続々オールド・バンチ〜カルメン戦場に帰る〜(パラダイス一座)

2009/02/14

下北沢の本多劇場で、流山児★事務所プロデュース、パラダイス一座「続々オールド・バンチ〜カルメン戦場に帰る〜」を観ました。このパラダイス一座というのは、演劇界の重鎮たち、ただし役者としての経験はほとんどない(本職は演出家や劇場経営者など)平均年齢80歳超のメンバーが集まって芝居をするという後期高齢者感涙の企画。宣伝文句は、以下の通りです。

3年間の期間限定で始めた世界に類のない高齢者劇団=パラダイス一座は、2006年『オールド・バンチ〜男たちの挽歌〜』(山元清多・作)、2007年『続オールド・バンチ〜復讐のヒットパレード!〜』(佃典彦・作)と年末にザ・スズナリで上演を重ねてきた。

92歳の日本演劇界の最長老・戌井市郎を筆頭に錚々たるメンバーは最強の布陣で演劇こそ自由で治外法権の解放区であることを証明した。一座の活動は私たちの予想を超えて演劇ファンの裾野を大きく広げた。全国はゆうに及ばず海外からも多くの観客が下北沢の小劇場に詰め掛けている事実がそれを物語っている。さて最終公演は、バンチメンバーがついに国境を越えてミャンマー(ビルマ)の戦場に帰還する「戦争とニッポンの現在」を大胆不敵に描く問題作!

真冬の本多劇場で「男たちの最後の闘い」が始まります。見逃したら一生の損!劇場でお会いしましょう。

場内に入ると、舞台上にはお葬式を示す白黒の縞の幔幕が垂れ、そして開演前の注意事項の説明は流山児祥氏の遺影を持った喪服姿のお兄さんから、劇中で使用される歌の紹介と、携帯電話は「途中で鳴ると役者がびっくりして台詞を忘れるから」電源を切るようにと説得力のある要請がなされました。ごもっとも。

ストーリーとしては、かつてビルマで共に捕虜となり、引揚後にゲイバー仲間となった面々が、昭和天皇崩御を機に閉めることになったゲイバー「つばき」に久しぶりに集まって……という話。歌って踊ってのスリー・シスターズをはじめ若手俳優陣は皆さんとても達者な演技を見せてくれたのですが、何しろ主演のオールド・ゲイたちの演技がユルい、ユル過ぎます。セリフは飛んでフリーズするし、途中の七福神ショータイムは芝居の本筋と関係ないカラオケやら新内やら講談(これはうまかった)やら、要するに各人の余興披露コーナーで、肝付兼太氏に至っては「知り合いの肝付の真似をします。」と言って「おそまつくん」のイヤミやNHKの人形劇のじゃじゃまるの声をやってみせて……ってそれ自分の役じゃないですか!正直、この学芸会並みの芝居にハラハラし通しのお客からお金をとっていいのか?という感じですが、それでも着物やドレスがそれなりに着こなされているのと芝居を受け渡す間が合っているのは、さすがに演劇人ならではというところでしょうか。

そして終幕間近、「つばき」を売ったお金でかつての戦場へ行くことにした一同が「椰子の実」を歌っている間に「つばき」のセットが片付けられていって、そこに青い海と空と、椰子の木の繁る美しい海岸の風景が現れて、オールド・ゲイたちがビルマへの帰還を喜ぶ声を上げると、その声をかつてそこに鳴り響いたであろう砲声や航空機の唸りが覆い尽くして暗転する辛口のエンディングは、最後の最後に芝居を引き締めてくれました。

キャスト

弁天・ローズ 戌井市郎
毘沙門・お銀 瓜生正美
恵比寿・リリー 中村哮夫
大黒・メロン 本多一夫
布袋・さくら 肝付兼太
寿・すみれ ふじたあさや
アンジェラ・福寿 岩淵達治(映像)
ジャスミン・水島 大路恵美(映像)
花椿イブ 二瓶鮫一
花椿の秘書 谷宗和
ルイーズ 町田マリー
サミー 坂井香奈美
伊吹マヤ 石井澄
水戸から来た男 藤井びん
その若い妻 亜萬由美
刑事 流山児祥
謎のピアニスト 村井一帆