Boz Scaggs / Toto

2008/03/31

The Bandと言えばBob Dylan、Eaglesと言えばLinda Ronstadt、そしてTotoと言えばBoz Scaggs(ついでに書けば、安全地帯と言えば井上陽水)の、いずれもバックバンド / レコーディングユニットから発展したバンドです。そのTotoがBozと一緒に来日すると最初に聞いたときは「TotoがBozのバックで演奏するのか?」と驚きましたが、もちろんそれは大きな勘違いで、実際にはBozは自分のバンドを引き連れての来日です。しかし、チケットが発売されてもAORに関心のない私には、新譜も出しておらず演奏時間も中途半端なものとなるであろうTotoのライブを見に行く気になれず、しばらく放置していたのですが、ウドーのホームページでTotoが今回のライブを最後に無期限活動停止になると知り、あわててチケットをゲット。

東京国際フォーラムに入り、まずはグッズ売場でプログラムを購入しましたが、ご覧の通り表紙にはこれまでの彼らのアルバムにあしらわれてきたTotoのロゴがこれでもかというばかりに踊っています。やはりバンドの歴史の集大成ということが強く意識されているようです。

2階席から見下ろすステージ上にはBozのバンドの機材が紫色のライトにぼんやりと照らされていて、そのまま待つことしばし、定刻を少し回った19時5分に照明が落とされ、歓声の中スポットライトに照らし出されてBozが登場しました。やがて特徴的なリズムパターンが始まって、1曲目は『Silk Degrees』から「Lowdown」。いやー、かっこいい。これこそ大人の演奏です。ステージが遠く表情は読み取れませんが、遠目に見たBozのシルエットはまるで歳を感じさせません。バンド編成は、上手側にドラム、その手前に女性コーラスが二人とベース、中央奥にキーボード、下手側奥にはサックス兼フルートとトランペットがいて、この二人の前にもキーボードが各1台。管の二人の手前に主のいないキーボードが1台置かれ、その向かって右寄りにギターがいて、これらバンドの中央にはもちろんBozその人がギターを抱えて歌っています。数曲進んでMCでレコーディングにDavid PaichとGreg Phillinganesが参加した曲と紹介されたムーディーな「Desire」の後に、そのDavid Paichが黒づくめのギャングのような格好で登場。ここからピアノやストリングスやエアギター(?)で演奏に参加しました。名曲「We Are All Alone」は4人のキーボードで演奏され、これでしっとり終了かな、と思っていたらアップテンポな「Lido Shuffle」で思い切り盛り上げ、1階席は踊り出す客が続出しました。アンコールの1曲目「Loan Me A Dime」も素晴らしい。ゆったりした6拍子で穏やかに始まりましたが、途中からふっと8拍子に変わり、熱を帯びたBozのギターソロ、オルガンソロ、David Paichのピアノと移るうちにリズムは倍ノリになって強力に迫ってきます。そして元のゆったりした6拍子に自然に戻って終了。最後にSteve Lukatherも登場し、ハードシャッフルのリズムで「Breakdown Dead Ahead」が演奏されて、20時30分、満場のリスペクトの拍手のうちにBozのセットは終了しました。

ここからステージ上はTotoのセットに切り替えられます。クルーがわらわらと舞台上に散ってBozの機材を片付け、Totoの機材と入れ替えていきましたが、正味20分で作業が終了した手際の良さには驚きました。

←ただいま機材入替中。

Totoの機材は「Falling In Between Tour」とほぼ同じですが、ドラムのSimonとキーボードのGregの間にオルガン&シンセが一段高く置かれて、これがDavidのキーボードです。

Totoの開演は21時ちょうど、上手からSimonが一人出てきてドラムセットに座るとフロアタムを使ったジャングルビートを叩き出し、Luke、Tony Spinner、それに腕の負傷でツアーに参加できないMike Porcaroの代わりにベースを弾くベテランLeland Sklar翁という弦楽器トリオが登場してハードチューンの「Gypsy Train」。遅れて出ていたGregもぴょんぴょん飛び跳ねているし、Davidはまたしてもエアギターで客席を煽っています。それにしてもLeland Sklarのベースは、ずっしり低くしかも芯の通った実にいい音です。彼のベースはブリッジの形状が変わっていて低音弦ほど弦長が長く、したがってフレットも並行ではなくて低音弦側のフレット間隔が広い不思議な代物(Fanned-Fret System)ですが、おかげで5弦でも十分なテンションを稼げているのがあの音の秘密ではないでしょうか?

←フレットとブリッジに注目。

「Caught In The Balance」をはさんでLukeのMCが入り、ここでTotoの3代目ヴォーカルのJoseph Williamsが舞台上に現れると、客席は大喜び。そしてBozバンドのサックスとトランペットを加えて演奏された「Pamela」での彼のヴォーカルは、音域・音圧とも『Seventh One』発表時のままの高さと力強さで、圧倒的な魅力に満ちていました。「Bottom Of Your Soul」ではLukeのアコースティックギターの音が出ないトラブルがありましたが、続く大好きな「Stop Loving You」をJosephのヴォーカルで聴けたのは望外の喜びでした。これに負けじと続く「Falling In Between」ではBobby Kimballが渾身のシャウトを聴かせてくれましたが、やはり事前の情報通り今回のBobbyは不調。60歳を過ぎてあのヴォーカルスタイルは、確かに厳しいのでしょう。

続くコーナーが、久しぶりにツアーに参加したDavid PaichとGregのキーボードデュオ。Davidが弾く「99」のイントロのフレーズを除いてGregのピアノに主導権があり、LukeとBobbyもヴォーカルで加わった「Georgy Porgy」、さらに「Child's Anthem」「I'll Supply The Love」とバンドのデビュー時の曲の印象的なフレーズのメドレーとなって、最後はDavidとGregが二人揃って両手を高く掲げたV字ガッツポーズ。また、「Rosanna」ではアウトロでDavidがGregのブースに入ってピアノを弾き、追い出されたGregにギターを預けたLukeがDavidのオルガンでバッキング、といった場面も見られました。

LukeのMC、楽しんでいるかい?と客席に呼び掛けたものの自分はGregがピアノで弾く寂し気な「通りゃんせ」のフレーズにしょんぼり。それでも「No sayonara, see you later, I say.」と気丈に持ち直して「I'll Supply The Love」のイントロの元気なリフ。ここからのメドレーは先のツアーのパリでの演奏を収めたDVDで見られるパターンと同じもの(日本での演奏時は「I'll Supply The Love」の代わりに「Endless」でした)で、途中でLukeとSklar翁が楽器を弾きながら正面からキスする恐ろしい場面も笑えましたが、ただしこの日の楽曲構成に唯一不満があるとすればここでしょう。二部構成で時間が限られているのですから、ギターやドラムのソロを入れるよりもまとまった楽曲を1曲でも多く演奏してもらいたいというのが正直なところ。実際、この日の終演時刻は23時に近かったために、遠方から来られたファンが途中から泣く泣く会場を後にするという姿を少なからず見かけましたから、彼らにしても同様の感想をもったのではないでしょうか。

メドレーの最後を長大なフィードバックで締めたLukeが、ここでメンバー紹介。どういうわけか他のメンバーはキーボードなどの機材の後ろに隠れて遠巻きに見ている感じですが、John Williamsの息子であるJosephの紹介時には「Star Wars」、唯一のイギリス人であるSimonのときは「Goldfinger」、そしてそのSimonが「ミナサン、コンバンワ」とLukeのマイクで日本語を話してからLukeを紹介したときには「Live And Let Die」がそれぞれGregによって弾かれました。そしていつの間にか不気味にLukeの背後に近づいていたDavidが手にしていたのは小さなトイピアノ。そのトイピアノを椅子の上に置いてDavidの太い指が叩き始めたのは、「Hold The Line」(もちろん本当はGregが弾いています)。ヴォーカルを1stヴァースはBobby、2ndヴァースはJosephが歌って、本編をゴージャスに終えました。

アンコールは冒頭と同様にSimonの叩くリズムパターンから入って、Davidが歌う「Africa」。意外にもDavidの声はよく通っていて、ヘタウマと称されることの多かった彼の歌がほんわかとしたこの曲に実によくマッチしていたことを再確認しました。そして「Africa」終了後にBozのバンドのメンバーやLukeの知人らもステージに上がって、数えきれないほどの人々による「With A Little Help From My Friend」(大幅なアレンジが施されていて、最初は何の曲かわかりませんでした)。皆が適当にヴォーカルを回し合った後にGregとSimonがリズムの無限ループを作り出しましたが、最後にBozがカウントを入れてきれいに終曲となりました。

それにしても、これだけのパフォーマンスを実現できるバンドが無期限の活動休止に入るとは本当にもったいない。確かに、バンド結成以来のメンバーでフルに動けるのはLukeとBobbyだけとなり、そのBobbyにしてもあのヴォーカルスタイルをこれ以上維持するのは至難の業とあっては、今が有終の美を飾れるタイミングということになるのかもしれませんが……。

ミュージシャン(Toto)

Bobby Kimball Vocals
Steve Lukather Guitar / Vocals
David Paich Keyboards / Vocals
Greg Phillinganes Keyboards / Vocals
Simon Phillips Drums
guest - Joseph Williams Vocals
Tony Spinner Guitar / Vocals
Leland Sklar Bass

セットリスト

Boz Scaggs

  1. Lowdown
  2. Jojo
  3. Slow Dancer
  4. Desire
  5. Sick And Tired
  6. Miss Sun
  7. Harbor Lights
  8. Georgia
  9. We Are All Alone
  10. Lido Shuffle
    -
  11. Loan Me A Dime
  12. Breakdown Dead Ahead

Toto

  1. Gypsy Train
  2. Caught In The Balance
  3. Pamela
  4. Bottom Of Your Soul
  5. Stop Loving You
  6. Falling In Between
  7. Piano Duo(including 99, Georgy Porgy, Child's Anthem, I'll Supply The Love)
  8. Rosanna
  9. I'll Supply The Love / Isolation / Gift Of Faith / Kingdom Of Desire / Guitar Solo / Hydra / Drum Solo / Taint Your World
  10. Hold The Line
    -
  11. Africa
    -
  12. With A Little Help From My Friend