Manu Katché Quartette

2011/01/28

六本木のSTB139で、Manu Katché Quartetteのライブ。

Manu Katchéと言えば、言うまでもなくPeter Gabrielお気に入りのドラマーで、その姿はPGのライブ映像でずいぶん見ています。ことさらにテクニックをひけらかすというタイプではありませんが、それでも彼のキレのよいプレイはTony Levinのツボを押さえたベースと相性がよく、PGの多彩でひねりのきいた音楽性にマッチしていました。

しかし、今回のツアーは彼のジャズ・カルテットによるもの。その音楽は、たとえばこんな感じです。ジャズにしては、スネアのカンカンという高音が気になる感がなきにしもあらずですが……(映像は来日メンバーとは異なります。こちらのベースは、Pino Palladinoですね!)。

PGとは全く異なる音楽性ですが、これはこれでなかなかの味わい。そこで『Playground』と『Third Round』の二枚を購入し、あらかじめ予習してから会場に臨みました。

STB139に着いたのは開場時刻の18時から30分ほどたった頃でしたが、中はがら空き。中央右寄りの列の前から三番目という好位置を占めることができました。舞台上は上手にドラムセット(バスドラにYAMAHAのロゴ)、下手にピアノ(YAMAHAグランドとFender Rhodes)。その間の舞台奥のドラム寄りがベース(これもYAMAHAのBB)、ピアノ寄りがサックス(これは不明)の立ち位置です。何はともあれギネスで喉を潤し、ミックスナッツとピザを注文して待っていると、やがてY女史も登場。本当は別の知人と聴く予定だったのですが、知人が直前に都合で来られなくなり、急遽Y女史に代打をお願いしたというわけですが、ラテンオンリーのY女史がジャズに共感してくれるのか……という懸念は、後に杞憂に終わりました。

定刻になって主催者からのアナウンスがあり、すぐにメンバー4人が現れました。Manu Katchéは柔らかそうなハンチング帽をかぶり、黒縁メガネにラフなポロシャツ姿。残りのメンバーも揃いのシャツにジーパンで皆さんとても地味な色合いの出立ちです。Manu KatchéがMCに立って、パリからの12時間のフライトには疲れた、と静かな語り口で言った後観客に、指を鳴らして下さい、我々はそれについていきます、とアナウンスしてお手本のスナップを始めました。それに応じて我々も♩=90の1拍おきくらいの速度で指を鳴らし始めたのですが、日本人のリズム感でオモテ拍(一拍三拍)を感じていたら、静かにベースが入ってきてスナップが気持ちよくウラ拍に変わるリズムのマジックがあり、ピアノ、そして静かにドラムが加わって『Playground』(2007年)に収められた「Morning Joy」。原曲のイントロが省略され、テンポはかなりゆったりめで、Manu Katchéの繊細なブラシワークが堪能できます。続いて、特徴的なピアノのフレーズから入る「Being Ben」では通常のスティックに持ち替えてのドラミング。以下、『Third Round』(2010年)からの曲がいくつか続き、5曲目の「No Rush」からは3曲続けて『Neighbourhood』(2005年)からの選曲。元はアコースティックベースを用いてしっとりした曲だったものが、よりスピーディーでダイナミックなものにアレンジし直されていたりします。そのことはこの3曲に続いて演奏された上述の「Keep On Trippin’」の後のMCでも触れられていて、ここでManu Katchéはメンバーを紹介するとともに、ファーストアルバムのオーガニックな演奏を、ここではエレクトリック楽器でグルーヴィーにやっているという説明をしていました。そのメンバーたちですが、いかつい身体つきのベースはボトムをしっかり支えて堅実な演奏、ピアノは曲の骨格を作ったり情熱的なソロを展開したりと活躍、サックスは全体に遠慮がち。とは言うものの、我々の席がドラムの正面で生音がよく響いていたのもさることながら、やはりManu Katchéのプレイがどこを切っても図抜けていたために、サックスのソロパートでもピアノのソロパートでもついつい目と耳はManu Katchéに釘付けになってしまいます。とりわけMCの後の2曲目、機関車が疾走するようなベースパターンの曲では各パートとも渾身の演奏でしたが、バックのドラムがスロットル全開で他を圧倒。さらにベースのリフの上でドラムがフリーに叩きまくる場面があって、会場は目一杯ヒートアップしました。

メンバーがいったん下がった後に、アンコールを求める手拍子に応えてまず出てきたのはManu Katché。スティックの破片が飛び散るほどの激しいドラムソロから、メンバーも加わってエレピが活躍するノリノリの曲。そして最後は、しっとりと「Rose」で締めくくられました。

Manu Katchéはやはり凄い!ハードヒットするときにはダイナミックな腕の振りと柔軟無比の手首にスティックがしなっているような錯覚を覚えさせられ、ハイハットを踏む左足もかなり細かく動いていて(左のかかとを左右に振りながら8分音符を踏んでいるのがよく見えました)、ジャストのタイミングでタムやシンバルをヒットする姿のしなやかさには黒ヒョウを連想しました。楽曲の質やアンサンブルの妙といったものを楽しむというより、Manu Katchéを通じてドラムという楽器のダイナミックレンジの広さと表現力の奥深さを見せつけられたといった趣きのライブ。それが、彼自身の望みにかなっていたかどうかは微妙ですが……。

ミュージシャン

Manu Katché Drums
Alfio Origlio Piano
Tore Brunborg Saxophone
Laurent Vernerey Bass

セットリスト

  1. Morning Joy
  2. Being Ben
  3. Shine And Blue
  4. Senses
  5. No Rush
  6. November 99
  7. Lovely Walk
  8. Keep On Trippin’
  9. ***
  10. ***
  11. Springtime Dancing
    -
  12. ***
  13. Rose