世界遺産ナスカ展

2006/05/10

上野の国立科学博物館で開催されている「世界遺産ナスカ展」を観てきました。今週土曜日からのペルー旅行の、いわば予習というわけです。

展示の大半はナスカ地方で出土した土器や織物なのですが、この土器の形状や彩色が実に特徴的。紀元前900〜100年のパラカス期から原ナスカ期、ナスカ前期、中期、後期を経て紀元700年前後の移行期まで、時代によって様式の変遷があるそうですが、マンガチックにデフォルメされた人物や動物の造形など、力強い輪郭線ときっぱりした色遣いで生命力に満ち満ちています。また、「土器」というのは壷が多いのですが、これらは本当に実用に供されていたもの?観賞用に作られたものではないでかという気がしました。だとすれば、これもまたナスカ人の豊かな精神世界を示すものなのでしょう。また、織物も手の込んだもので、引き込まれてしまいます。綿織物が盛んに作られていたらしく、鮮やかな赤で染められた複雑な模様が織り込まれ、鳥やシャチを象った縁飾りの見事さにも驚きます。

しかし、ミイラや頭蓋開口術跡のある髑髏なんぞが並び出すと今までの高尚な鑑賞態度はふっとび、「そうそう、これこれ」と身を乗り出してしまいます。展示されている6歳くらいの子供のミイラには眼球が残っていて、ぼんやりした黒目で見学者を見返しているのがなんともシュール。ちなみにこの子供、X線写真では性別がわからなかったものの、ちょっと覗かせてもらったところ(解説)男の子であることが判明したそうです。また、ナスカ人たちは好戦的な民族だったらしく、首刈りの習慣が土器の絵や出土した頭蓋骨に穿たれた穴などからはっきりとわかります。その上、美容または民族的アイデンティティの表現としての頭蓋骨の変形と頭蓋開口の習慣も併せ持つ特異な地域だそうで、この「手術」後の生存率は6割に達し、頭蓋骨の再生状況によって手術後相当長期間にわたり生存したことが確実な頭蓋骨も展示されていました。幼児期からの圧迫によって後傾するように変形した頭蓋骨や、見事なまでの真円や四角の穴が開いた髑髏を見ると、自分はナスカに生まれなくて本当によかったと思います。もっとも、誰も前世のことはわからないわけですが……。

そしていよいよお待ちかね、地上絵コーナー。地上絵が描かれた意図については諸説あるものの、この展示では雨乞いと関わる儀式で人々が練り歩く道筋として一筆書きの図形が描かれたのではないかという説を採用しているようです。この地上絵は、地表の酸化した赤い岩石を幅1〜2m、深さ数十cm程度取り除いてその下の明るい色の石や砂を露出させることで描いているのですが、地上絵コーナーの一角にはそうした二層構造の岩石の実物も置いてあります(ただし、アクリルの板で覆われているため触ることはできません)。そしてお楽しみ、PCにつながれたゲームコントローラーでフライトシミュレーションをしながら地上絵を探すコーナーでは、一人3分ずつ、「クモ」「ハチドリ」「サル」といった主立った地上絵めがけて飛んで行ってズームインすることができます。私は最初の飛行で他の地上絵につかまってしまいこれら主要地上絵をゲットできなかったので、もう一度列に並んでまた3分飛行してしまいました。さらに一番最後には、横10m程の巨大スクリーンにCGでの飛行映像が10分程にわたって上映され、すっかり度肝を抜かれました。

いや、なかなか充実した展示でした。来週に向けて期待は高まるばかりです。ただ唯一の不安は、2度のフライトシミュレーションですっかり乗物酔いになってしまったことなのですが……。

ちなみに、冒頭に載せたチラシに書いてある「世界8番目の不思議」とは、世界七不思議に次ぐもの、という意味でしょう。その世界七不思議とは、以下の通り(異説あり)。

  • ギザの大ピラミッド
  • バビロンの空中庭園
  • オリンピアのゼウス像
  • ロードス島の巨人像
  • ハリカルナッソスの霊廟
  • エフェソスのアルテミス神殿
  • アレクサンドリアの大灯台

それにしても、会場の出口近くで見つけたこのポスター。「アエラ」の中吊り広告も真っ青のこのセンス、国立科学博物館おそるべし……。