松竹梅 / 俊寛 / 勧進帳 / 喜撰

2007/01/02

2007年の歌舞伎座『壽初春大歌舞伎』初日は、着物姿のお嬢さんたちでお正月らしい華やいだ雰囲気。ちょっと奮発してとった2階席のチケットを見れば「8列8番」と末広がりの座席番号で、こいつは春から縁起がいいぞ、とにんまりしながら幕が揚がるのを待ちました。

松竹梅

最初の演目は新作長唄舞踊の「松竹梅」。場内が真っ暗になって闇の中緞帳が上がり、ぱっと照明がつくと舞台上は松羽目の趣き。端正な梅玉丈の在原業平と落ち着きの中におかし味もある橋之助丈の舎人駒王が近江の秋の情景をひとしきり優美に踊った後、背景が松から竹に変わって奴光内と雀の精が面白げに踊り、セリで入れ替わったのは梛の葉・化粧坂少将・大磯の虎の華やかな女性3人。正月といえば曽我物が必ず入るのが歌舞伎の約束で、この「梅の巻」に登場する大磯の虎や化粧坂の少将は「寿曽我対面」でもうおなじみのキャラクターです。

俊寛

これは何度も観ている大好きな演目。吉右衛門丈の俊寛は前にも観たことがあるのですが、そのとき敵役の瀬尾を演じた富十郎丈が今度は丹左衛門尉基康で、意外にもこれが初役なのだそうです。そして、その基康が赦免船の奥から出てくるときの朗々とした声!その一声だけでがっちりと役の性格を観客につかませてしまう、天王寺屋のおそるべき芸が披露された瞬間でした。段四郎丈の瀬尾もはまり役、福助丈の千鳥は……離れ島の海女にしてはちょっとすれた感じがするのは気のせい?もちろん最後に、俊寛が船を見送る場面には、毎度のごとく目頭が熱くなりました。ところで、成経と千鳥の祝言の際に俊寛が「肴つかまつらん」と砂(を模した肌色の床地)の中から松の枝を取り出したのは初めて見ましたが、これは何か意味があるのでしょうか?

勧進帳

幸四郎丈の弁慶と梅玉丈の富樫、芝翫丈の義経。幸四郎丈は昨年11月に弁慶上演900回を記録したそうで、押しも押されもせぬ弁慶役者なのですが、今日の関心は、弁慶の超人的な力を受け止める富樫と義経に向いていました。梅玉丈の富樫はやはり端正な造形で、弁慶と並び立つというよりはその暴威を必死に押しとどめている感じ。義経打擲の場では、その迫力に押し切られてしまったような印象を受けます。かたや芝翫丈の義経は気品と風格に満ち、弁慶が心酔するのが自然に納得。義経中心に観る勧進帳というのも面白いものだなと、新しい発見をした気分です。そして最後の弁慶の見せ所=飛び六法は、ちょうど座席の真正面が花道での幸四郎丈の立ち位置で、弁慶がまっすぐどしどしと飛んでくる姿に邪気を払われる思いがしました。

喜撰

昼の部最後は、勘三郎丈と玉三郎丈の組み合せで舞踊劇「喜撰」。桜が満開の明るい舞台で、まるで人形振りのように表情を動かさないまま、踊りの所作だけでおかしみを出していきます。ただ、場内の空調があまりに暑くて、この頃には観ているのがちょっと辛かった……。

ともあれ、昨年に引き続いて今年も正月2日を歌舞伎座で過ごすことができて、たいへんハッピー。久しぶりの歌舞伎座の華やいだ雰囲気を大いに楽しみました。

なお、幕間に売店で買ったのはこちら、星月菩提樹の三玉珠です。効能はボケ除け・足と腰の御守りだそうで、近頃人の名前がすぐに出てこなかったりする自分としてはボケ除けに力点が……じゃなくて!昨年沢登りで腰を傷めて以来、足腰を大事にしなければと思う今日この頃であったのが購入の動機。今年は無難な一年であってほしい。

ところで、毎度購入している当月の筋書きで、一箇所だけいつもと違うところがありました。それは、巻頭の挨拶が松竹・永山会長ではなく、同副会長の大谷氏だったことです。ご承知のように、戦後の歌舞伎復興を陣頭で率いた永山会長は昨年末に亡くなっています。筋書きにはそのことは触れられていませんが、見慣れたところに見慣れた写真がないというのはやはり寂しいもの。心よりご冥福をお祈りします。

配役

松竹梅
松の巻 在原業平 中村梅玉
舎人駒王 中村橋之助
竹の巻 奴光内 中村歌昇
雀笹平 中村信二郎
雀藪平 中村松江
雀雪平 市川高麗蔵
梅の巻 梛の葉 中村魁春
化粧坂の少将 中村孝太郎
大磯の虎 中村芝雀
 
俊寛 俊寛僧都 中村吉右衛門
  海女千鳥 中村福助
  丹波少将成経 中村東蔵
  平判官康頼 中村歌昇
  瀬尾太郎兼康 市川段四郎
  丹左衛門尉基康 中村富十郎
 
勧進帳 武蔵坊弁慶 松本幸四郎
富樫左衛門 中村梅玉
亀井六郎 市川高麗蔵
片岡八郎 中村松江
駿河次郎 澤村宗之助
常陸坊海尊 松本錦吾
源義経 中村芝翫
 
喜撰 喜撰法師 中村勘三郎
所化 坂東彌十郎
市川高麗蔵
市川猿弥
澤村宗之助
中村松江
中村信二郎
祇園お梶 坂東玉三郎

あらすじ

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