第3回日経日本画大賞展

2006/11/12

ニューオータニ美術館で「第3回日経日本画大賞展」を見ました。

第1回」「第2回」と欠かさず観てきましたが、「日本画」というおおざっぱな言葉ではくくることができない多彩な表現形式の作品を大胆に選出する本展は、2年に一度の楽しみとなっています。今回の大賞は、奥村美佳氏の《かなたVII》。三重県の小島の漁村風景を穏やかな夕暮れの色彩の中に描き、手前の家屋の姿に日本の素朴派の系譜を感じさせつつ、異様に高い水平線の位置がそこはかとない不安と希望を感じさせる不思議な作品です。

ほかに、猪熊佳子氏の風景画《神話の国から》が雪を戴く岩尾根や緑の斜面、道端の草花を細密に描いて文句なしに美しく、松崎十朗氏の《記憶》も水面に映し出された構造物が波紋によって揺らぎ、融ける様子に惹き付けられました。

しかし、とりわけ私の琴線に触れたのは、西野陽一氏《森の家族》。前回もアマゾンの川の中を悠然と泳ぐアロワナの姿を描いた《水の中の森》に圧倒されましたが、今回は熱帯の密林の中を行く象の家族を真横から描いていて、手前の樹木のこちら側に観るものの視点をはっきりと感じることができ、あたかもその場に自分が立っているかのような臨場感がありました。画面右側に小さく、オレンジ・黒・白の鳥やウグイス色の鳥が一群を見送っているのが、象の巨大な存在感とともに、それすらも包み込む森の深さを感じさせます。

ところで、今回《かなたVII》と大賞を競ったという作品が、下の町田久美氏《関係》。

技法は日本画だが表現はマンガ、しかしそこに危うい家族の姿を描いた知的かつ技巧的な作品で、素直に観れば「これが日本画?」と思う向きも少なくないと思います(私の第一印象がそれ)が、まさにその点が最終選考での争点になったようです。つまりこの作品は「日本画」の地平をどこまで押し広げられるのかという究極の問いを審査委員に課したようで、《関係》を推した委員の一人は図録の選評において大方の選考委員は彼女の作品の現代性に日本画の範疇をこえるものを感じ、大賞とはしなかった。……私は納得がいかない。日本画とはそんなに狭量なものであろうか。と強い口調で記しています。