MONET 大回顧展モネ

2007/05/13

国立新美術館で、「MONET 大回顧展モネ」。乃木坂にどんと新設されたこの美術館を訪れたのは、これが初めてです。ご覧のような波打つガラスの外壁が有名ですが、実は乃木坂駅からだと裏手の方に地下鉄から直通で入れるようになっており、こちらの表面は六本木側。写真も帰りがけに撮ったものです。

肝心の展覧会の方は、さすがに「大」回顧展と銘打つだけあって、オルセー、ボストン、メトロポリタンと世界の名だたる美術館から集めた約100点が一堂に会して壮観。展示の全体は5つの章、すなわち

  1. 近代生活
  2. 印象
  3. 構図
  4. 連作
  5. 睡蓮 / 庭

に分かれていて、モネが主題としてとり上げた風景や人物(ex.《日傘の女性》《ゴーティベール夫人》)、光・階調・色彩(ex.《アルジャントゥイユのセーヌ川》《庭のカミーユ・モネと子供》《モントルグイユ街, 1878年パリ万博の祝祭》)、浮世絵に影響を受けたと思われる構図(ex.《アンティーブ岬》)と水面での反射の表現(ex.《アルジャントゥイユのレガッタ》)、そして有名な《ポプラ》《積みわら》《ルーアン大聖堂》での光と色の変化、蒸気や霧の表現(ex.《サン=ラザール駅》やロンドンで描かれた作品群)が手際よく紹介され、最後にモネの晩年の数十年間ほぼ唯一のモチーフであり続けたジベルニーの庭の睡蓮に行き着く構成となっています。

もっとも、こうした分類に沿って漫然と見ていては画風の変遷を追いきれなくなって混沌に陥るので、その絵がいつ描かれたかを確認しながら鑑賞する必要があります。一応の節目としては、第1回印象派展が開催された1874年、妻カミーユを病に失いつつも経済的には安定した1880年代、《積みわら》の連作で名声を不動のものとした1891年、睡蓮の庭を生活と創作の中心とし始める1900年といったところが挙げられるでしょうか。そうした時制の把握によって、《サン=ラザール駅》(1877年)での意欲的なモチーフの選択や《モントルグイユ街, 1878年パリ万博の祝祭》(1878年)のエネルギッシュでスピーディーな筆の運び、一連の連作に見られる実験精神、そして《睡蓮》のあまりにも大きな画風の変遷が理解できるようになります。特に『睡蓮 / 庭』の章には絵の巨大化に合わせて広いスペースが与えられていますが、1907年に描かれた《睡蓮》が印象派のタッチを用いながらも写実的な表現で水面の睡蓮の形態をとらえているのに、徐々に睡蓮のフォルムはぼやけて水面下の水草や水面に映る向こうの景色と融合するようになり、目を患った最晩年の《しだれ柳》(1920-22年)にいたっては形態を失った色彩の乱舞に過ぎず、キャンバスには塗り残しも目立ちます。しかし、それでもモネが愛され続けたのは、彼の創作人生の最初期から最晩年まで、たえず変化する光と色彩の印象を屋外での制作によってキャンバスに描きとろうとする姿勢を一貫させた点にあるのでしょう。それが、彼を最も偉大な印象派画家としているわけです。

さて、今回の展覧会での私の個人的一押しは、なんといっても《かささぎ》(1868-1869年)です。下右のちらしの中央下部にもある、雪景色を描いた初期の一点で、全体を覆う白・灰・青・それにかすかにピンクのグラデーションの穏やかな情景の中にきりっとした存在感を示して画面を引き締めるかささぎの存在感も素晴らしいですが、なんといっても背景の野原や垣根の上辺の雪が日の光を浴びて輝くさまが、画面には描かれていない冬の太陽の所在を感じさせていて、ただでさえ大きいこの絵を何倍にも大きく見せています。ぜひこの絵の前に立って、自分の想像力の翼を広げてみて下さい。