Terry Bozzio featuring Febian Reza Pane

2009/04/25

知人のピアノ調律師ありか先生の誕生月は4月。これはどこぞへお連れせねばなるまい、ということで六本木のSTB139「Terry Bozzio featuring Febian Reza Pane」へ。Terry Bozzioは昨年11月にも観ていますが、Febian Reza Paneの方は初めてです。冒頭の主催者による解説等によれば、彼はインドネシア人の父と日本人の母をもつ1961年生まれのピアニスト&作曲家。大貫妙子や小野リサ等とも共演しているのだとか。プロモーターであるアンドフォレスト・ミュージックが彼をサポートしている関係で、今回のTerry Bozzioとの共演が実現したようです。

雨の六本木交差点で待ち合わせてSTB139に入ると、ステージ上は上手に例によってTerryの要塞セット、下手にピアノ。席は向かって左右どちらにしますか?と聞かれてピアニストの手元を見られる左側がいいのかなと思っていたら、ありか先生はすかさず「右がいい!」。「なんで?」「だってそちらの方が音がいいから」。天板を上げているピアノの角度を見て瞬時に判断したようですが、言われてみればなるほど……。一段下がったフロアの上手寄り後方に席をとり、まずはビールで乾杯してから、4種のチーズピザやら帆立と海老のポアレやら、このお店では初めてまっとうな料理を注文しました。

食事と会話を楽しんでいるうちに開演時刻の19時になり、例によってまずは主催者が登場。形通りの注意事項(撮影・録音禁止など)の後に、上述のFebian Reza Paneのプロフィールや、これまでまったく接点がなかった二人が二日前のリハーサルで意気投合したこと、第一部はTerry Bozzioのセット、第二部はFebian Reza Paneのセットで、しかしお互いに相手のセットにも出演することなどをしっかり時間をとって紹介しました。それにしても彼、毎度とても緊張したような息継ぎをしながら話すのですが、もう少しすらすらと話せないものなのでしょうか?ともあれ、主催者の呼び入れに応じて出てきた二人。まずはTerry Bozzioのソロ曲からスタートで、バスドラとハイハットのパターンの上でメロディックなタム回しが自在に展開しました。続いて次の曲もTerryが暴れてくれるのかなと期待していたら、TerryがFebianに合図を出して、Febianのピアノから次の曲がスタート。即興でFebianが繰り出すピアノのコードやフレーズに応じてTerryがタムやシンバル、銅鑼などの打楽器音をかぶせるコラボレーションで、Febianのピアノは時に静かに、時に荒々しくと曲想を変化させていきますが、基本的にはかなりアンビエント寄りな演奏となりました。

休憩タイムはけっこう長く、それは調律師さんがピアノのコンディションを調えるのに要した時間にもよった模様。ありか先生の言によれば、ヤマハの調律師らしく締まった(倍音の少ない / 減衰の速い)調律が施されているようですが、それよりもFebianが第一部の演奏でピアノの弦を爪で直接グリッサンドしたのがお気に召さないらしく「もしあれが自前のピアノでなかったら、やるべきではない!」と力説していました。ピアノの調律が終わった頃に、今度は暗い舞台上にTerryも出てきて、背後の鉄琴を鳴らしてはタムをチューニング。かなり繊細に音程を合わせているようで、ありか先生も「出だしはピアノとドラムの音が合わず気持ち悪かったけど、途中から合うようになってきていた」と解説してくれました。やっぱりプロの耳は違うなあ。

そんなこんなの休憩をはさんで続いた第二部も、FebianのピアノにTerryが追随したり、その逆にTerryがパターンを変えるとFebianが後を追ったりといった展開で、Febian自身もピアノの筐体を両手でパーカッションのように叩くといったところも見せていましたが、やはりTerryはリズムの骨格を形作るドラムではなく、効果音的なパーカッションという感じの演奏に終始しました。演奏終了後にTerryとFebianは舞台上で肩を抱き合い、ついでTerryがマイクをとって、Febianとのこの音楽を皆さんは楽しんでくれただろうか、自分はとても楽しんだし、ぜひ再びFebianと共演する機会を得たい、といった趣旨の挨拶の後に「ドウモアリガトウゴザイマシタ」の言葉を残して楽屋に引き上げました。

ひとしきりの拍手と手拍子の後に、アンコールのために再び出てきた二人。今度はFebianが、にこやかな表情でマイクをとりました。Terryの名前やU.K.にいたことはもちろん知っていてプログレもそれなりに好きで聞いてはいたのだが、Terryの音楽をそれほど知っていたわけではなく、二日前の初顔合わせでは最初のうちとまどいもあったが徐々に即興で息を合わせられるようになってきた、といった話を、誠実そうな人柄をしのばせる穏やかな口調で披露した後にFebianは、「Terryのパワフルなドラミングを期待する人に」と言い出したので「おっ!」と期待したのですが、「……はたいへん申し訳ないのですが、私の静かな曲にTerryが合わせてくれます」とアナウンスされてがっくり。しかし曲は「Dedication To The Sky」という、とても美しい曲でした。

以上で、終演。ありか先生も楽しんでくれたようでしたが、自分としてはやっぱりせっかくの要塞セットをフルパワーで鳴らしきるTerryのダイナミックな演奏を聞きたかったというのが正直な気持ち。もっとも、ピアノとのデュオと聞いた時点でそれは半分諦めてはいたのですが……。

ところで、終演後にステージ上でただちにドラムセットの解体が始まったので、これは見もの!としばらく眺めていました。あのセットは組み上げるのも大変ですが、解体もたいへんそう。しかし、ご覧の通りのきれいなお姉さんが意外な腕力を発揮しながら手際よくシンバルをとりはずしていく姿には、つい見惚れてしまいました。

ミュージシャン

Terry Bozzio Drums / Percussion
Febian Reza Pane Piano