幻のモダニスト 写真家堀野正雄の世界 / フェリーチェ・ベアトの東洋 / 生誕100年記念写真展 ロベール・ドアノー

2012/03/31

前日までの穏やかな気候を吹き飛ばすようなもの凄い強風が吹き荒れた土曜日、恵比寿の東京都写真美術館に足を運びました。

3階の展示室では、戦前の写真家、堀野正雄の写真展を展示していました。舞台写真やポートレイトから始まり、大都会・東京の様相を社会主義者の視線でとらえたかのような写真群や、そのパーツである石炭荷役機、艦船、鉄橋、ガスタンク、機関車の斬新な構図による写真群、さらには国策写真家として渡った朝鮮や中国の風俗など。特に、雑誌『犯罪科学』におけるグラフモンタージュの作品群は一見の価値ありです。それにしても、当時においてはモダンの極みであったであろうこれらの作品も、今の目で見ればノスタルジックというのが、写真という表現方法の難しいところ。

2階で展示されていたのはフェリーチェ・ベアトの作品群。フェリーチェ・ベアトは幕末〜明治の訪日写真師で、横浜に20年も滞在して当時の日本の風俗や景観を撮影しており、その間に撮影され着彩された美麗な風俗写真はいかにも生き生きと(しかしちょっとやらせっぽく)当時の市井の人々の暮しを写しとっています。さらに、フェリーチェ・ベアトの足跡はインド、中国、朝鮮、そして最後はビルマに及んでおり、マンダレーの懐かしい景観を写した写真作品も展示されていて、感慨ひとしおでした。

地下1階は、この日のお目当てのロベール・ドアノーの写真展。ロベール・ドアノーと言えば「パリ市庁舎前のキス」(1950年)が有名ですが、これに限らず、戦中から戦後にかけてのパリを中心としたモノクロームの美しい作品群には、どれもはっとさせられる機智とそこはかとないユーモアと、何よりパリらしい「雰囲気」が感じられて、全200点という数の多さも見飽きることがありませんでした。このことを最初に見た堀野正雄の作品群と照らし合わせてみると、つまりは「どう撮るか」ではなく「何を撮るか」がやはり一番大事だということなのでしょう。