムの切り替えはEddie自身がフットスイッチで行っているはず。
  • Carrying No Cross:最初のヴォーカルパートが終わり、マーチ風のリズムからピアノのパターンが続く中に、1音だけソロの音色が混じったり、ソロに入るところで音色のセレクトをし直したりといったオペレーション上のミスあり。2台のキーボードに場面に応じて複雑に音色をアサインしている上に、スプリットポイントもフロートしていたりするから、Eddieはたいへんです。
  • Keyboards & Violin Solo:冒頭のピアノソロは、昨日の繊細なアルペジオとは異なり、跳ねるようなリズムを持つ元気のいい曲から入りました。そして、「Theme Of Secrets」のビー玉音からは概ね昨日と同じ。ヴァイオリンソロは、ボウの毛を激しく切りながらの熱演でしたが、やはり長過ぎる感じ。
  • As Long As You Want Me Here:上手から引き出されてきたキーボードから音が出ない?下手のスタッフを見やって様子を見ていたEddieが、下手側の自分のブースに戻ってそこのキーボードを操作しピアノ音を出すと、Johnが上手キーボードを触って音が出ることを確かめるというちょっとコミカルな場面があって、会場がなごやかな雰囲気に。上手側キーボードもブースのキーボードと同じ音源(Macのソフトシンセ)にMIDI接続されているはずなので、片方が出ればもう片方も出るはず、ということなのでしょう。
  • Caesar's Palace Blues:この日も素晴らしいパフォーマンスで、演奏終了後にEddieがボウをくるくると回して聴衆を煽っていました。
  • The Only Thing She Needs:Terryはまたしても同じところで間違えました(笑)。ただし、昨日はオルガンのカコカコというのが4コーラスあるべきところを3コーラス終えたところで突っ込んでしまったのですが、この日は逆に4コーラスを終えてオルガンのパターンが変わっても本来のリズムパターンに戻らなかったというもの。とは言うものの、そこから先がこれまた凄い演奏!Eddie自身、相当に気合が入ったようで、ピアノ演奏はかなりフリーに弾きまくるわ、ヴァイオリンソロはギンギンだわ。そして高速オルガンソロを完璧に弾ききった瞬間、さっと聴衆を見たEddie Jobsonのドヤ顔!見ているこちらも感動しました。

それにしても、この日もTerryは八面六臂の活躍でした。「Terry Bozzioワンマンショーだな!」「かっこいい!」という声が、帰路につく客たちの中から聞こえていましたが、ワンマンショーは言い過ぎにしても、原曲に対して一番自由なアプローチをしていたのがTerryであるのは確かです。間違いなく、33年前のパフォーマンスを凌駕する演奏能力を示してくれた、恐るべき還暦。

2012/06/16

この日の座席はO列1番で、つまり一番左端。Eddieの手元が見えるようにと、チケット購入時にあえてこの位置を選んだのですが、それが目的なら二階席をゲットするという選択肢もあったかもしれません。少し早めに会場入りしたところ、難波弘之さんらしき人を見かけましたが、恐らく今回のツアーでは多くのプロミュージシャンが客席に顔を覗かせているに違いありません。

  • Alaska:重低音から本格的な演奏に入る前に、Eddieが下手袖からスタッフを呼んで何やら作業をさせていました。たぶん、手元や足元を照らす小さい照明が点灯していなかったのだと思われますが、いろいろなことがあるものです。そして、この日初めて気づいたのですが、Eddieの左手側にも小さなモニターが設置されていました。これは、鍵盤への音色のアサイン状況を示すものなのでしょう。
  • Night After Night:おっ、今日はヴォーカルの音量が大きく、いいバランスだぞ?実際、この日のPAはいい仕事をしていて、普通のバンドなら6人前に相当するような楽器群の音の中でも、Johnのヴォーカルの説得力はピカイチでした。
  • Nothing To Lose:ヴァイオリンソロで、音が出ないトラブルあり。Eddieは気にせず(?)弾き続け、ソロの最後にやっと音が出るようになりました。その間、リズムセクションの二人で音をつなぎ続けたのですが、本当にライブは生き物。しかし、この日のトラブルは実はここまでで、以後、終演まで完璧なアンサンブルによる圧倒的な演奏が続くことになります。
  • Rendezvous 6:02:John Wetton、絶好調。ヴォーカルもいいし、ベースも細かいフレーズを手元も見ずに次々に絡めてきます。
  • Carrying No Cross:これも素晴らしい出来でした。この曲が終わった後にお約束の「キミタチサイコダヨ」を繰り出したJohnが、続いてソロを展開するEddieとTerryを「Two incredible gentlemen」と紹介すると、上手の袖近くに腕を組んで立っていたEddieが首を振りながら「いやいや君も」と余裕の仕種を見せていたのが笑えました。
  • Keyboards & Violin Solo:この日はヴァイオリンのソロから入り、「Prelude」の間奏部からピアノに戻って、最後は二日目のソロコーナーの冒頭に弾いたリズミカルな曲に再び「Prelude」をつなげて終わる構成。これは引き締まった、よいソロでした。
  • Drum Solo:初日及び二日目と若干構成が変わっており、冒頭のドラの演奏が長く、また中間部では下手側(Terryにとっては右手側)のファンキーな音色のシンバル群を多用していました。それにしても、相変わらずバスドラが凄い音圧。
  • As Long As You Want Me Here:上手から引き出されてきたキーボードを見て音が出るかどうか確かめ、満面の笑みでOKサインをスタッフに送るJohn。
  • Presto Vivace & Reprise:最後の高速アルペジオのパートで、リズムキープはEddieに任せたとばかりに、これでもかと音数を詰め込んでくるTerryに、聴衆の中から「うわー、すげー」の声。
  • The Only Thing She Needs:今日のTerryは、本来の構成をきちんと把握していました。しかしプレイ自体は完全にブレーキが壊れた状態で、どんどんタムやシンバルのフィルを入れてくるTerryと、彼に煽られるかのように熱いプレイを展開するEddieの一騎打ち。それでも曲のアンサンブルが成り立っているのが、このバンドの不思議なところです。

機材トラブルはあったものの、この日のパフォーマンスはあらゆる意味で三日間のベストでした。最初に日程がアナウンスされたときは、そんなに喉がもつのか?とJohnのヴォーカルのコンディションを心配したのですが、今のところまったく問題なし。さて、四日目はどうでしょうか。

2012/06/17

この日は17時開演なので、前日より1時間早くチッタへ。もはや、日課と化していますね。で、チッタに入るときには500円のドリンク券を購入しなければならないのですが、今月は断酒月間にしているので、毎回コーラを飲んでいます。このコーラのカップ、氷を入れたままゴミ箱に捨ててもいいものなのかどうか、ちょっと心配(←小心者)。

この日の座席は、K列22番。Terryの正面ということになりますが、座ってみると意外にも対角線上に位置するEddieの動きがよく見える場所でした。

  • Night After Night:なんでもないピアノのリズミカルなコード弾きのところで素っ頓狂な音が入ったり、高速アルペジオがちょっともたったり、オルガンソロのバックのパッド音の音量が大きすぎたりとEddieに細かい問題はあるものの、昨日に引き続いて堂々たる演奏。一番心配していたのは四日連続で歌うJohnの喉のコンディションだったのですが、どうやら問題がないどころか、昨日に引き続いて好調を持続しているようです。
  • Nothing To Lose:この曲でもEddieがイマイチ乗り切れず、ヴォーカルの背後で奏でられるべき高音の単音フレーズが思うように出し切れません。ヴァイオリンソロも音程が不安定でしたが、とにかく今日は問題なく音が出てくれて、客席は大喜びで手拍子。この曲が終わった後に、Johnが「ドモ、コンバンワ!」、Eddieは1979年以来であることに言及し「Sorry to keep you waiting so long.」と言った後に「でも何人かは夕べもいただろうけど」と付け加えて笑いをとっていました。そして、ポーランドでU.K.のリユニオンを決めてから3年、とうとうMr. Bozzioがジョインしてくれたことを喜んでいるとEddieが話すと、会場から大歓声が湧き上がりました。
  • Thirty Years:こうして改めて聴くと、しみじみいい曲だな。Eddieがシンセソロの際に、右足のペダルで大胆にベンディングしているのがよく見えました。また、音色の切り替えは主として左足で行っていたようです。それくらいはスタッフに委ねても、バチは当たらないと思うんですが……。
  • Rendezvous 6:02:この曲ではJohnのヴォーカルもベースも気分よく歌っていました。やっぱりJohnのベースは最高です。
  • Carrying No Cross:中間部のシンセソロからオルガンソロに移ったあたりでEddieがビートを見失いかけた感があり、即興のメロディで修正する場面がありましたが、全体を通してはスリリングな演奏。確かに、あれだけドラムスが好き勝手に音を詰め込んでくると、他のメンバーはリズムを自己責任でキープするしかなさそうです。
  • Keyboards & Violin Solo:この日もヴァイオリンのソロから入り、キーボードソロの中ではピアノ音だけでなくパッド系も多用していました。
  • Drum Solo:Terryの左側のセットでは、民族音楽風なリズムパターンを両足で出して両手はメロタムでオスティナート。正面のセットに移ってからの足によるトリプレットは、なんだかお囃子を聴いているような気がしてきました。
  • As Long As You Want Me Here:歌い出す前に「コーラスよろしく」と客席に要求するJohn。蚊の鳴くような声でこれに応える聴衆。
  • In The Dead Of Night:冒頭の左手パターンを引っぱりながら、手拍子を促すEddie。ところがTerryはそうなるとは思わずいつものタイミングでメインリフに入るつもりで高音のシンバルを叩きだしたので、次の瞬間に「あれっ?」という苦笑いのような顔でEddieを見やっていました。歌詞の2番に入る直前の間奏部ではベースが意欲的なオブリガートを入れ、シンセソロも鍵盤を広範囲に使う相当に刺激的な即興演奏を聴かせてくれてこれは凄いと思ったのですが、続く「By The Light Of The Day」に入る直前の高速アルペジオをEddie一人が長く引っ張りすぎるミスが見られました。しかし、すぐに立て直してなんとか「By The Light Of The Day」へなだれこみ、最終的には感動の「Presto Vivace & Reprise」へ。
  • Caesar's Palace Blues / The Only Thing She Needs:今日もアンコールの2曲は超高速かつパワフルな素晴らしい出来映えで、EddieもJohnも気合十分、会場も興奮の坩堝になりました。「Caesar's Palace Blues」は大合唱、その後のヴァイオリンソロは圧巻。「The Only Thing She Needs」のTerryにとっての鬼門ポイントでTerryがEddieをチラ見してタイミングを確認していたのには笑いましたが、最後にはいつ血管が切れてもおかしくないくらいのTerryの激しいドラミングの嵐に何もかも飲み込まれていきました。

アンコールの2曲は出色の出来でしたが、そこまでの間にEddieが少し集中力を欠いているように見える場面が散見されたのは、連日の演奏でやはり疲れているのかな?なにしろ、Eddie57歳、John63歳、Terry61歳。とは言え、この年齢でこの演奏は、あり得ない……。さて、ここまでの四日間を評価してみると、ステージ上の演奏は三日目が緊張感に満ちて(ヴァイオリンのトラブルを差し引いても)最高でしたが、客席のノリは今日がベスト。21日の最終日は、その両方がかみ合って有終の美を飾る素晴らしいショウになることを期待しています。

2012/06/21

久しぶり(?)のクラブチッタ。U.K.は19日に大阪公演(@なんばHatch)を終えて東京に戻っており、この日が日本での最後の演奏ということになります。

この日はQ列9番のチケットを入手してあったのですが、最後くらいは最初から立って観戦したいと思い、反対の上手側の立見エリアに立ちました。

  • Alaska:おっ、Terryのスネアの音が、多少スナッピーの効いたスネアらしい音になっているぞ?
  • Night After Night:ヴォーカルの音量レベルが少々低め。そのかわり、オルガンソロのバックでのベースのオブリガートは派手でした。そしてこの曲が終わった後、これまではそのまま「Nothing To Lose」へ移っていたのですが、この日はEddieとJohnが何やら会話を交わした後にEddieが前に出てきて、MCを始めました。曰く、「これが、このトリオでのTerryとの最後の演奏。Terry、ジョインしてくれてありがとう」。ついでEddieは、客席後方のミキサー卓にいるスタッフと舞台下手袖でキーボードとヴァイオリンのサウンドを担当しているエンジニアにも感謝の言葉を述べ、さらに世界中を回っているファンの何人かを紹介してから、30周年→「Thirty Years」の演奏をアナウンス。
  • Keyboards & Violin Solo:この日はキーボードからヴァイオリンへという流れでしたが、ピアノ演奏ではKeith Emersonばりの左手のパターンの上で右手が自在に動くパートがありましたし、ヴァイオリン演奏の方も比較的引き締まった構成になっており、最後は「Memories Of Vienna」のビー玉音一発で締めくくられて、このソロにはこれまでのような冗長感はあまり感じませんでした。ただ、私と同様に何日も参戦しているらしい客が何人も、このコーナーに入るとぞろぞろと外に出てしまったのは残念。ミュージシャンに対するリスペクトの気持ちを持たない客がいるというのは、悲しいことです。
  • Drum Solo:これまでにも増して、メロディアスなソロ。両足でベースのリフを作り、上半身はフリーにオスティナートという構成も2パターン演奏されて、Terryの驚異的なリズム感覚をあらためて目の当たりにしました。
  • Drum Soloの後に上手からキーボードが引き出されてきて、ここで例によって「As Long As You Want Me Here」かなと思っていたら、EddieがMC。この日の昼に誰かから「今日は何かサプライズはないのか?」と聞かれて「No」。いやいやこれは冗談、といったところでJohnがMCを引き取って、NYCで演奏したKing Crimsonナンバーだと紹介したのが、「Fallen Angel」でした。名盤『Red』に収められたこの曲は、King Crimsonの曲の中でもとりわけお気に入りで、これをJohnの味わい深いヴォーカルで聴ける日が来るとは、夢にも思っていませんでした。John自身も、いかにも思い入れ深く歌っていましたし、しかもEddieのコーラス付き。なんだEddie、ちゃんと歌えるんだったら、他の曲でもコーラスを付ければいいのに。
  • In The Dead Of Night:途中、リズムパターンが変わるところでビートを見失うTerry。だ、大丈夫か?と思いながら図らずもスリップビートになってしまったTerryのドラミングを聴いていたら、かなり強引な回帰の仕方を見せてくれました。さすがは百戦錬磨。一方Eddieのシンセソロは、鍵盤をひときわ広く使うダイナミックかつスピーディーなものになっていました。
  • Presto Vivace & Reprise:Eddieによる見せ場の高速ソロに入るところで、音色の切り替えが遅れてしまいました。ちょっと残念……。
  • Nothing To Lose / Caesar's Palace Blues / The Only Thing She Needs:アンコールの3曲は、これまでにも増して素晴らしいものでした。「Nothing To Lose」の高音部でJohnはこれまでのようなファルセットを使わない男らしい頑張りを示してくれましたし、演奏レベルという点でも、3人の演奏(ヴォーカルを含む)が拮抗して完璧なアンサンブルが実現し、聴衆を圧倒し尽くした感があります。これだけ血沸き肉踊る系のライブは、ちょっと記憶にありません。

大歓声の内に、演奏終了。Johnはサムピックを客席に投げ入れ、Terryは深々とお辞儀をし、Eddieは「See you next time.」という言葉を残して、ステージを去っていきました。

こうして東京での5公演を振り返ってみると、ステージとしての完成度は(ヴァイオリンの音が出ないトラブルがあったとしても)3日目が最高。しかし、トリオが一体となって燃焼し尽くした最終日のアンコールもまた、素晴らしい出来でした。

実は最初、UKのオリジナルトリオでの来日がアナウンスされたとき、もちろん嬉しくはあるものの「所詮懐メロ?」と懐疑的な部分もあったのですが、これは二重の意味で間違っていたことが、実際に彼らのステージに接して理解されました。第一に、U.K.のナンバーは究極のテクニックとエナジーが無ければそもそも演奏不可能であるということ。第二に、彼らはいずれも高いミュージシャンシップを持つ現役のアーティストであり、しかもオリジナルメンバーだからこそ、自分たちの曲に自由に新しい命を吹き込めるのだということ。ネット上でのさまざまな記事を見ても、多くの意見が「いいライブだった」ではなく「凄いライブだった!」であったことが、これら二点を証明しています。昨年の4人U.K.はもとより、33年前の彼ら自身のパフォーマンスをも凌駕する真のU.K.の実力に、私自身も震えのくるほどの感動を覚えました。

さて、Eddie Jobsonは最後に「See you next time.」と言ってくれましたが、Johnがインタビューで語っているようにこのトリオでの演奏は恐らくもうない(This isn’t going to happen again)のでしょう。だとすればEddieは、どういうプロジェクトを組んで再び日本に来てくれるのでしょうか?

ミュージシャン

Eddie Jobson Keyboards / Violin
John Wetton Bass / Vocals
Terry Bozzio Drums

セットリスト

2012/06/14-17

  1. Alaska
  2. Night After Night
  3. Nothing To Lose
  4. Thirty Years
  5. Rendezvous 6:02
  6. Carrying No Cross
  7. Keyboards & Violin Solo
  8. Drum Solo
  9. As Long As You Want Me Here (Piano & Voice Version)
  10. Danger Money
  11. In The Dead Of Night
  12. By The Light Of Day
  13. Presto Vivace & Reprise
    -
  14. Caesar's Palace Blues
  15. The Only Thing She Needs

2012/06/21

  1. Alaska
  2. Night After Night
  3. Thirty Years
  4. Rendezvous 6:02
  5. Carrying No Cross
  6. Keyboards & Violin Solo
  7. Drum Solo
  8. Fallen Angel (Piano & Voice Version)
  9. Danger Money
  10. In The Dead Of Night
  11. By The Light Of Day
  12. Presto Vivace & Reprise
    -
  13. Nothing To Lose
  14. Caesar's Palace Blues
  15. The Only Thing She Needs