Toto

2011/09/27

日本武道館で、Totoのライブ。本来は5月24日に予定されていたものの、震災の影響でほぼ4ヶ月延期されていたものです。Totoは、2008年のライブを最後に無期限活動停止を宣言したのですが、そのTotoが再びツアーに出ることになったのは、筋萎縮性側索硬化症(ALS)にかかったベーシストMike Porcaroの支援のため。そして今回の来日での注目点は、メンバー構成です。ギタリストのSteve Lukatherは当然として、ヴォーカルには3代目ヴォーカリストでファンの人気も極めて高いJoseph Williams、キーボードにはいずれもバンドの創設メンバーであるDavid PaichとSteve Porcaro。特にSteve Porcaroは、1986年にTotoの正式メンバーを外れて以来25年ぶりの来日です。これらのスタープレイヤーを支えるリズムセクションも、あのハイテクドラマーSimon Phillipsと、ジャズからロックまでカバーする様々なミュージシャンとのセッションで名高いNathan East。Totoファンにとって、現時点で考えられる最高の布陣でしょう。このメンバー構成を反映して、ライブの選曲はJoseph Williams在籍時の作品である『Fahrenheit』『The Seventh One』からの曲が多くとり上げられ、また演奏面では二人のキーボードプレイヤーにスポットライトが当たる場面が多く見られました。

屋外にしつらえられたグッズ売場でプログラムとTシャツをゲットしてから入場した私の席は、1階席(アリーナに最も近いスタンド)の西=下手の端。武道館のスタンド席は相変わらず狭く、おまけにステージ下手のほとんど横に近い角度の場所ですが、少なくとも視界の良し悪しはステージを覆う黒い幕が落ちてしまえば同じでしょう!定刻の19時を5分以上も過ぎた頃に、BGMがサン=サーンスの交響曲第3番「オルガン付き」になって、あれれ、これは昨年のAsiaと同じだ?と思っていると、そこから列車のガタゴトという音のようなSE、鐘の音、緊迫したストリングス音。そして唐突に会場が暗くなって、ベンドアップするシンセサイザーにドラムが重なり、幕が切って落とされると共に始まったのは……。

Child's Anthem
Totoのデビューアルバムの、それも1曲目の曲。この曲を冒頭に持ってきたことに、今回のショウのコンセプトが垣間見える気がします。当然、アリーナ席は瞬時に総立ち。舞台上の配置は、中央奥にSimon Phillipsのドラムセット。その前にNathan Eastの立ち位置があり、フロント中央にはもちろんSteve Lukather。そしてステージ左右で向かい合うように、上手にはスタンドに2台のキーボードを重ねて身体をくねくねと動かすSteve Porcaro、下手にはアップライトピアノ風のカバーに2台のキーボードをセットしたシルクハット姿のDavid Paich。タイトなリズムでのキメがビシビシと決まった上に、Lukeのギターソロも流れるよう。
Till The End
舞台上手からゆったりと登場したJoseph Williams。舞台上をどんどん歩き回って、アリーナからスタンドまでまんべんなく手を振って回るその姿はさすがに少々貫禄がついていましたが、声は全盛期並みとまでは言わないものの、高音がよく出ています。印象的なコーラスに続くエンディングでは、Steve Porcaroの弾くブラスソロがしっかりと決まりました。
Afraid Of Love / Lovers In The Night
ヒットアルバム『IV』のB面冒頭の2曲。「Afraid Of Love」では、Lukeのギターリフとヴォーカルを聴きながらDavid Paichが巨体を揺らしてダンス。ピアノリフが絶妙のタイミングで入って切り替わる「Lovers In The Night」はDavid Paichがリードヴォーカルですが、フェイクも交えて客席をあおりまくる彼のヴォーカルは今までに聴いた中で最も力強いものでした。

ここまでぐいぐいと押しまくったところで一息いれて、LukeのMC。初めてここに来たのは1980年、その頃自分はこんなに小さくて(と身長50cmくらいを示して)クレイジーだった。そして今日、ここに来てくれた友人たちに、ありがとう。

Somewhere In The Night
一転して、たゆたうようなシャッフルリズムに乗ってJoseph Williamsがソウルフルに歌い上げる曲。この味は、Toto歴代ヴォーカリストの中でも彼ならではと思えます。さらにサビの部分では、ドラムセットの下手にいたコーラスの男女がフロントに出てきて気合の入ったヴォーカルを聴かせ、客席との間でコール&レスポンス。ギターとベースも可愛いユニゾンフレーズを聴かせるなど遊び心に満ちた、楽しい演奏でした。
Pamela / Lea
「イチバンレコード in Japan!!」とLukeが紹介した「Pamela」。気持ちよく跳ねるリズムの上にJoseph Williamsのヴォーカル、もちろんサビは客席も一体になって合唱。途中からDavid Paichのころころとしたピアノソロになり、最後は倍速のリズムになってキメ。続いて、Steve Porcaroの印象的なシンセによるイントロにLukeのアコースティックギターが乗り、Simon Phillipsとコーラス二人の静かなリズムが加わってJoseph Williamsがしみじみと歌う「Lea」。Totoの曲には女性の名前をそのまま題名に持ってきている曲が多いのですが、そうした中でもこの2曲は対極にあるような雰囲気を持っています。そう言えば「Pamela」の前にLukeは、Joseph Williamsのことを「many many thousand girlfriends」を持つヤツ、と紹介していましたが……。
Gift Of Faith
続いて恐らくは3月の震災を念頭に「今ここにこそふさわしい、Hope, Faith, Peace and Dreamの曲」と前置きがあって始まったこの曲は、Lukeのギターとヴォーカルが力強い曲。後半はコーラスの女性のスキャットが続き、その背後でテンポは変わらないのにドラムのニュアンスだけで曲がぐんぐんヒートアップしてくるSimon Phillipsのマジック。
Keyboard Extravaganza
David Paichのリリカルなピアノソロに、途中からSteve Porcaroのドラマチックなシンセが加わったキーボードデュオ。この二人がこうして舞台上で共演する姿を見る機会が得られるとは、このツアーがアナウンスされるまで思ってもみませんでした。
Africa
イントロのリズムだけでわかるこの名曲に、会場は大喜びで手拍子と合唱。シロフォン系のシンセソロはDavid Paich。その後に長いピアノソロを入れてバンド全体がデクレッシェンド、スネア一発でラストのキメ。

ステージの前の方に出てきたDavid Paichに聴衆が歓呼の声を送った後に、Steve Porcaroが登場し、意外にもよく通るクリアな声で挨拶。彼の兄弟であるMike(ALS)やJeff(死去)のこと、しかし親友であるDavid PaichやSteve Lukatherらと共に、ロックンローラーの夢である武道館に立てて幸運であることを述べ、そしてまた日本のALS Societyのユミコ・カワグチさんを新たな友人として紹介していました。

Human Nature
ちょっと意外な選曲のこの曲は、Michael Jacksonの『Thriller』に納められた曲で、映画『THIS IS IT』の中でも印象的に歌われていました。この曲の作曲者は、Steve Porcaro。Joseph Williamsが歌っても、まったく違和感がありません。
Rosanna
この日の女性の名前シリーズ第三弾は、言わずと知れたこの曲。中間部の鋭いブラス音によるシンセソロを弾く瞬間、Steve Porcaroの姿は最大光量のスポットライトの中でまばゆいばかりの白銀色に輝いて見えました。David Paichも負けずにアウトロの激しいピアノソロ、さらにはLukeも長大なギターソロで続いて、どこまでも盛り上がっていきます。

ここでLukeによるメンバー紹介。コーラスの二人、Nathan Eastときて、Joseph Williamsのときにはバンドが映画『JAWS』のテーマ曲(作曲者は彼の父John Williams)を演奏し、Joseph Williamsは苦笑。さらにSimon Phillips、Steve Porcaro。最後のDavid Paichはなぜか「Master of disaster」。ジャジーで静かなリズムの上でムードたっぷりにLukeのギターが奏でたのは「上を向いて歩こう」のフレーズ。やがてリズムが変わって、次のR&Bナンバーが始まると会場にどよめきが起こりました。

Georgy Porgy
Lukeのリードヴォーカルにコーラスのメンバーも加えて原曲の雰囲気を再現した後に、Nathan Eastがベースと自身のヴォーカルのユニゾンプレイを聴かせて聴衆を湧かせると、David Paichのピアノソロ。そこへ忍び寄ったコーラスの女性がピアノの陰からひょっこり顔を出してヴォーカルをかぶせ、最後はリズムのキメ。
Stop Loving You
Joseph Williamsのヴォーカルとなれば、やはりこの曲が来なくては。サビのI can't stop loving you, time passes quickly and chances are few. I won't stop till I'm through loving you, girl.は、もちろん大合唱になります。さらに、アウトロに他の楽器が作る一定のリズムの上でSimon Phillipsのドラムが炸裂。
Home Of The Brave
本編最後は、前曲と共に『The Seventh One』からの曲。David Paichが歌うEverything's gonna be alright boys. Help is on the way. Hold your head up high now. There's no need to cry now. We're not running anymore.という歌詞が、励ましや救いを必要とする全ての人々(ALSに苦しむMike Porcaroも、震災の影響をなお受け続けている日本人も)に対するメッセージとしてストレートに心に響いてきます。どこまでも駆け上がってゆくような繰り返しのリズムに乗って、フロントに出てきたDavid PaichとJoseph Williamsが仲良く並んで「お祈りダンス」を披露したり、もの凄い精度での全楽器ユニゾンの決めフレーズに圧倒されたり。
Hold The Line
アンコールは、デビューアルバム『Toto』からピアノの連打が特徴的なこの曲。どういうわけかこの曲ばかりはBobby Kimballのヴォーカルが似合うように思いますが、コーラスのメンバーの渾身のサポートを得た堂々たる演奏で、しっかりとショウを締めくくってくれました。

とにかく凄いライブでした。完璧な演奏能力と最高のエンターテインメント性の融合。まさにTotoならではのショウ。私自身がこれまでに経験した少なからぬライブの中でも、あらゆる意味でトップ5に入れられる出来だったと言えるでしょう。そして、終演後のメンバーの挨拶は次のとおり。

  • Steve Lukather「Thank you Tokyo. We love you.」
  • David Paich「マタネ!」
  • Nathan East「ミナサーン、オツカレサマデシタ!」←しかも関西イントネーション。

ん?David Paichの言葉からすると、またTotoとしての演奏に接する機会を期待できるのかな?

ミュージシャン

Steve Lukather Guitar / Vocals
David Paich Keyboards / Vocals
Simon Phillips Drums
Steve Porcaro Keyboards
Joseph Williams Vocals
Nathan East Bass
Jenny Douglas Vocals
Mabvuto Carpenter Vocals

セットリスト

  1. Child's Anthem
  2. Till The End
  3. Afraid Of Love
  4. Lovers In The Night
  5. Somewhere In The Night
  6. Pamela
  7. Lea
  8. Gift Of Faith
  9. Keyboard Extravaganza
  10. Africa
  11. Human Nature
  12. Rosanna
  13. Georgy Porgy
  14. Stop Loving You
  15. Home Of The Brave
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  16. Hold The Line