横山大観「生々流転」 / 松田権六の世界

2007/01/28

横山大観の大作《生々流転》(1923年)を東京国立近代美術館で展示していると聞いて、ふらっと行ってきました。会場内に全長40mの絵巻を広げられるガラスケースがしつらえられていて、観覧者はその前をカニのように横歩きで右から左へ観ていくことになります。描かれているのは、霧の中から湧き出た一雫の水が渓流になり、沢になり、川となりながら流域の自然や人々を潤して、やがて大海に注ぎ込み沖に離れると、黒雲の中に龍が立ち上ってまた空へと帰って行くという、文字通りの大河ドラマ。冒頭の霧の表現には朦朧体が、上流の岩には片ぼかしの技法がそれぞれ効果的に使われています。途中に出てくる樵や筏使い、馬追い、釣人、そして海岸で舟を岸に引き揚げる漁師たちがいずれも慈愛に満ちた眼差しで描かれているのに対し、沖の岩礁に佇む二羽の鵜の姿が寂しく、そして厳しい。期待以上の感動的な作品でした。

なお、同時に展示されていたのは《或る日の太平洋》《観音》《満ち来る朝潮》《南溟の夜》。常設展の方も見応えのある作品が少なくなかったのですが、時間もなかったので流して観るにとどまりました。

本館から400mの位置に、旧近衛師団司令部庁舎を使用した工芸館があり、そちらで開催されていた「松田権六の世界」にも足を運びました。

金沢生まれの松田権六氏(人間国宝)の手になる、加賀蒔絵の伝統を昇華させた素晴らしい漆芸作品の数々が展示されており、こちらも見応えがありました。特に、文字通りの漆黒の空間に螺鈿の輝きを煌めかせながら花喰鳥が優雅に舞う《蒔絵螺鈿有職紋飾箱》の美しさには、息を飲みます。《牡丹文蒔絵卓》や《菱文蒔絵平卓》のモダンに洗練された装飾美も素晴らしかったのですが、会場内に設えられた和室に並べられた会席膳・椀一式には皆一様に「もったいなくて(or 傷つけるのが怖くて)とても使う気になれない」という感想を漏らしていました。同感!

なおこれら二つの展示を通して観ると、チケット代800円也。これはお買い得です。