鎌倉の社寺巡り(円覚寺・建長寺・鶴岡八幡宮・鎌倉宮・報国寺・長谷寺・御霊神社・高徳院)

鎌倉への小さな旅。北鎌倉を起点としていくつかの寺院を見て回る旅のスタートは、名刹・円覚寺です。

2010/06/12

円覚寺

梅雨入り前の蒸し暑く晴れた日、人波をかきわけるようにして辿り着いた円覚寺は、元寇の戦死者慰霊のために執権北条時宗が創建した寺で、鎌倉五山の第二位。北鎌倉駅を降りてわずかに鎌倉寄りへ進むと左手に境内が広がります。最初の見どころは、石段を登ったところにある三門。非常に重量感のある構造で、屋根の急勾配が威圧的です。さらに奥に進んで、鎌倉唯一の国宝建築である舎利殿を見ようと思いましたが、正月と11月の宝物風入れのとき以外は非公開だそうで、遠くから小さく望むだけ。最奥の黄梅院のしっとりした庭園でUターンして、北条時宗を祀った仏日庵に線香を供え、茶室を見学。そう言えば、NHK大河ドラマの「北条時宗」は好きでよく見ていました。木村佳乃さん、西田ひかるさん、ともさかりえさん、牧瀬里穂さんなどすてきな女優さんが綺羅星のようでしたし……。最後に、かなりの急勾配の石段を登って東国最大規模という洪鐘を見たのですが、えっ、これで東国最大?という感じ。ま、それにしてもここまで運び上げるのは大変だったでしょう。

境内に入るとすぐに、石段の上に三門が見えています。重心を上においた重厚なつくりですが、夏目漱石の『門』の中で主人公が参禅したのは、明記されてはいないものの、この寺なのだとか。

遠くに望む舎利殿。近くで拝めなかったのは残念ですが、屋根の勾配や光沢、手前の唐門などいい感じ。

黄梅院は、苔や木々の緑が目に優しい小さな庭園でした。そして、東国最大規模の梵鐘であるという洪鐘もありましたが、もう少し立派かと思っていたんですが……。

建長寺

続いて建長寺に向かう途中の道すがら、鎌倉古陶美術館に立ち寄りました。ここは、展示物もさることながら、ハイソな古民家そのものの建物が魅力的。太い柱と梁、品のいい装飾、そして小さいながらも賑やかに梅や草花が植わった庭が魅力的でした。そこから明月院へ向かう人々を横目に見ながら、こちらはそのまま建長寺へ。文化祭の焼きそばの匂いを漂わせている鎌倉学園の隣、総門をくぐって境内に入り、これまた立派な三門、仏殿、法堂を見て回りましたが、フラットな土地に配置された直線的な伽藍はいまひとつそっけない感じで、面白みに欠けるものでした。

拝観受付の向こうに、立派な屋根を見せている三門。右の仏殿は、軒下の複雑な構造が特徴的。

増上寺から移築したという仏殿の中には、これまた立派な仏像。両サイドの彫り物も見事です。そして法堂の天井には、五本爪の龍の絵が鮮やか。

鶴岡八幡宮

峠を越えて鎌倉街道を下り、雪ノ下の一茶庵で蕎麦を食してから、三ノ鳥居から鶴岡八幡宮へ。ここでの見どころは、実はこの年の3月10日に倒れた大イチョウ。1219年の実朝暗殺時に公暁が身を隠していたという謂れのあるイチョウで、倒れてどうなっているのかな?と思っていたら、地上部の一部が少し離れたところにどんと置かれてひこばえを萌えあがらせ、また石段脇のもとあった場所にも同様にわさわさとひこばえが生えていました。よかったよかった。そのまま石段を上がって本宮に参拝してから、白旗神社、さらに鎌倉国宝館へ。国宝館では観音図32幅の特別展をやっていましたが、それよりもダイナミックな質感表現が素晴らしい初江王像《重文》に出会えたのが印象に残りました。この像、存在感が本当に強烈です。

行く手に舞殿、その奥に本宮。大イチョウは、この本宮への石段の横に立っていたのですが……。

こんな風に根元を残して再生が図られています。がんばれ大イチョウ!石段の途中から見ると、元気に再生してきていることがわかります。

鎌倉宮

続いて鎌倉宮へ。ここは鎌倉幕府滅亡のときに活躍した護良親王が幽閉された東光寺の跡地に立てられた宮で、厄除のため土器を打ち割る石や、塑像に願いを書いて供える村上社、そして護良親王が囚われの身として9ヶ月を過ごした土牢があります。村上社の塑像にはいろいろな願い事が書かれていましたが、「がんが早く治りますように」「副作用が出ませんように」という切実な願いには胸が塞がれてしまいます。

この鳥居、色遣いが超アバンギャルドです。厄割り石は、右の土器の杯を投げ当てて割れば身体の悪いところが治るのだそう。

こちらは、1333年の吉野落城に際して護良親王の身代わりになったという村上義光の像。後ろの小さな塑像に願い事を書いてお供えをすると、御利益があるそう。

ここが、護良親王が9ヶ月も幽閉された土牢。最期は、足利直義の命によってこの地で殺害されました。

報国寺

この日の予定はこれで終了でしたが、まだまだ時間にゆとりがあるので、さらに足を伸ばして竹庭が有名な報国寺に行ってみました。ここが、予想を上回るよさ。入口を入ったところの苔と枯山水の庭もきれいでしたし、竹庭も清潔感あふれていて、見事でした。

予想外によさげな雰囲気の報国寺の入口。苔や石庭の様子もたいへん好ましいもの。

茅葺きの鐘楼の右奥が、竹林の庭になっています。明るく清潔な竹庭は、来た甲斐がありました。これでこの日の行程を終えて、バスで鎌倉駅に出て江ノ電で七里ケ浜へ。翌日は長谷周辺の探訪です。

2010/06/13

前夜のワインでどんよりした頭のまま、この日の行程は長谷駅から。まず、紫陽花で有名な長谷寺に足を運びます。

長谷寺

このお寺は初めて訪れましたが、うーん、これは素晴らしい。大きな﨓たぶの木を擁する門の脇から山門の奥は、池をもつ庭園。放生池には菖蒲がきれいに咲いています。二つの池の間を通って坂道を登り、一段高いところある阿弥陀堂に入ると、そこには高さ9mの非常に立派な十一面観音像が右手に錫杖を持ってすっくと立っていました。木造の仏像としては日本最大級だそうですが、表面は金箔で覆われていてとてもゴージャスです。これだけでも十分な見応えですが、長谷寺のポイントは阿弥陀堂の左横から山の急斜面に広がる眺望散策路で、この斜面がありとあらゆる種類の紫陽花で埋め尽くされているさまは凄いものです。順路に沿って紫陽花を堪能し尽くしてから、巨大マニ車といった趣きの輪藏を経て再び池のある庭園に下り、弁天窟に潜り込んで彼岸の雰囲気に浸って終了。長谷寺は、まさに西方浄土を再現したような美しい寺でした。

山門。本堂などはこの右手にあるのですが、ひっそり奥まっていて気づきませんでした。中に入れば、いかにも和の風情の妙智池。もうひとつの放生池には、菖蒲がきれいに咲いていました。

阿弥陀堂。この中に、高さ9mの十一面観音像が立っています。そしてこの寺のもう一つの見所は、何といっても紫陽花の斜面。写っているのはごくごく一部。全体では2,500株以上植えられているそう。

紫陽花にこれほど様々な種類があるとは、今まで知りませんでした。

御霊神社

続いて高徳院へ向かう前に、長谷駅からの道にあった標識が示す「御霊神社」というのが気になったので、いったん駅の方へ戻って奥まったところにある御霊神社に行ってみました。ここはノーケアでしたが、もとは大庭・梶原・長尾・村岡・鎌倉の平家五家の祖を祀る霊神社だったものがいつの間にか鎌倉権五郎景政一柱のみを祀るようになったそう。鎌倉権五郎と言えば、成田屋の歌舞伎十八番の一「」ですが、史実としては源義家に従軍して後三年の役で目を射られながらも奮戦したという猛将。そして、こちらの境内にも立派なイチョウの木と、紫陽花の小径。

鎌倉権五郎を祀った御霊神社。すっきりとした社の裏手に、短いながら紫陽花の道もあります。

ここにもこんな変わった紫陽花が咲いていました。美麗。

高徳院

さて、鎌倉と言えば大仏様ですが、高徳院は本当に潔いというか何というか、大仏以外にほとんど何もないところです。妙に猫背で首を前に傾けさせた丸っこい大仏様は、私の記憶が正しければ映画『八十日間世界一周』にも出演していたはず。それもそのはず、与謝野晶子の有名な歌にこう歌われているのですから。

鎌倉や 御仏なれど 釈迦牟尼は 美男におわす 夏木立かな

鎌倉の定番、美男におわす大仏さま。その胎内から頭を見上げれば、螺髪が裏打ちされたような形状が見てとれます。

こうして見ると、相当な猫背。なぜ?

鎌倉文学館

最後に、旧前田侯爵家の鎌倉別邸を用いた鎌倉文学館に立ち寄って、古き良き鎌倉の文士たちの交流や、特集されていた高浜虚子の事績を学んで、これで全行程終了です。

旅の最後は、鎌倉文学館。社会人2年目のときに赴任した懐かしい神戸の異人館を思い出しました。ここから鎌倉駅までバスで移動して、昼食をとってから帰京しましたが、それにしても今回はよく歩いた!家に帰ったら、バタンキューでした。