京劇三国志 赤壁の戦い(湖北省京劇院)

2010/05/16

毎度の如く、池袋の東京芸術劇場で湖北省京劇院の「京劇三国志 赤壁の戦い」。南下する曹操を迎え撃つために呉と蜀が手を結び、諸葛亮が周瑜・魯粛と合流して、ついに赤壁の戦いで魏軍を打ち破るまでを、「策略編」「激闘編」の二日に分けて上演するものですが、ベースにあるのは伝統演目である「群英会」「借東風」「焼戦船」「華容道」。それらをどのように再構成したかは、会場で売られていたプログラムの中に詳細な図解がありました。

まずこの日は「策略編」。オープニングは、豪勢な兵・将軍たちの進軍の様子。舞台狭しと旗、刀、楯がひしめきあい、勇壮です。そしてその中央に登場したのが、白塗りの顔に墨色の皺のような隈取りを走らせ、高位を示す相貂をかぶった曹操。悠然と歩むその姿には、丞相の風格が漂います。そして兵たちのアクロバティックな回転、見得。これこれ、京劇はこうでなくては!

場面変わって、劉備の陣では諸葛亮が魏の南進に対して呉との連携を献策し、折しも呉から遣わされた魯粛を迎えます。全編を通じて狂言回し的な役割を担うことになる魯粛役は、ハンサムで親しみやすい顔の伊章旭。「徐九経昇官記」で李小二を演じた役者さんで、その実直善良な性格は多分に本作の魯粛にも引き継がれています。蜀呉の同盟をまとめた魯粛が呉の孫権に復命する場面は、紗幕が降りてきてその向こう側に立つ孫権に照明が当たる巧みな演出。遂に孫権は、投降論を捨てて主戦論に舵を切ることを決します。

場面変わって、呉の将軍達が居並ぶ中へ、魯粛、諸葛亮、そして周瑜登場。翎子をつけた華やかな紫金冠と白地に龍の刺繍が施された箭衣をまとった周瑜は、やはり「徐九経昇官記」の尤金役での高い裏声で強い印象を残した呉長福です。もちろん今回も、そのハイトーンで客席の度肝を抜き、存在感抜群。斥候の報告を受けて魏の水軍の堂々たる様子を知るところへ、魏から投降を勧めるために蒋幹が到着しました。蒋幹役は文丑、目の演技が巧みでユーモラスな役回りですが、さすがに魏の使者だけあってそれなりの風格があります。この蒋幹に偽書をつかませて魏の勢力を削ごうという策を思いついた周瑜は、旧知の蒋幹を丁重に迎えると、酒宴を催します。江東の英傑たちを揃えての酒宴、これが「群英会」です。袖で口元を隠して杯を二人同時に飲み干して、空になった杯をほらね、と見せ合うという飲み方は京劇ではおなじみのもの。ぐいぐい飲み続けるうちに周瑜は翎子をぐるぐると回し目もすわってきます。自分も酔ったという蒋幹を先に陣屋へ送り出すと、途端にしゃきっとなった周瑜は黄蓋たちに指令を出して、散会。

周瑜の陣屋、中央奥に幕に覆われた寝台へ蒋幹、ついで周瑜。プレッシャーに眠れない蒋幹は寝台から抜け出ると、周瑜の机の上に重ねられた本を見るともなく見ていましたが、水上戦の本に手紙がはさまれていることに気づき、外で読むことにします。この手紙はあらかじめ魯粛が本にはさんでおいた偽書で、魏の水軍を指揮する二人の将軍が呉に内通しているという内容ですが、蒋幹が陣屋の外に出ると照明が暗くなり、中に戻れば少し明るくなるといった具合に気配りのきいた演出が見事です。だめ押しで黄蓋が魏の将軍からの連絡があった旨を周瑜に報告し、それをわざと蒋幹に聞かせたために、蒋幹はすっかり計略にかかってしまい、あたふたと陣屋を抜け出していきます。

再び魏軍の勇壮な様子。水軍の調練の様子ということのようですが、スモークたなびく中に大勢の将兵が剣舞や槍舞を見せてゴージャスです。戻ってきた蒋幹の復命を受けて水軍の将二人を斬首に処した曹操でしたが、その直後にこれが周瑜による「借刀の計」であることに気づき後悔。そうとは思いもしない蒋幹は自分の手柄を誇りますが、曹操に叱られてしまいます。ここ、蒋幹はおろおろするばかりですが、曹操も蒋幹に対してはなんだか優しく、好々爺的な雰囲気も漂わせていて、一方的な悪役にはなっていません。

むしろ不気味なのは諸葛亮で、次の場で周瑜と魯粛が借刀の計の成功を喜んでいるところへ呼ばれて既に計略をお見通しであったことを明らかにし、二人を愕然とさせますが、なんだか常に上から目線で表情も常に落ち着いており、何を考えているかわからないところが人間味を感じさせません。その諸葛亮と周瑜は、戦略の要諦が火攻めであることで意見が一致しますが、水上戦の要となる矢の調達を諸葛亮が引き受けるときに、自ら三日と期限を切って再び二人を驚かせます。このやりとりでは周瑜と魯粛の性格が浮彫りになってきて、魯粛は無茶な期限を切ろうとする諸葛亮にびっくりしたり盛んに戒めようとしたり、かたや周瑜は魯粛が口をさしはさむたびに目でうるさい、黙れと制して諸葛亮に軍令状を差し入れさせます。外交官として諸葛亮を呉に連れてきた魯粛は、同盟の維持を思う気持ち以上に諸葛亮を親身に思い始めている好人物ぶりが見えてきますし、周瑜は諸葛亮の知謀が将来の呉の脅威となることを見通してこれを除くことを考え始めているわけで、そうした人物の大きさが如実に伝わる呉長福の演技には感服です。

無茶な約束を引き受けた諸葛亮は、悠然と西皮原板で唱。これに対してはらはらし通しの魯粛は思い余って机を叩き、テンポの速い快板の唱で諸葛亮に詰め寄りますが、諸葛亮に逐電を勧めたり、いっそ身を投げては?とわけのわからないアドバイス。一方の諸葛亮はにやにやしながら魯粛をあしらい、魯粛はすっかり諸葛亮のペースに乗せられつつ船や藁束を手配させられ、おまけに諸葛亮と一緒に船に乗って長江へ漕ぎ出すハメに。紗幕が上がればそこは船の上という設定で、舞台奥には波模様のセットがあり、二人の漕ぎ手が櫂を使い続けていることでそれとわかります。いつの間にかのっぴきならない状態に追い込まれた魯粛のうろたえぶりと落ち着き払った諸葛亮の対比が笑いを誘いますが、霧の中で鬨の声をあげた諸葛亮の船団に対して下手の曹操陣から矢が打ち込まれると、舞台奥に矢を刺した藁人形が現れて、諸葛亮は悠然と矢を回収します。まんまと計略にかかったことを知り悔しがる曹操と、これを慰める蒋幹との漫才のようなやりとりのうちに次の場へ。

諸葛亮が約束通り三日で十万本の矢を手に入れたことを魯粛から知らされ、呆然とする周瑜。ともあれ諸葛亮を呼んで酒宴を張ることにしますが、魯粛はもはや諸葛亮を生き神扱いなのに対し、周瑜は厳しい表情で諸葛亮を意識した目づかい。これに対して諸葛亮はふふんと意に介さない様子です。ところが酒宴の席で、黄蓋が曹操への投降を進言して周瑜は激怒。もちろんこれは芝居で、あらかじめ二人の間には黄蓋が魏軍に近づくために苦肉の計を行う申し合わせがされており、かぶりものを取り去られ百叩きの計にあう黄蓋に対し周瑜は申し訳ないという表情で顔をそむけていますが、諸葛亮は先刻お見通しなので、この修羅場にも悠々と酒を飲んでいます。そうした諸葛亮の態度についにキレた周瑜は、ついに立ち上がって剣を抜いたところを魯粛に止められて、散会を告げ一瞬で袖を巻き上げると荒々しく退場。残った魯粛もさすがに憤慨して諸葛亮に詰め寄りますが、逆にこれは計略だと諭されてしまいます。

この日の最後の場は、周瑜のイメージの世界。策を重ねて戦機が近づいたことを知る周瑜の眼前に、曹操の船団が火の海に呑み込まれる様子が幻となって浮かび上がります。スモークと照明の効果の中で、赤い大旗、刀、槍、長刀の接近戦、兵士たちのアクロバティックな空中回転が次々に展開し、最後の兵士が舞台上の一カ所で延々と定点連続後方回転を続ける姿がスポットライトに照らし出される内に舞台上が暗転。ここで幻想は終わり、周瑜たちの見得のうちに幕が降りました。

2010/05/21

続いて「激闘編」。

まず槍と刀6人ずつが現れて周瑜の前で勇壮に舞い、ついで周瑜は火攻めのために東風がなければ策は成就しないと唱います。「策略編」から続けて見ていれば問題なしですが、この「激闘編」だけを見る人はこののっけからの高音の唱に度肝を抜かされたことでしょう。ついで、曹操の登場。独特の左右に身体を揺らすゆったりした歩き方に貫禄ありですが、「策略編」とは役者が変わっています。船を繋いで安定させる連環の計が火攻めに弱いことを懸念する指摘に「あーんやん、やんやん、ふわっはっはっ」と高笑いするあたりはなんとも人間臭い曹操ですが、続いてこの季節には西北の風しか吹かないことを指摘して知将ぶりを見せ、さらに機嫌良く詩を賦する姿は文人としても一流であることを示して、この短い場面で実に巧みに曹操という人物の大きさを見せつけています。

かたや周瑜は、東風がなければ策が奏功しないことを気に病んでいる様子ですが、小生巾(帽子)の上に青い病鉢巻を締めるのは、締め方こそ違え歌舞伎の「助六」などでも見られる習慣で、思わぬ共通項に驚きました。諸葛亮から東風を起こす術を行う旨を聞かされて、気力が回復した周瑜とますます諸葛亮に心酔する魯粛。しかし、諸葛亮が退場した直後に周瑜は二人の武将を呼び、東風が起きたら諸葛亮を殺害することを命じます。それでも、先日の「策略編」から続けて見ていると諸葛亮の不気味さと周瑜の大きな人物像がわかっているので、周瑜が悪役には見えません。

場面変わって、趙雲登場。青と白の靠旗を背負った重装備での堂々たる起覇に、時折機敏な回転を交えて猛将ぶりを示します(かっこいい!)。あらかじめ諸葛亮から受けていた指示に基づき諸葛亮を迎えに行く旨を述べて、馬で移動(もちろん馬鞭で表現)すると船に乗り移りますが、ここでも船は実際にはなく、漕ぎ手たちのゆらゆらとした動作でそれとわかる仕組み。

そして演出上の見せ場が、続く南屏山の祭壇の場で、ここでは暗転した舞台中央に派手な冠の道士姿の諸葛亮、下手に周瑜、上手に曹操が並び、掛け合いでそれぞれスポットライトに浮かび上がりながら唱います。これは斬新かつ非常にセンスのいい演出です。祭壇で祈る諸葛亮、風旗が横切りどーんと太鼓や銅鑼の音がして東風が吹き始めたことが示されると、諸葛亮は紗幕の前で趙雲と合流して、呉を脱出します。これを追ってきた呉の二人の将軍に、趙雲がド迫力で威嚇。矢を放つ仕種をすると、呉船の帆に見立てた旗が倒されました。

そしていよいよ火攻めの場面。曹操たちが乗っている船は連環の計でつながれたことになっていますが、それを示すように船の作り物には鎖がついています。そして、黄蓋がついに矢を放つと炎の幕が降りてきて、「策略編」の最後と同様に赤い光やスモーク、赤い大旗を使った群舞となりました。激しい立ち回りの中に、水を示す布が左右に走って水上戦闘の様子が象徴的に示され、船からとんぼを切って川面に飛び込む者も続出。凄い迫力の最後は、やはり定点連続後方回転の大技で、拍手喝采のうちに休憩の幕が下りました。

後半は、劉備の陣営からスタート。劉備が魯粛との二役なのがちょっと違和感ありますが、諸葛亮とともに関羽、張飛、趙雲が居並ぶさまは壮観です。諸葛亮は、趙雲には烏林に、張飛には葫蘆谷にそれぞれ潜伏するよう命じますが、そこへ真っ赤な顔と長く黒々とした美髯が特徴的な関羽が、命令をもらえないことを不服として前に出てきます。恐らく諸葛亮は、関羽がかつて曹操から受けた恩のために曹操を逃がすことであろうことを予測していたのですが、それも諸葛亮の想定の範囲内。赤壁戦後のパワーバランスの中で蜀が独立するには三国鼎立を実現する必要があり、そのためにはここで曹操を逃がし生き延びさせなければならないからです。そこで諸葛亮は、関羽の求めに応じてそれではと華容道での待ち伏せを命令。関羽は、曹操を捕らえられなかったときは自分の首を差し出す旨を明言します。なお関羽役はベテラン程和平で、今回は演出も担当しています。10年前に孫悟空役で私も見たことがありますが、日本にもファンが多く拍手が湧いていました。

曹操の退却戦は、まず趙雲から。つり上がった眉、きりりと引き締まった口元に意思の強さを示しつつ、槍を使った起覇。趙雲がいったん舞台から下がったところへ八人の将軍とともに曹操が登場しますが、烏林に着いたと配下の将軍たちから聞かされて「ははは」と笑い出します。怪訝そうな将軍たちに自分ならここへ伏兵を置くのに、と言う言葉が終わるか終わらないかのうちに趙雲が出て来て、曹操は逃走。趙雲は華やかな槍での立ち回りで八将軍を圧倒します。最後には、大相撲の弓取式のように槍をぶんぶんと振るって見得。同じことが張飛との間にも行われて、曹操が笑うと張飛が飛び出し、曹操はまたしても逃走。将軍たちとの立ち回りは最初は1対1、ついで1対4で行われて、これらを蹴散らした張飛が見得。

いよいよ最後の場は、華容道です。八本の大旗(飛虎旗)、周倉、関平。そして馬童が助走なしのバク宙などなどの体術を見せてから、関羽登場。馬童と二人で残ると、関羽は細かい足遣いで走り回りながら青龍刀を振るい、かたや馬童もバク宙から片足で着地してバランスといった技を見せて、共に下がっていきました。そして、今や落魄の曹操。供の将軍も4人に減りふらふらの状態で、舞台奥の三戈戟も一本が倒れかけてよれよれの様子です。それでも懲りない曹操はまたしても伏兵がいないことを笑うと、そこへ現れたのが関羽。ここからは、旧恩に免じて助けるように哀願する曹操と反論する関羽との唱の対決で、これが実に聴き応えあり。ついには春秋左氏伝の故事をひいた曹操の説得が奏功し、関羽は苦悩の表情を浮かべて髯をしごきつつ、一字長蛇陣を敷くことを命じます。旗を横一文字につないだこの陣は、曹操たちを逃すための陣。旗の背後で後ろを向いた関羽の前を曹操たちは逃れていきますが、袖に引き込む間際に振り返って「天がまだ我の願いを聞いてくれるなら、軍を整え再び江南へ下って来よう」と唱う曹操は、決して捨て台詞という感じではなく、最後の威厳を見せてくれていました。残された関羽は、無音の静寂の中にゆっくり絞り出すような声で、曹操を取り逃がしたことを本陣へ報告することを関平たちに告げると、舞台上が薄暗くなった中にスポットライトを浴びて苦しい心情を唱い、見得。万雷の拍手の中に幕が下りました。

これまで京劇公演はそれなりの回数観てきていますが、今回の湖北省京劇院による「赤壁の戦い」二部作は、それらの中でも最上級の完成度でした。随所にモダンさを感じさせた大胆な演出と、大勢の登場人物たちの性格づけ(特に周瑜・魯粛・諸葛亮・曹操)を一人ひとり際立たせた緻密な脚本には脱帽。そして俳優たちの見事な演技・唱、それにシンプルでいて美しく場面を象徴した舞台装置など、見どころ聴きどころが満載でぐいぐい引き込まれ、あわせて4時間という上演時間がまったく長く感じられません。湖北省京劇院、おそるべし。

そう言えば、女優さんが一人も出てこない京劇公演というのは初めてかも……。

配役

策略編   激闘編
諸葛亮 王小蝉   諸葛亮 王小蝉
周瑜 呉長福   周瑜 呉長福
魯粛 伊章旭   魯粛 伊章旭
曹操 舒建礎   曹操 江峰
蒋幹 周琥   蒋幹 周琥
黄蓋 江峰   黄蓋 舒建礎
劉備 孫忠勇   劉備 伊章旭
孫権 梁敏通        
甘寧 張暁波        
太史慈 裴学君        
蔡瑁 程樹強        
張允 路慶辰        
        趙雲 張暁波
        関羽 程和平
        張飛 裴学君
        関平 冉大鵬
        周倉 梁敏通
        丁奉 王銘
        徐盛 梁敏通
        許褚 馮軍
        張遼 程樹強
        曹洪 肖俊
        夏侯惇 程国強
        馬童 李晨陽

あらすじ

策略編

後漢末、河北を制した曹操は勢いを増し、大群を率いて南下した。東呉の孫権の参謀・魯粛が劉備の軍師・諸葛亮を陣営に迎え、孫権と劉備は連合し、長江をはさんで曹操に対抗することにする。

水軍の総司令官に任命された周瑜は、まず曹操軍の弱体化を狙う。曹操に派遣されて降伏を迫りに来た蒋幹を酒宴で歓待し、酔ったふりをして同室に寝、曹操水軍を指揮する蔡瑁・張允が東呉に内通しているという偽りの文書を持って帰らせ、曹操に二人を斬らせる「借刀の計」に成功する。しかし諸葛亮にはとうに計略を見抜かれていた。また曹操軍を攻撃する一計を周瑜、諸葛亮ともに「火」と断じる。周瑜は諸葛亮に三日で十万本の矢を作るように依頼して誓約書を入れさせる。

悠然と構えていた諸葛亮は、心配して様子を見に来た魯粛を伴ってわら束を積んだ船を長江に漕ぎ出し、これを奇襲だと見た曹操軍から雨あられと射込まれた矢を労せずして手に入れる。その功を祝う宴席上、周瑜と老将・黄蓋の意見が激しく対立し、周瑜は黄蓋を斬首しようとするが、周囲のとりなしで棒叩きに減刑する。これは味方をも欺く「苦肉の計」だったが、諸葛亮だけは動じなかった。その姿に周瑜は憤りを隠せない。

戦闘に向けての準備は着々と進行するが、ただ東南の風だけが足りない、と周瑜は苦悩し、赤壁の戦いの幻影を見るのだった。

激闘編

長江に連なる曹操の大船団は「連環の計」によって全て鎖で連結されている。曹操の目を欺くため偽の投降をする黄蓋の密書が届き、冬の西北の風が吹く中、曹操は天下統一も目前と意気軒昂だった。

一方、東呉では火攻めの決め手となる風向に苦悩するあまり、周瑜が病に倒れた。諸葛亮がこれを見舞い、自分に風を起こす術があると説いたので、周瑜は快癒する。同時に、周瑜は諸葛亮の奇才を恐れ、風が起こったらただちに諸葛亮の首を斬るよう追っ手を差し向ける。南屏山に祭壇を設け、仰々しく祈禱する諸葛亮。風が起こり、投降を装った黄蓋が小船で曹操軍に突撃し、火を放った。曹操軍は一気に燃え上がり、諸葛亮は追っ手をかわして迎えの趙雲とともに劉備の元に戻った。

諸葛亮は、曹操の南への退路を断ち荊襄を占領して地盤を得ることで三国鼎立への道筋をつけようと、趙雲、張飛に潜伏の命令を下し、関羽には華容道で曹操を生け捕るよう命じた。命からがら逃げる曹操は、趙雲、張飛から敗走し、華容道で関羽らに待ち伏せされる。しかし、関羽はかつて曹操に厚遇された恩義から、一字長蛇陣を敷いて曹操を逃がした。たった十八騎で解放された曹操は、いつか再び南を目指すことを天に誓う。