ラヴズ・ボディ / 二十世紀肖像

2010/12/03

恵比寿の厚生中央病院で順番が来るのを待っている合間を利用して、近くの東京都写真美術館へ。この日の展示は、「ラヴズ・ボディ」と「二十世紀肖像」。

「ラヴズ・ボディ―生と性を巡る表現」は、エイズ患者への社会的偏見や差別と向き合った美術・写真作品の意味を問い直そうとするもの。さまざまなタイプの作品が掲示されていますが、とりわけ圧巻と言えるのは、最初に展示されているウィリアム・ヤンの《アラン》でしょう。自らもゲイであるヤンは、かつての恋人であったアランを病院のHIV病棟に見つけ、その衰弱しきった姿にショックを受けつつもアランの経過を写真に収めてゆくこととします。チラシ裏面の右側に猫のフィリックスを抱いて横たわっているのがアランですが、一度は体調を回復して退院したものの、際限のない薬物療法をついに自ら断つ決断をし、そして最後は病院のベッドに冷たい骸となって横たわるまでを、親密な文体のキャプションとともに紹介しているこの連作は、涙なくしては見られません。

チラシ左のデヴィッド・ヴォイナロヴィッチによる《Untitled (Falling Buffalo)》は一見エイズとは無関係ですが、このバッファローたちは人間に追い詰められて次々に崖から転げ落ちてゆく姿。その姿は、社会的な圧迫のもとに置かれたエイズ患者たちの暗喩であったようです。

続いて、ひとつ下の階で開催されていた「二十世紀肖像 全ての写真は、ポートレイトである。」

東京都写真美術館のコレクションの中から、人の姿をテーマとした写真を

  • モダニズム
  • 時代の肖像
  • ドキュメンタリーの中の人間像
  • 家族へのまなざし
  • 想像の身体

という5つのパートに分けて展示しており、たとえば「時代の肖像」ではチャーチルや吉田茂、ケネディ、といった政治家からピカソ、ヘミングウェイなどの芸術家、マリリン・モンローや日本の女優たち等が自然な姿で並んでいたかと思うと、「家族へのまなざし」には植田正治の『砂丘』シリーズや荒木経惟の『センチメンタルな旅』シリーズ、「想像の身体」には森村泰昌のセルフポートレイトや細江英公の『薔薇刑』シリーズがそれぞれに異彩を放っていました。

しかし個人的にツボだったのは、「ドキュメンタリーの中の人間像」のコーナーにあったルイス・ハインの《スチーム・フィッター》でした。この絵、見た途端にピンと来ましたが、Rushの『Snakes & Arrows』のブックレットの中で「Workin' Them Angels」のページの写真の元になったものに違いありません。下の画像は「Workin' Them Angels」ですが、《スチーム・フィッター》はこの男性から天使の羽を取り去った姿をしています。

時間潰し、という不純な動機で入った東京都写真美術館でしたが、あちこちで考えさせられたりニヤリとさせられたりした、充実の1時間半でした。